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電動垂直離着陸機による地域航空サービスが意外にも早く実現される理由

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今月初めにワシントンDCで開催されたUberのElevateサミットには、オンデマンド航空サービスの到来が近づいたことを讃えようと、研究者、業界のリーダー、エンジニアたちが集結した。デトロイトのAirspace Experience Technologies(ASX)の共同創設者にして最高製品責任者のAnita Sengupta博士にとってそれは、電動垂直離着陸機(eVTOL)を実用化する同社独特のアプローチが、ビジネスとして成り立つことを証明する実りあるイベントだった。

ASXのeVTOLは、ティルトウィング方式だ。この分野のイカしたコンセプト航空機によく見られるティルトローター方式とは明確に異なる。それそれの方式の名称から察しが付くだろうが、ティルトウィングは、翼全体が角度を変えるものだ。それに対して、ティルトローターは、翼構造は固定されたままでローターの角度だけが変化する。

Sengupta博士によると、ASXがティルトウィングを採用したのは、素早く市場に送り込めて、現行の規制や飛行機操縦免許の枠組みと互換性があるため有利だからだ。それだからこそ、ASXは貨物輸送サービスをいち早く顧客に提供できる。人の輸送は、規制当局と一般社会が問題ないと認めた時点で開始される。

ASX創設者の2人。Jon Rimanelli氏とAnita Sengupta博士(写真提供:ASX)

「採用する航空機の構造によって、例えば私たちが選択した固定翼機の場合、回転翼機には区分されません。私たちの飛行機は、多発固定翼機となります。おわかりのとおり、垂直離着陸機能のための特別な認可が追加されるだけです。もちろん、パイロットには特別な審査がありますが、ヘリコプターではなく、固定翼機のパイロットが操縦することになります」とSengupta博士は説明してくれた。

ASXの飛行機は、狭い場所では垂直に離陸でき、広い場所では、私たちが日常利用している昔ながらの飛行機と同じように、短距離を滑走して離陸することもできる。これは、従来式の操縦訓練と経験を積んだパイロットにとって操縦しやすい飛行機であるだけでなく、既存のインフラに比較的簡単に適応できることを意味する。米国全国にすでに点在しながら、あまり利用されていない地方空港を活用できるのだ。

「趣味で飛行機を操縦する人でなければ、全国くまなくゼネラルアビエーション空港(民間向け多目的空港)があることを知らないでしょう。そこは、私たちのような(Sengupta博士もパイロットだ)趣味で飛行機を飛ばしている人間がよく利用しているだけで、ほとんど使われていないのです」と彼女は言う。

「私たちの地元にあるデトロイトシティーエアポートなどは、1日に発着する飛行機が3機だけなんていうときもあります。そこは、行政の資金で建設され、行政の経費で運営しているのですが、活用されていません。それを、新しいUAM(Urban Air Mobility、都市型航空交通システム)のためのスペースとして使うのです。人にとっても貨物にとっても、それはとても良いことです。新しい交通システムのいちばんの障壁になるのが、インフラのコストですからね」

ASXは、実際に飛行機を飛ばすのも早かった。それが、商業化への独自路線を整える助けになっている。同社は、デモンストレーションとテスト用に6機の縮小モデルを製作した。実際の製品版の5分の1サイズのものが5機と、3分の1サイズのものが1機だ。これらの試験機を使えば、あらゆる飛行モードのデモンストレーションが、デトロイトシティーエアポートの管制塔から楽に目視でき、モニターできる。

「小さな会社で資金繰りが本当に厳しいときは、縮小モデルを使えば、改良を重ねたり、プロトタイピングしたり、飛ばし方を研究するといった仕事が数多く行えます」とSengupta博士は私に話してくれた。

「ソフトウェアの観点からすると、ある程度の完成を見るまで、つまり満足のいく設定ができるまで、フルサイズの実機を作る必要はありません。そのため、次の投資(昨年は1億円を少し超える資金を調達している)が得られたら、実際の大きさのものを作る予定です」。

Sengupta博士とASXの大きな目標は、地域電動航空機の経済性を変えることで、効率的な空の旅の時代を引き寄せる手助けになることだ。それは、ともにeVTOLによる物流市場の可能性を探る新たな覚書にサインしたグローバル運送サービス企業であるTPS Logisticsを含む、投資家も業界のパートナーたちも惹きつけることになる。

「現在、空港は大変に混み合っています。このままでは混雑は増す一方で、業務用の駐機場や滑走路を造設しなければならず、それには大変な費用がかかります。ゼネラルアビエーション空港を地域航空交通の要にできれば、民間空港にそれらを建設する必要がなくなり、さまざまな問題が一気に解決します」とSengupta博士は話す。

「例えば300マイル(約480km)の距離を飛行する場合、まずはハイブリッド方式を使うことになるでしょう。エネルギー密度がまだそこまで高くないからです。しかし、完全に燃料で飛ぶよりはましです。

そして理想を言えば(中略)水素燃料電池が、地域飛行に必要なエネルギーを供給してくれる本命です。そのため、まずは都市部でのごく短い距離で電動飛行機の使用事例を作り、それをもとに、地域航空用の完全な電動飛行機を開発するよう業界に圧力をかけるのです」

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(翻訳:金井哲夫)