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GitHubをAIで解析して“スキル偏差値”算出、エンジニアのキャリア選びを支援するFindyが2億円調達

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「Ruby67、Java63、トータル67」——これはエンジニア転職サービスなどを開発するファインディが算出した独自の“スキル偏差値”の一例だ。

同社ではエンジニアユーザーのGitHubをAIを用いて解析し、開発言語別の偏差値を算出している。公開リポジトリが解析の対象で、書いたコードの量や、他のプロジェクトへの貢献度、他者からのコードの支持などがベースだ。

ファインディ代表取締役CEOの山田裕一朗氏は「1番重要視しているのは、エンジニアのキャリアアップに繋がる指標になること。転職活動時などに自分のスキル偏差値を1つの武器として使ってもらえるようにしたい」と開発にかける意気込みを語る。

このスキル偏差値を活用して、エンジニアの転職や案件探しをサポートする事業を2017年より展開。現在はコアとなるアルゴリズムに磨きをかけ、さらなる事業拡大を目指している最中だ。

そのファインディは6月5日、グローバル・ブレインを引受先とした第三者割当増資により約2億円を調達したことを明らかにした。

同社は昨年PKSHA Technology代表取締役の上野山勝也氏、レアジョブ代表取締役社長の中村岳氏、クロス・マーケティング代表取締役社長の五十嵐幹氏を含む複数の投資家から資金調達を実施。今回はそれに続くシリーズAラウンドの資金調達となり、サービスやアルゴリズムの開発スピードを加速させるべく、セールス・エンジニアの採用を強化していく計画だ。

「売れなかった」求人票採点サービスからのスタート

現在ファインディではAIを活用したエンジニアのスキル評価と、それを活用したエンジニアのキャリア支援を核として事業を展開している。

主要なプロダクトは転職サービスの「Findy 転職」とフリーランスや副業の案件をマッチングする「Findy Freelance」の2つ。エンジニアとITベンチャーやデジタルトランスフォーメーションを進める大企業などを繋ぐのがファインディの役割だ。

同社は2016年7月の創業。CEOの山田氏は三菱重工業、ボストンコンサルティンググループを経て2010年に前職となるレアジョブに入社し、執行役員も務めた。

取締役CTOの佐藤将高氏は学生時代にレアジョブでアルバイトをしていたことがあり、山田氏とはその時からの付き合い。東京大学の大学院で自然言語処理やデータマイニングの技術を学んだ後、新卒で入社したグリーでのエンジニア職を経て山田氏と共にFindyを立ち上げた。

現在は2人を中心に約16名の社員・アルバイトの他、30人ほどのフリーランス・副業メンバーでプロダクトの開発を進めている。

最初のプロダクトはAIによる求人票の採点サービスだった

ファインディはもともと「Findy Score」というAIによる求人票の採点サービスからスタートしている。ただ、山田氏いわく「ある程度興味はもってもらえたけれど、一切売れなかった」そうだ。

当時は特にやることもなかったので「無料で求人票を書きます」と募集してみたところ、応募のあった10社の内9社がエンジニアの求人票に関するものだった。これが現在の主力事業にも繋がったという。

「エンジニアにヒアリングをしてみると『人事のエンジニア職種や開発言語に対する理解が不足していること』や『エンジニア自身が技術力や経験値を上手く伝えきれていないこと』などの悩みがあり、これがミスマッチの原因にもなっているとわかった」(山田氏)

この現場のペインを解消するプロダクトとして、2017年5月にスキル偏差値を軸にエンジニアと企業をマッチングするFindy 転職をリリース。2018年2月にはエンジニアのフリーランスや副業ニーズに対応したプロダクトとして、Findy Freelanceの運営も始めた。

Findy 転職は現在約1万人のエンジニア、約100社の企業が利用するサービスに成長。Findy Freelanceについても大手IT企業出身者や在職中のエンジニアを中心に約2000名が登録しているという。

ファインディのプロダクトを導入する企業

年収アップに結びつくスキル偏差値の開発へ

2つのプロダクトに共通する特徴は冒頭でも紹介したスキル偏差値だ。GitHub上で日本国内のユーザーと判定できるエンジニアの公開リポジトリ約15万件を解析し、個々のスキルを偏差値として数値化する。

