アップルは英国の視覚効果スタジオIKinemaを買収してAR/VRへの取り組みを加速

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Apple(アップル)は、英国の特殊効果スタジオIKinemaを買収したと伝えられる。Appleは、ARを利用した特殊効果をモバイルデバイスに搭載したり、より広範囲に使えるAR/VRヘッドセット市場への参入を目指していると考えられている。そのための布石となるスタートアップ買収だ。

Appleは、今回の買収について、TechCrunchに対して型通りの回答を返した。「Appleは、折に触れて小さな会社を買収しています。ただしその目的や計画について、いちいち説明するようなことはしていません」ということだ。このニュースは、まずMacRumorsが噂を広めた後、Financial Timesによって最初に報道された。

IKenemaは、モーショントラッキング機能を利用して、デジタルキャラクターの身体の動きをライブアニメーション化した。また、そうした情報を蓄積して、デジタル世界でデジタルキャラクターに本物そっくりの動きをさせるモデルを作成した。これは、特にゲームや、仮想現実のタイトルのコンテキストで有効なもの。

それらのモデルは、やはりスタートアップのRunTimeの製品で注目を集め、Epic GamesのUnreal Engineといったゲームエンジンに組み込まれた。RunTimeは、例えばThe Voidが手掛けたディズニーリゾートのVR体験「Star Wars:Secrets of the Empire」(帝国の秘密)の中でも、アバターの動きの相互作用を生み出す原動力となっている。ほかにも、Capcom Linden Lab、Microsoft Studios、Nvidia、Respawn、Square Enixなどのスタジオが利用している。

RunTimeの技術は、Impulse GearsのPSVRゲーム、「Farpoint」でも利用されている

IKenemaの製品、Orionは、低コストの入力によるモーションキャプチャを可能にするもの。基本的には、頭と手の動きなど、限られた入力をモーションモデルと同期させるというハイブリッドな手法で、本物そっくりな動きを実現できる。この技術は、NASA、Tencentなどのチームによっても、視覚化のために使われていた。

Appleはこの会社の技術に何を期待しているのか?

この技術が確実に役立つと考えられる分野はいくつもあるが、中でももっとも分かりやすいのは、iOSのカメラに特殊なAR効果を組み込むものだろう。カメラが現実世界から収集する空間データと、デジタルARモデルを重ねて表示したりできる。これによって、たとえばARフィギュアのようなものに、現実の階段を上らせたり、椅子に座らせたりすることが、原理的には可能となる。このようなシナリオの場合、IKenemaでは、カメラから得られるコンピュータービジョンのセグメンテーションができないという問題が残る。つまり、テーブルの面と床、それらとソファのクッションを区別できないのだ。それでも、そうした現実空間とデジタルモデルが相互作用できるようになるのは、大きな進歩と言える。

他にはどんな用途が?

Appleにとって、もうちょっと現実的な用途として考えられるのは、この技術をVRやARのアバターの世界で利用することだろう。これまでIKenemaは、モーションキャプチャの分野で多くの業績を積み重ねてきた。それというのも、デジタルで表現された人間が、リアルタイムでデジタル環境とやり取りするためのモデルを設計するという明確な目的があったから。彼らのソリューションは、すでに仮想現実のデベロッパーに利用されてきた。それにより、VRゲーマーが、自分の体をVRの世界に送り込んだ状態を、最小の入力で視覚化できるようになった。

Facebook Horizonの脚のないアバター

通常の仮想現実のシステムでは、位置追跡機能がコントローラーとヘッドセットに内蔵されているため、ユーザーの手と頭の位置だけを認識できる。それに対してIKinemaのソリューション利用すれば、デベロッパーは、ゲーム内に入り込んだユーザーの体の他の部分にも、ずっと自然な動きをさせることが可能となる。これは、実はかなり困難な課題であり、多くのVRタイトルのアバターが、足、首、腕、肩を欠いたものとなっている理由はそこにある。そうした部分に動きがないと、全体の見栄えが著しく損なわれてしまうのだ。

Appleが、ARやVRのデバイスの開発を推し進めたり、GoogleやSamsung製デバイスとの差別化のポイントとして、iPhoneのカメラの強化を目指しているため、同社のコンピュータービジョンに対するニーズは、どんどん高度なものになっていく。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)