自律運転車の寿命はわずか4年というフォードの目算の真実

次の記事

スポーツ×テクノロジーで世界を変えるスタートアップ発掘「SPORTS TECH TOKYO」成果発表会レポート

自動車業界は、交通渋滞、安全、生産性(乗車中に仕事ができる)など、今まさに現代社会が格闘している数々の問題を一気に解決してくれる万能薬であるかのように、自律運転車を宣伝している。

しかし残念なことに、あるひとつの非常に大きな疑問が置き去りにされている。自律運転車は、どのくらい持つのだろうか?

その答えには誰もが驚くだろう。ロンドンのザ・テレグラフのインタビューで、フォード・オートノマス・ビークルズ(Ford Autonomous Vehicles)執行責任者ジョン・リッチ(John Rich)氏は、「世界の自動車の需要が減少するとは、まったく思っていません」と話した。なぜなら「この業界では4年ごとに車を使い切って潰しているから」だという。

4年とは! ボロボロになってもまだ走り続けているニューヨークのタクシーの寿命が、2017年の平均で3.8年とのことだが、それと比較しても決して長持ちとは言えない。ニューヨークのタクシーの中には新車もあるが、7年以上も奉公している車もある。

アメリカの自動車オーナーが1台の車に乗り続ける平均の年数は12年近いという。それと比べると驚きが増す。実際、自動車の製造や維持管理の技術が飛躍的に進歩していることもあり、アメリカ人は以前よりも車を長く使うようになった。ロンドンの調査会社IHSマークイットの2002年の調査では、1台の車の寿命は平均9.6年だった。

それでは、何十億ドルもの投資がつぎ込まれている自律運転車の場合はどうだろう。ペンシルベニア州ピッツバーグのスタートアップ、アルゴAI(Argo AI)は、3年前にフォードから10億ドル(約1060億円)の投資を受け、この夏には、フォルクスワーゲンとフォードの包括的な業務提携の一環としてフォルクスワーゲンから26億ドル(約2750億円)の資本投資を受けている。アルゴはフォードの車両に搭載する自律運転技術の開発を委託され、現在、5つの都市で技術実験を行っている。

私たちは、フォードがいかにして4年という寿命を導き出したのか、寿命を延ばすことはできないかなど、4年間という数字の本当の意味をアルゴが解き明かしてくれるものと期待した。しかし、実際に車を扱うのはフォードであり、アルゴは車の製造、整備、運用といったビジネスには関わらないため、彼らはフォードのリッチ氏を紹介してくれた。リッチ氏は、忙しい中、私たちの質問に電子メールで答えてくれた。

まずは、こんな質問をしてみた。フォードは自動車の1年間の走行距離をどの程度に想定しているのか。それがタクシーやフルタイムのウーバーのドライバーの距離より長いか短いかを知りたかったのだが、彼は答えず、代わりに、フォードは目標とする走行距離は公表しないが「車両は最大限に利用されるようデザインしている」と話してくれた。

リッチ氏はこう説明する。「今日の自動車は、1日のうちほとんどが駐車場にいます。利益を生む現実的な(自律運転車のための)ビジネスモデルを構築するには、ほぼ1日中走り回っている必要があります」。

実際、とくにフォードは、今すぐにでも自律運転車を個人向けに発売することはないだろう。むしろ、配達業などのサービスに、または他の業者による自律的な貨物輸送に車両を使うことを計画している。フォードは「自律運転車の最初の商用利用は輸送業中心になる」と見ているとリッチ氏は言う。

また私たちは、完全な自律運転車の寿命に関するリッチ氏の予測は、フォードの自律運転車は内燃機関で走るという彼の期待と関連しているのか否かも疑問に思った。ほとんどの自動車メーカーは、低燃費、低排出ガスを約束する新しい構造の内燃機関に投資をしている。しかし、内燃機関は電気自動車に比べると部品点数が多い。より多くの部品がストレスを受けると、それだけ故障要因も増える。

いずれは電池式の電気自動車(BEV)へ移行することを考えているフォードだが、「利益を生む現実的なビジネスモデルを構築するための最適なバランスを探す必要がある。つまり、まずはハイブリッド」から立ち上げるとリッチ氏は話していた。

彼によれば、自律運転車としてのBEVの課題には、今のところ「自律運転トラックの運用に必要な充電インフラの不足があり、充電スタンドと充電インフラの建設と運用も、すでに資本集約的な性質を帯びた自律運転車技術の開発に組み込まれなければならない」とのことだ。

もうひとつ課題がある。「車載技術が原因の航続距離の減少です。BEVの走行距離の最大50%分の電力が自律運転システムの演算、エアコン、そして送迎サービスで、また乗客を楽しませるために必要な娯楽に消費されます」という。

フォードはまた、稼働率を気にしているとリッチ氏は言う。「利益を生む自律運転車ビジネスの鍵は稼働率です。充電器の前でずっと停まっていては、お金になりません」。

バッテリーの劣化も懸念材料だ。「自律運転トラックは毎日急速充電をする必要がありますが、バッテリーの酷使は劣化につながります」と彼は言う。

内燃機関の排気ガスがなくなれば、世界はずっと良くなるのは当然だ。明るい側面としては、フォードの自動車の寿命が短かったとしても、素材の80〜86%はリサイクルして再利用される。業界団体インスティテュート・オブ・スクラップ・リサイクリング・インダストリーズ(ISRI)によれば、アメリカでは、毎年、合計で1億5000万トンのスクラップ素材がリサイクルされている。

そのうち8500万トンが鉄と鋼だ。ISRIによると、アメリカではその他に550万トンのアルミもリサイクルされている。軽量だが鋼よりも高価な自動車材料だ。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)