ザッカーバーグ氏が中国の言論統制を語る「これが私たちが望むインターネットなのか?」

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中国は社会的価値観を輸出し、政治広告は表現の自由の重要な一部分となり、危険な言論の定義は常に牽制しなければならない。Facebook(フェイスブック)CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は米国時間10月17日、ジョージタウン大学でそのように論を述べた

彼は、中国と取り引きを行っている米国の企業が、中国的価値観の影響を強く受けるようになっていることを批判した。「WhatsApp」(ワッツアップ)などの私たちのサービスは、強力な暗号化とプライバシー保護対策によって、世界中の抗議運動家や活動家に使われていますが、急速に世界に広まった中国製アプリTikTok(ティックトック)の場合、WhatsAppも使っている同じ抗議運動家の書き込みが検閲を受けています。この米国においてすらです!」とザッカーバーグ氏。「これが私たちが望むインターネットなのでしょうか?」

Facebookは中国の検閲当局との合意を得ていないため、中国での運用は禁止されている。「今の私たちならもっと自由に発言ができます。私たちが信じる価値観のために立ち上がり、世界中で言論の自由のために戦っています」。中国の方針に屈したという醜聞の渦中にあるApple(アップル)、NBA、Blizzard(ブリザード)には触れなかったが、これらを示唆していることは明らかだった。

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以下は、2019年10月17日のザッカーバーグ氏の投稿だ。

ザッカーバーグ氏は本日、ジョージタウン大学で40分間の講演を行い、その講演内容と「言論やインターネットがもたらす難題や、世界の言論の自由を脅かす大きな力にいかに対処すべきか」に関する質疑応答で自身の考え方を伝えた。彼は「対立のない言論の自由を発展させたい」と主張し、言論の自由の奪還を支持するよう人々に訴えた。「どこに線を引きますか?」。

ザッカーバーグ氏によると、現在、Facebookでは3万5000人のスタッフがセキュリティーに取り組んでおり、そのための予算は、新規上場を果たしたときの総収益、つまり2012年の50億ドル(約5420億円)を超えているという。Facebookは、客観的に見て危険なコンテンツを削除したり格付けを落としたりしている。それでも「何が危険かの定義がどうしても必要な範囲を超えること」は望まないと話す。

新しい造語を使って、ザッカーバーグ氏はこう述べた。「人々は大規模に自己表現できるパワーを持ち始めています。それは世界の新しい勢力となります。社会のさまざまな権力構造の中の“第五権力”です」(訳注:僧侶、貴族、平民という中世ヨーロッパの三大権力になぞらえ、ジャーナリズムは第四権力と呼ばれた)。

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たとえ偽情報が含まれていたとしてもFacebookで政治広告を許していることについて、ザッカーバーグ氏はこう主張した。「政治広告は言論の大切な一部分です。特にメディアの取材を受ける機会が少ない地方の候補者、前途有望な挑戦者、支援団体にとっては重要です。そうすることで、彼らの声が討論に参加できるのです」。それは事実だろうが、その同じシステムが、どちらの陣営、候補者にせよ、資金を多く出した側の主張を優位にしてしまう。

私は先日、偽情報の流布に利用されることを予防する規制が通過するまでは、Facebookは政治広告を止めるべきだと提言した。トランプ大統領は、民主党の何人ものライバル候補者たちの合計よりも多く投稿し、武器の所持を認める米国憲法修正第二条の削除を訴える彼らに関する偽情報を流しては資金を集めようとしている。

それでも、ザッカーバーグ氏は「政治広告を禁止しても、現職議員やメディアが追いかける人たちが喜ぶだけ」と言う。広告費を最も使っているのは誰か、または、もしFacebookが政治広告を禁止したとしてもフォロワーに対する言論の自由を候補者たちに与えるかについては語らなかった。基本的に彼は、言論の自由とリーチの自由、つまり金を使った広告による増幅の境界線を明らかにしていない。Instagram(インスタグラム)のCEOであるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏も同じ考えだ。広告と言論を同一視し、こうツイートしている。「人が政治家の話を聞いて意思を決めるのは無理もない」と。しかし、何度かの討論の後、モセリ氏は、政治広告の禁止を「できたらいいと、しょっちゅう考える」と認めた。しかし、何がそれに該当し、該当しないかを決めることは難しいとも話している。

現職議員に有利になるという理屈は、民主党の大統領選候補者が今年Facebookの広告に費やした金額が23名合計で960万ドル(約10億円)であるのに対して、トランプ大統領は490万ドル(約5億3000万円)投じており、3月の段階で、どの民主党候補者よりも多くの金を使っているという事実を無視している。政治広告を禁止しても、候補者が自由に主張し、人々がそれを判断することが阻止されるわけではない。むしろ、金のある候補者ほど発言力が強くなる傾向を止められる。

今年フェイスブックの広告に使われた金額、黄色は5月18日までの4週間で使われた金額、下は2020年大統領選の民主党候補

全体をとおしてザッカーバーグ氏は、近頃の米国議会の公聴会のときよりも情熱的で共感的だった。声の調子や抑揚は、バラク・オバマ大統領を思わせる。民主主義の差し迫った危機を強調するときにはトーンが上がる。しかし、講演の構成は、たとえば現役候補が一番広告費を使っているのに、なぜ政治広告が挑戦者に有利になるのかといった直接的な疑問に晒されないよう、ザッカーバーグ氏を守る形になっていた。ザッカーバーグ氏は、たしかに講演のあとに質疑応答の時間を設けていたが、その様子は彼のページでストリーム中継されることはなく、あらかじめ用意された所見が掲載されているだけだった。しかもほとんどの答が、講演内容の繰り返しだった。

だがザッカーバーグ氏は、講演全体を貫く重要なテーマを持ち帰ることになった。彼は米国企業が中国の言論統制にならい、安全と選挙を守るためとして言論の自由を取り締まる可能性があるという考え方を結びつけようとしていた。NBAやブリザードなど中国で目覚しいビジネスを展開している企業が中国の影響力を過小評価したがっているのに対して、ザッカーバーグ氏は、中国の価値観が国境を遥かに越えて触手を伸ばし、言論の首をしめようとしていると力説した。

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(翻訳:金井哲夫)