ジェフ・ベゾス氏がBlue Originの月植民計画と着陸船を公開

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米国時間5月9日、ホワイトハウスからほど近いワシントンの会場で、Amazonのファウンダーであるジェフ・ベゾス氏が2024年までに有人月旅行を実現する計画の詳細を発表した。

聴衆にはプレス、企業と政府の幹部に加えて大勢の中学生も招かれていた。同時にBlue Moonと呼ばれる月着陸船も公開された。ベゾス氏によれば月は資源の宝庫だと言う。ベゾス氏が私費を投じて運営している宇宙企業、Blue Originは、今年中にNew Shepardロケットで有人宇宙旅行を行う予定だ。

イベントのステージは最初に月を歩いた人間、ニール・アームストロング宇宙飛行士の「人類にとって大きな一歩」という有名な言葉をモチーフにしていた。ここでベゾス氏は「人口が1兆人に達したとき人類はどこに生存のための資源を求めるべきか?」という非常に深刻な問題に答えようとした(こちらはベゾス氏の過去のビジョン関係の発言)。

宇宙というユートピアに進出する上で最大のハードルは、巨大通販会社のファウンダーとして熟知している問題、すなわちロジスティクスとインフラのコストを実現可能なレベルに削減する方法だ。

ベゾス氏は「我々の世代の役目は宇宙旅行のインフラの構築だ。我々は宇宙への通路を開かねばならない」と述べた。

米政府機関と特にNASAの研究によれば宇宙への道は月を経由するという。ベゾス氏が今日のイベントで月着陸船を披露した)理由の1つはそこにある。

米国のペンス副大統領はこの3月、国家宇宙委員会(National Space Council)の総会でNASAに対し、「2024年までに米国の有人宇宙船を月周回軌道に乗せ、月の南極に着陸させるためにあらゆる手段を活用する」よう指示した。

南極が目的地として選ばれた理由は氷だ。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「我々の科学者の調査によれば、4.5億トンの氷が月の南極に存在する」と述べている。

月の自転軸の傾きにより南極には太陽の光が射さない極めて低温の場所がある。南極のクレーター中に摂氏マイナス160度という低温により蒸発を免れた大量の氷が埋まっているとNASAの科学者は推定している。氷はロケットの推進剤に利用することができる。

マイク・ペンス副大統領は3月の国家宇宙委員会総会で大統領のコミットメントが裏付けだとしてこう述べた。

今世紀、我々は新たな野心を抱いて月に戻る。単にそこに行くだけではなく、永久に日照のない南極のクレーターの底の氷から原子力によって水をつくり、酸素や宇宙ロケットの推進剤を得る。そうした補給があれば我々の宇宙船は数年ではなく数ヶ月で火星に到達できるだろう。

Y Combinatorが支援するスタートアップ、Momentusは水を推進剤とするロケットを建造中だ。このロケットは原子炉から得られた電力で水を加熱し、水プラズマによって推進力を得る。

しかしこれまでNASAの有人宇宙プロジェクトは予算の削減などにより遅延を重ねてきた。月に戻るというのは非常に高価な事業となる。NASAも米国政府も推定金額がどれほどになるか明らかにしていない。【略】

「米国は月に戻る」というのは2017年にトランプ大統領が署名した宇宙政策指令1号(Space Policy Directive 1)に基づくものだが、NASA のプランの具体的内容は不明だ。

これがBlue Originが重要な役割を担って登場した背景だ。

本日披露されたBlue Moon月着陸船に加えて、Blue Originは2種類の宇宙ロケットを開発している。New Shepardロケットは低軌道を短時間飛行して宇宙飛行に関するテクノロジーやノウハウの収集を行うことを目的としている。ペイロードを地球周回軌道に打ち上げるのはNew Glennロケットの任務だ。 2021に最初の打ち上げが予定されており、45トンのペイロードを地球周回低軌道に投入できる。ロケットはどちらも垂直着陸によって回収され、複数回利用される。

先週、Blue OriginのNew Shepardは低軌道を弾道飛行して各種の実験を行うことに成功している。これは11回目のミッショだった。New Shepardは成層圏と宇宙の境界である高度100キロメートルまで上昇してカプセルを切り離した後、逆噴射と垂直着陸によって回収された。カプセルは慣性で上昇を続け、こちらはパラシュートによって無事回収された。

ベゾス氏はこのカプセルを一般人向け宇宙観光旅行にも利用する計画で、昨年のロイターの記事によれば、チケットは20万ドルから30万ドル程度だという。

一方、イーロン・マスク氏のSpaceXはこれとは異なるアプローチを採用してきた。SpaceXは大型ロケットを開発し、さらに超大型ロケットの開発に進んでいる。同社として「最新・最大のロケットであるFalcon Heavyは、63.8トンのペイロードを地球周回軌道に投入できる。SpaceXではさらに惑星間飛行を視野に入れた次世代宇宙船、Starshipを開発中だ。こちらは100トンのペイロードを低軌道に乗せることができるという。Starshipの最初の打ち上げは2020年に予定されている。

これ以外にも活動中の民間宇宙企業は数多い。スタートアップとしてはリチャード・ブランソンのVirgin Galacticをはじめ、Rocket Lab、Vectorなどが打ち上げプラットフォームの開発に取り組んでいる。スタートアップは現在の衛星打ち上げ事業の主流となっているロシアのソユーズ、米国のロッキード・マーティンとボーイングの合弁企業ULA、EUのアリアンスペースといった巨大企業のロケットと競争しなければならない。またロケット以外にも衛星、着陸船、制御システムなどの重要部分を開発、製造するスタートアップも多数現れている。

ベゾス氏はイベントで「月に戻るときが来た。単に旅行するのではなく、我々はそこに留まるのだ」と宣言した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook