ミライ小町
Furhat Robotics
バンダイナムコ研究所

バンダイナムコと北欧スタートアップFurhatが目指す「人間とアニメキャラクターの現実世界での交流」

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スウェーデンの首都ストックホルムを拠点とするハードウェア・スタートアップのFurhat Roboticsバンダイナムコ研究所と共同でPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施している。

両社が目指すのは「人間とアニメキャラクターの現実世界での交流」。Furhatのロボティクスの技術がエンターテインメントの世界にどのような変革をもたらすのか、「バンダイナムコの知見を活かしながら探求している最中だ」とFurhatのCEO、Samer Al Moubayed氏は話す。

「誰もが愛することのできる(ロボットを)作ろうとしている。たかが『プラスチックのおもちゃ』ではない、人々と心を通わせることのできるキャラクターだ」(Moubayed氏)。

2014年に設立されたFurhat Roboticsは、人間と接するように交流できる「AIソーシャルロボット」を開発し、提供している。特徴は、映像を照射することで様々な表情を作ることや、アイコンタクトやジェスチャーなどでリアルな「人間感」を再現できる点だ。3DoF(3自由度方向)に対応しているほか、マスクを映像に適したものに交換することもできる。同社が開発しているこの胸像のようなインターフェイスは、実はここ日本でも少しばかり話題になっていた。

今年の5月、JR東日本は「ご案内ロボットの実証試験」をドイツ鉄道と共同で開催。同実証実験では両社がそれぞれの自慢の案内ロボットを東京駅構内に設置し、鉄道利用者の反応をアンケートで調査するというものだった(実証実験の結果のデータに関しては、後日、ドイツ鉄道に詳しく話を聞く予定だ)。JR東日本が用意したのはおなじみのPepper、そしてドイツ鉄道が設置したのは「SEMMI」という胸像型のロボット。このSEMMIのベースとなっているのが、Furhat Roboticsが開発した接客ロボの「Furhat」だ。

Moubayed氏いわく、設立よりFurhatは同社のロボットをラップトップやタブレット、スマートフォンなどのようなデバイスに宿し、デベロッパーが独自の専用アプリを開発をするといったエコシステムの構築を目指してきたのだという。これまではドイツ鉄道とのSEMMIのように実務のためのロボットを開発することが多かったため、バンダイナムコ研究所と進めているエンタメ分野での利用を想定したPoCは「大きな挑戦となった」と同氏は述べた。

エンタメ利用を想定しているため、「ロボットの表情を未だかつてないほど豊かにする必要があった。また、このキャラクターを知っている人であれば、少しの違いでさえ違和感を感じてしまう」(Moubayed氏)。

Moubayed氏が言う「キャラクター」とは、「バンダイナムコスタジオのゲーム開発技術や未来に向けた技術研究を紹介するために生まれたオリジナルキャラクター」のミライ小町だ。ミライ小町はボーカロイドになっているほか、3Dモデルデータのダウンロードも可能な、バンダイナムコの広報キャラクター。バンダイナムコ研究所とFurhatのPoCでは、このミライ小町をFurhatのロボットに違和感なく落とし込むことに挑戦している。

バンダイナムコ研究所のイノベーション戦略本部、クリエイティブデザイン部の課長で事業プロデューサーを務める中野渡昌平氏は、「原理検証では、例えば『目の前に来た人に愛嬌を振りまく』といった表現を実験している」と話し、「個々人が楽しむというよりは、1つ置いたときに色々な人たちが同時に楽しむことができる」ことを想定している、と加えた。

ARやMRの場合は機器を装着する必要があるため「個人が楽しむ」ものとなるが、Furhatのロボットならばデバイスを装着しなくても複数人が同時に楽しめ、加えてコンテンツを入れ替えられるという点に可能性を感じている、と中野渡氏は話した。

「私たちの武器はコンテンツを作ってきた歴史からなる、演出や世界観の構築ためのノウハウ。それをこのハードウェアにぶつけてみたら新しい新しい遊びの種が生まれるのではないかと思っている」(中野渡氏)。とは言うものの、バンダイナムコ研究所とFurhatの考える「可愛い」には大きな違いがあったため、口の高さやサイズ、目つき、肌艶、口の開け方、など、細かな調整にはかなり手を焼いているようだ。

バンダイナムコグループは「バンダイナムコアクセラレーター」も運営しているが、バンダイナムコ研究所の執行役員でイノベーション戦略担当を務める堤康一郎氏いわく、同社ではここ3〜4年、海外スタートアップとのPoCを年に1〜2社程度行っているそうだ。

「研究所の中ではハードウェアを作るわけではないので、IoTのデバイスなどの技術を持っていて、新しいことができそうなところをいくつか見つけ、サービスやエンタメ化できないかを試している。先行的に研究して、時期が来たら導入という形を目指している」(堤氏)。

バンダイナムコ研究所とFurhatとの取り組みはまだPoCの段階であり、今後の具体的な展開は一切決まっていない状況だ。だが、中野渡氏いわく、「新しいビジネスに発展させる可能性はある」という。

「『1つ置いたときに色々な人たちが同時に楽しむことができる』、そのような価値を提供できるところがどこか、またグループのどこで輝く技術となりそうか、研究所ではFurhatと検討を進めている」(中野渡氏)。