Wonder Workshop
STEM

ロボットは教室に居場所を見つけることができるのか?

次の記事

audiobook.jpがポッドキャスト配信者のマネタイズを支援、「課金システム」を提供開始

数年前、投資家たちは、各家庭にロボットがある未来の到来に沸いた。Jibo、AnkiのCozmo、Mayfield RoboticsのKuriのようなロボットがブームとなり、ベンチャーキャピタルから数億ドル(数百億円)の投資を集めたのだ。そしてその後、上に挙げた3つの会社は、すべて潰れた。子ども用のハイテク製品に詳しいRobin Raskin氏をして「ハイテク玩具の世界の輝きは失われてしまったのか?」と言わしめることになった。

こうしたロボットと、そのメーカーが消滅してしまうのを見れば、いったいいつになったら、ロボットが私たちの生活の中で現実的な役割を果たす日が来るのだろうか、ほんとうにそんな日が来るのだろうか、と疑いたくなるのは当然だ。しかしロボットの中には、すぐには思いつきにくいようなところに居場所を見つけているものもある。学校だ。

ロボットが成功するためには、人間のニーズを満たし、実際の問題を解決し、そして使われ続けるようなアプリケーションを見つける必要がある。家庭では、現在の世代のロボットは、確かに子どもたちに数時間の娯楽を提供するかもしれない。しかし、やがて他の新しいおもちゃと同じように、見向きもされなくなってしまうのがオチだ。

しかし学校では、ロボットは、コーディングによって命を吹き込むことにより、デジタルと現実世界の溝を埋める役割を果たすことができるのを証明している。技術に明るい教師は、ロボットがプロジェクトベースの学習に活力を与えることができるのを目の当たりにしている。価値のある批判的な思考力と、問題解決のスキルの獲得を促すのだ。

K-12(幼稚園から小中高校まで)の学校が、いち早く最新技術を導入することに道を開くのは、今回が初めてではないだろう。40年前、Apple IIは、まず学校で広く採用された。デスクトップコンピュータが一般の家庭に入り込むより前のことだ。ノートパソコンも、まず学校で盛んに利用され始めたのは、よく知られた話だ。軽量で持ち運びもしやすく、クラス内での補習的な授業や、マルチメディア普及にも一役買った。さらにタブレットについても、いち早く採用したのは学校だった。目立った失敗もあったが、今ではK-12の教室の中のどこにでもあるものとなった。

K-12の学校におけるロボット類の進出は、新しいガジェットの可能性に興味をそそられたことによるものだけではなく、コンピュータサイエンスの教育に力を注ぐ必要性にも支えられたものだった。ほんの10年前には、STEM教育の要件として、コンピュータサイエンスを含めることを承認していたのは、わずか2、3の州しかなかった。今日では、ほぼすべての州が、コンピュータサイエンスのコースを、卒業要件の1つとしてカウントすることを認めている。そして17の州では、すべての高校に、コンピュータサイエンスのコースを提供することを義務付けている。

高校レベルで、コンピュータサイエンスの重要性が増していることが、小中学校の教育にも影響を及ぼすようになってきた。生徒を、州の新しいK-12コンピュータサイエンスの基準に導くための効果的な方法として、教師がロボットを利用するようになっているのだ。カリフォルニア州の教育委員会は、ロボットを使用することで、州の基準のうちの5つを満たすよう、学校に指示するまでになった。

教育者は、おもちゃとしてではなく、学習のための強力なツールとしての、ロボットの可能性を認識しつつある

教室で使われるロボットは、家庭用のロボットとは、設計レベルから根本的に異なるものだ。学習用として利用するには、家庭用にありがちな手軽なだけに底の浅い体験ではなく、生徒が数ヶ月から数年にわたって取り組み続けることができるような、深く多様な体験を提供できるものでなければならない。また教室で成功するためには、教師がそれに沿って教えられるよう、よく考えられたカリキュラムとともに提供されなければならない。ロボットは比較的高価なので、教師は長期間にわたって使える信頼性の高いものを必要としている。

LittleBitsやSpheroのような会社は、こうしたトレンドを見逃さなかった。これらの会社は、レゴのような伝統的な会社が支配していたK-12市場に向けて素早く舵を切り直した。またWonder Workshop(ワンダーワークショップ)のロボットは、アップルストアやアマゾンといった小売チャンネルを通して人気を得ることになったものだが、今では全世界で2万以上の学校に採用されている。今のところは、米国内のK-5(幼稚園から小学5年生まで)の教室の、ほんの一部で使われるようになっただけだが、彼らの成功は、投資家からの関心を集めるだけでなく、イノベーションを加速する可能性もある。ただし、それは、今だにSTEM教育のクラスや、ハイテク産業そのものを悩ましている、やっかいな公平性の壁と無縁ではいられないかもしれない。

玩具業界は、長年にわたり、男の子用と女の子用に分けて、製品を企画し、販売してきた。それが製品のデザインから広告にまでおよぶ、ある種の偏見を助長してきた。教室で使われるロボットのデザインは、すべての生徒にアピールするものでなければならない。たとえば、Wonder WorkshopのDashロボットの初期のバージョンは、駆動用の車輪が露出したものだった。

最初のユーザー調査で、同社は、生徒が車輪付きロボットを、車やトラックに見立てていることを理解した。言い換えれば、彼らはDashを男の子用のものと見なしていたのだ。そこでWonder Workshopは、Dashの車輪をカバーで覆うことにした。それは当たりだった。今では、同社のWonder League Robotics Competition(ワンダーリーグロボット競技会)の参加者のほぼ50%が女子で、毎年の優勝チームの多くが、女子だけで構成されたチームとなっている。

現在では、ロボットが人間の仕事を奪うようになるといったディストピア的な未来がまことしやかに語られがちだ。しかし教室用のロボットは、ますます多様化する教育のニーズに対応できるよう、実際に教師の役に立っている。さらに、生徒の実行力、創造性、そして他の人とのコミュニケーション能力を向上させるのにも一役買っているのだ。

教育者は、おもちゃとしてではなく、学習のための強力なツールとしての、ロボットの潜在能力を認識しつつある。そして幼稚園に通うくらいの年頃の子供たちは、ロボットを使うことで、数学的な概念を、より早く、深く理解することができるようになっている。今日、教室でロボットから学び、さらにロボットといっしょになって学ぶ機会を持っている生徒が、新しい世代のロボットを開発することになるかもしれない。将来にわたって私たちの生活の中で役割を果たすことができるようなロボットだ。彼らは、単なる技術の消費者としてではなく、技術のクリエーターとして成長していくだろう。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)