コントリビューション数閲覧画面

「(技術に対する)人事とエンジニアの理解度の壁が大きかったので、その共通言語を作ることに加えて、算出した偏差値が年収とも相関してくるのが重要だと考えている。英国数理社の偏差値をあげたところで必ずしも収入に繋がるわけではないので、エンジニアのキャリアアップを支援する観点で『このスコアなら、これくらいの年収は目指せる』という目安を作りたい」(山田氏)

山田氏によると、このスキル偏差値を新卒採用などのシーンで使いたい企業もいるようだ。書類選考時など多くの候補者を判断する場合には、採用担当者が学歴(大学の偏差値など)を基準に技術力の高い学生を不採用としてしまい、有能な人材を逃してしまうケースもある。

実際、偏差値自体はそこまで高くない大学に通う学生が中退して就職するべくFindy 転職を使ったところ、数社から中途採用枠で内定が出たそう。スキル偏差値が65を超えるようなエンジニアは「学生だったとしても中途枠で内定が出るし、フリーランスとして時間単価で5000〜6000円稼ぐような人もいる」(山田氏)という。

「Findy 転職」ユーザーにアンケートを取ったところ、スキル偏差値が高いエンジニアは年収も高い傾向となった

エンジニア側のユーザーは腕試しも兼ねて登録しているケースも多く、大手IT企業からスタートアップに務めるエンジニアまで幅広い。特に副業については現職でテックリードを勤めているような人材や、マネジメント業務が多く現場でもっと手を動かしたいというベテランも多く、結果として優秀なエンジニアにアプローチできているそうだ。

スキル偏差値以外に関しては比較的シンプルなプロダクトだが、1企業あたりが1週間に押せる「いいね」の上限数に制限があったり、企業側だけでなくエンジニア側も興味を示していないとスカウトメールが送れなかったりと各機能はエンジニア目線での開発にこだわった。

「エンジニアが、エンジニアユーザー向けに機能を企画して作っているのが1番の特徴と言えるかもしれない」と山田氏が話すように、転職だけではなく普段のOSS(オープンソースソフトウェア)活動を応援する仕組みも実装している。

コントリビューションオブザイヤーの取り組み

スキル偏差値もフックとなって「そこまで積極的に転職活動をしていないエンジニア」も多数登録しているのは1つの特徴だ。ファインディのサービス上で自分が気になる企業が見つかり、転職顕在層になることなく転職するユーザーもいるという。

特にFindy 転職の場合は求人票のアドバイスなど企業側のサポートも徹底的に実施することでマッチングを後押ししている。この辺りは求人票採点サービスで培ったナレッジや経験なども活かされているようだ。

テクノロジーとビジネスを繋ぐ“接着剤”目指す

ファインディのメンバー。前列1番左が代表取締役CEOの山田裕一朗氏、1番右が共同創業者で取締役CTOの佐藤将高氏

ファインディでは今回調達した資金を活用して人材とアルゴリズムへの投資を強化する方針。「コアとなるスキル偏差値の算出やマッチングに関わるアルゴリズムの精度向上に一層力を入れていく」(佐藤氏)ほか、特に大企業の顧客獲得に向けたマーケティング活動にも資金を使っていく。

「かつて日本は技術立国としてハードウェアの領域で優れたプロダクトを生み出し、世界を驚かせてきた。今後はソフトウェアやアルゴリズムの領域でどれだけ戦えるかが重要。テクノロジーが組織に紐づいてきたハードとは異なり、ソフトやアルゴリズムでは個人の力の影響度が大きい。事業を通じて新たなテクノロジーの担い手となる個をエンパワーしていきたい」(山田氏)

現在はアルゴリズムを用いてエンジニア個人のスキルを見える化することに挑んでいるが、ゆくゆくは企業の技術力やカルチャーを評価する指標も開発していく予定。「テクノロジーとビジネスを繋ぐ接着剤になること」を1つの目標に、プロダクトの改善と拡張に取り組んでいくという。