プログラミングなしで複数SaaSを連携、定型作業を自動化するiPaaS「Anyflow」が資金調達

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生産年齢人口が減少しこれから人手不足が一層深刻化すると考えられる日本において、テクノロジーを活用した業務の効率化・自動化にかかる期待は大きい。

特に近年はAIを活用したものを中心に様々なプロダクトが登場してきているが、「定型業務を自動化する仕組み」という観点で注目を集めるのがRPAだ。

Robotic Process Automationという名の通り、ロボット(プログラム)がPC上の業務を自動で実行してくれるこの技術は国内でも徐々に拡大。昨年紹介したPRAカオスマップを見ても多様なプレイヤーが関わっていることがわかるし、国内企業のRPA導入率は32%なんて調査結果もある(MM総研が2月に発表したもの。年商50億円以上の国内企業1112社が対象なのであくまで参考程度ではあるけれど)。

その一方で「ロボットが間違えを起こした」「エラーで止まってしまった」などRPAに関する課題や悩みを声を聞くようにもなってきた。他のテクノロジーと同じようにRPAも万能ではなく、時にはフィットしない場面もある。それが徐々に浮かび上がってきたタイミングということなのかもしれない。

今回紹介するAnyflowはそんなRPAとは異なる「iPaaS」というアプローチで業務の自動化・効率化に取り組むスタートアップだ。

同社は9月24日、事業拡大に向けてCoral Capitalを引受先とするJ-KISS型新株予約権方式により2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

SaaS同士をつなぎ合わせ、より便利にSaaSを使えるように

Anyflowが開発する「Anyflow」はクラウドネイティブなiPaaSだ。

iPaaSとはそもそもintegration Platform-as-a-Serviceの略称で、SaaSのようなクラウドサービスとオンプレミス型のサービスを統合するプロダクトのこと。Anyflowの場合はプログラミングなしで複数のSaaSを簡単に繋ぎ合わせ、業務を効率化できる。

たとえば名刺管理ソフトとSalesforceを連携させて、名刺交換した人の情報を自動でSalesforce上に転記したり。労務ソフトの入力をトリガーに、Slackなど社内ツールへメンバー招待業務を自動化したり。SaaS同士を繋ぐことで、各SaaSをもっと上手く使いこなせるように手助けするプロダクトと捉えてもいいかもしれない。

Anyflowを使う際には自動化したいアクションを「ワークフロー」として管理画面上に作成していく。ワークフローは自分でゼロから作るほか、既に登録されているレシピ(テンプレートのようなもの)を使ってもいい。

ワークフローを自分で作る場合は連携させたいSaaSを選び、どんな場面でどのようなアクションを実行するのか、具体的な条件を設定していく。分岐や繰り返し、フィルターなど設定を細かな調整をすることはもちろん、ワークフローから別のワークフローを呼び出すことも可能。特殊なケースでなければ、大抵の業務はビジネス部門のメンバーが自身でサクサク効率化できるという。

「日本の企業は1社あたり平均で20種類くらいのSaaSを使っていて、その連携に困っているという悩みがある。従来は自社のエンジニアや外部のSIerに依頼するのが一般的だったが、スピードやコストの面が課題。(SaaS間の連携を)ビジネス職の人が自分でできるようになるというのがAnyflowの特徴だ」(Anyflow代表取締役CEOの坂本蓮氏)

方向性としては冒頭で触れたRPAと似ている部分もあるが、坂本氏によると「RPAとの決定的な違いはAPIをフル活用すること」にある。

基本的にRPAはコンピュータのマウスやキーボードをシミュレートして操作する類のプロダクトであるため、仕様変更が少ないアプリケーションに関する作業の自動化にはもってこい。一方でSaaSのようにアップデートが多いものを対象とする場合、その都度ロボットが止まってしまう恐れがある。

「Anyflowでは各SaaSが公式で用意しているAPIを使っているので仕様変更に強い。ただ必ずしもiPaaSの方が優れているという話ではなく使い分けだと思っていて、APIがなければiPaaSの力は発揮できないし、RPAの方が向いているアプリケーションもある」(坂本氏)

実はもともとAnyflowでもクラウド型のRPAを作ろうと思っていたのだそう。しかしヒアリングを繰り返している内に「SaaSを使っている企業にとってはRPAだと仕様変更がボトルネックになる」と感じ、最終的に現在のiPaaSへと方向性をシフトした。

Anyflowは7月にベータ版をローンチ。これまでは約10社とPoCのような形で同サービスを使った取り組みを進めてきたが、今月からとあるマザーズ上場企業で有償導入もスタートしているという。

プライシングは連携できるSaaSの数に応じた月額モデル。現時点ではミニマムで3万円から利用できる仕様だ(3個まで連携可能)。

SaaS同士をつなぎ合わせ、より便利にSaaSを使えるように

国内ではiPaaSの認知度はそこまで高くないかもしれないが、海外ではむしろRPA以上にiPaaSのマーケットが広がっている。Salesforceが2018年に約7000億円で買収したMulesoftや日本でもちょこちょこ耳にするZapierを始め、プレイヤーの数も多い。

膨大な数のアプリケーションを連携できる海外の主要プロダクトに比べると、Anyflowで連携できるのはSalesforceやSlack、Googleカレンダーなど約10サービスとまだ少ない。ただし日本のSaaSや日本語のサポートに対応しているものは限られるため、まずは国内SaaSを中心に連携できるサービスを増やしながらプロダクトの機能強化と顧客獲得を進めていく計画だ。

国産のSaaSではfreee、Senses、Sansan、kintoneなどの対応を進めているそうで、直近では電子契約サービス「クラウドサイン」との連携もスタート。同サービスで契約締結されたらSalesforceに登録されている取引のフェーズを「契約締結完了」にしたり、締結した書類のPDFをGoogle DriveやDropboxに保存してバックアップを取ったりといったことを自動化できるようになった。

Anyflowは2016年にサイバーエージェント出身の坂本氏を含め、3人のエンジニアが共同で立ち上げたスタートアップ。最初の約2年間はグルメサービスなどC向けのプロダクトを開発するもなかなか上手くいかず、何度かチャレンジした末に現在のクラウドネイティブiPaaSに行き着いた。

「全員エンジニアだったこともあり、必要な時は自らコードを書いて作業の効率化や自動化を進めていた。初めてRPAの概念を知った時に『エンジニアがやっていることを民主化する』ような形で、コードを書けない人でも簡単に自動化できる仕組みがあれば便利だし、自分たちも得意な領域だと考えたのがきっかけ。ユーザー調査を進めていく上で『RPAよりもiPaaSの方が良いのでは』という結論に至り、今のAnyflowが生まれた」(坂本氏)

Anyflowのメンバーと投資家陣。左から3人目が代表取締役CEOの坂本蓮氏

同社はC向けのプロダクトを開発していた頃に赤坂優氏や堀井翔太氏、古川健介氏から資金調達を実施しているが、iPaaSへと方向転換してからは今回が初めての調達。まだ始まったばかりではあるものの「過去のプロダクトよりは手応えを感じている」そうで、先日開催されたIncubate Campでは総合1位も獲得している。

最近はTechCrunchでも日本のSaaSスタートアップのニュースを紹介する機会が増えてきた。今後このマーケットがさらに拡大すれば「SaaSをさらに使いやすくするプロダクト」としてAnyflowのようなiPaaSのニーズも増していきそうだ。