国際宇宙ステーション

民間宇宙探査のパイオニアとなったイラン女性は国際宇宙ステーションの商用化を歓迎

次の記事

VMwareがマルチクラウドロードバランシングのAvi Networksを買収

XPRIZEのCEOでProdeaの創設者であるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏は、イランで過ごしていた子供時代に宇宙飛行士になることを夢見ていた。しかし、ご想像のとおり、周りの人間はほとんどがその野心を理解してくれなかった。ところが2006年、彼女はロシア宇宙センターで私財を投じて訓練を受けてソユーズ宇宙船に乗り、個人資金で国際宇宙ステーション(ISS)を訪れた世界最初の民間女性となったのだ(しかもそれは、イランの民間人、そしてイスラム教徒の女性としても初だった)。

その当時NASAは、アンサリ氏が料金を支払ってISSに搭乗するというアイデアには興味がなく、むしろ明らかに嫌がっていた。それから13年が経った今週の初め、NASAは、ISSを「ビジネスに開放する」と公式に発表し、一晩の宿泊料を1人あたりおよそ3万5000ドル(約380万円)と提示した(これはあくまで宿泊料金。旅費は自分で考えないといけない)。今週、トロントで開かれているCreative Destruction Lab(創造的破壊研究所)イベントで、私はアンサリ氏に会い、今回の画期的な決定が宇宙ビジネスにどのような利益をもたらすのか、またこの分野での彼女の展望、さらに宇宙に特化したスタートアップ全般に与えられるチャンスについて話を聞いた。

「ほんと7年前の6日間、もっと長かったかも知れないけど、そのとき使っていたノートパソコンを持ってくればよかったわ。そこにはISSの賃貸化。それは現実になる!って書いてあったの。私には予知能力があったのね」とアンサリ氏は冗談を飛ばした。「でも、それは理に適っていると思います」。

宇宙ステーションを訪れ利用することで得られる商業的、個人的な利益に対するNASAの認識を考えるに状況が変化した理由はいくつもある。とりわけ大きな理由は、当初のミッションで設定されていた期間を超えて老朽化が進み、現実に機能上の寿命を迎えようとしていることだ。

「宇宙ステーションは【中略】、現在すでに寿命を延長した状態です」とアンサリ氏は言う。「なので、次世代への投資のために、(当初予定してたミッションに上乗せして)うまく利用して利益を生むことができるようになったのです」

最初に計画されていたミッションが事実上終了したとしても、まだしばらくの間は、民間企業がその施設を使うことで多大な恩恵を引き出せる。

「宇宙ステーションでの研究や実験には非常に大きな関心があるため、コストは劇的に下がると思います」と彼女は、NASAのガイドラインに提示された民間宇宙飛行士の費用に関して言い添えた。「とはいえ、それでもそこへ行くまでのコストはかかります。つまり、誰もが支払える額にはならないということです。しかし、一晩3万5000ドルの家賃を支払えば実験が行えるのです。それは驚きです」。

「多くの企業が、製薬、医療、健康などの本当にたくさんの企業が、それを利用して実験を行うと私は考えています」とアンサリ氏。「それに私はわくわくしています。実現してよかった」

5月15日、米国カリフォルニア州プラヤ・ビスタにて。写真に向かって左から、XPRIZEのCEOを務めるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏、XPRIZEの創設者で執行委員長を務めるPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏、Global Learningでエグゼクティブディレクターを務めるEmily Church(エミリー・チャーチ)氏。XPRIZEは、Global Learning XPRIZE財団大賞授与式のためにGoogleのプラヤ・ビスタ・オフィスを訪れた。(写真:Jesse Grant/Getty Images for Global Learning XPRIZE)

アンサリ氏にとって、宇宙の商用利用分野の成長は、XPRIZEの原点だ。彼女は昨年の10月から、この財団のCEOを務めている。アンサリ氏とその義理の弟であるAmir Ansari(アミー・アンサリ)氏が多額の寄付を行ったことでその名が冠された賞金1000万ドル(約11億円)のコンテストAnsari Xprizeは2004年に勝者が決まり、それが今日のSpaceXの事業の道筋を付けた。

「最初のコンテストは、2週間以内に2回宇宙に行くというもので、賞金は1000万ドルでした。繰り返しの打ち上げが可能であることを証明したかったのです。SFの話ではなく、商業的に可能だということを。しかも、妥当なコストで行えるということをです」とアンサリ氏は振り返る。「必須要件がありました。たしか、燃料の容積を除く95%が再利用可能であることです。2台のロケットを作って、ひとつを飛ばして、次にあっちを飛ばすとったやり方では主旨に合いません。それが本当にビジネスに利用できることを確かめられるよう、条件を整えたのです」。

そこで大切な要素は、民間企業でも手が届く投資レベルで商業的に実現可能な関心事になり得ることを、初めて実証することだった。もうひとつの大切な要素として、関係当局の認可のもとで、参加者が実際に打ち上げが行える環境を作ることがあった。

「私たちは規制当局と米連邦航空局(FAA)との協力のもとで、民間人の打ち上げがどうしたら可能になるかを探りました。FAAには、対処方法がわからなかったからです」とアンサリ氏。「彼らは、宇宙に何かを打ち上げたいという民間企業と関わったことがなかったのです。そこで私たちの働きかけと、NASAや規制当局と行ってきた実績から、彼らは門戸を開き、そのための部門を立ち上げました。今それは、FAA Office of Commercial Space Tranportation(民間宇宙輸送局)と呼ばれています」。

2017年から打ち上げられているSpaceXのCRS-11。SpaceXが民間ロケットを打ち上げられるようになったのも、XPRIZEが商用打ち上げ事業のガイドラインを確立したお陰だ

今日までの働きで、数多くの分野を開拓し、スタートアップのための道を切り開いてきたアンサリ氏だが、Creative Distruction Labの初日に行った基調講演で、参加していた起業家たちに対して、このチャンスに満ちた新しい分野についていくつかの要求を突きつけた。彼女は、「雲の上に存在するクラウドシステム」には多大な可能性があり、データ・ウェアハウス施設を宇宙で運用すれば、電力と熱管理の面で今すぐ恩恵が得られると指摘した。

彼女はまた、スタートアップに対して、自分たちが作るものの波及的な影響力を念頭に置くよう訴えた。具体例をあげれば宇宙デブリだ。より広義においては、急激な変化は自然に恐怖の反応を引き起こすことを忘れないで欲しいと話した。

「エンジニアは、おもちゃやテクノロジーで遊ぶのが、ただただ大好きなので、これは難しい問題です」と彼女は話した。「しかし、こうした考えを理解させるのは、ここに集った私たちの役目です」。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)