Ghostの目標は今ある自家用車に自動運転機能を後付けして2020年に公道を走ること

次の記事

TC Tokyo 2019の完全プログラムを公開、SmartHRやOYO LIFE、Revolut、Re:storeの登壇が決定

新しい自動運転車の会社が路上に出現した。だが、実は2017年から誰にも知られずに存在はしていた。急成長するこの業界のマジョリティーとは異なり、この新参企業はロボットタクシーサービスを提供するわけでも、部品メーカーや自動車メーカーに自動運転システムを販売するわけでもない。自動配送サービスを目指しているわけでもない。

Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)のKeith Rabois(キース・ラボア)氏、Khosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)のVinod Khosla(ビノッド・コースラ)氏、Sutter Hill Ventures(サター・ヒル・ベンチャーズ)のMike Speiser(マイク・スパイサー)氏から6370万ドル(約70億円)の投資を受け、11月7日にステルスモードを解除したGhost Locomotion(ゴースト・ロコモーション)は、あなたの車をターゲットにしている。

ゴーストが開発しているのは、自家用車をハイウェイで自動運転できるようにするキットだ。同社は2020年の出荷を予定している。価格は未定だが、Tesla(テスラ)の完全自動運転機能付きオートパイロットのオプション(FSD)よりも安価になるという。FSDの価格は現在7000ドル(約77万円)。

このキットは、高度な安全運転支援システムを自動車にもたらすものではない。人による運転操作をコンピューターに任せ、運転者が携帯電話を見たり、さらには居眠りもできるようにするというものだ。

このアイデアは、Comma.ai(カンマ・エーアイ)が開発中のものや、テスラが目指しているもの、またはCruise(クルーズ)の初期のビジネスモデルによく似ていると感じられるかもしれない。しかし、ゴーストのCEOで共同創設者のJohn Hayes(ジョン・ヘイズ)氏は、それとは違うと話している。

独特なアプローチ

この業界で最大のプレイヤーであるWaymo(ウェイモ)、クルーズ、Zoox(ズークス)、Argo AI(アルゴ・エーアイ)は、都市環境での自動運転という非常に難しい課題に取り組んでいると、つい最近行ったTechCrunchのインタビューでヘイズ氏は語った。

「ハイウェイでの運転課題に実際に取り組んでいる企業は、ひとつもないように見えます」とヘイズ氏。彼はゴーストの前、2009年にPure Storage(ピュア・ストレージ)という会社を興している。「その当時、これはとても簡単なことで、自動車メーカーがいつ実現してもおかしくないと言われていました。しかし、まだそうはなっていません」。

ヘイズ氏の話では、自動車メーカーは高度な運転支援システムを進歩させ続けているという。その中でもっとも発達したシステムは、主要な2つの運転操作が自動化されていることとSAE(自動車技術会)が定めた自動運転レベル2の基準を満たしている。そのいい例がテスラのオートパイロットシステムだ。これを有効にすると、ハンドル操作が自動化され、交通を意識したクルーズコントロールが実行される。つまり、周囲の車の流れに沿って速度が調整されるのだ。しかし、その他のレベル2システムと同様、運転者がかならず介在しなければならない。

ゴーストは、ハイウェイ上では運転者を運転から完全に解放したいと考えている。「私たちは、昔ながらのスタートアップの姿勢を、なんとかそこに反映したいと考えています。つまり、一般消費者に自動運転を提供できる、私たちだけで完結できるもっともシンプルな製品は何か? です」とヘイズ氏は言う。「だから、みなさんが今乗っている車を、私たちが自動運転化するのです」。

そのキットとは

ゴーストは、ソフトウェアとハードウェアの両面からその課題に取り組んでいる。

キットには、センサーやコンピューターなどのハードウェアが含まれている。これらはトランクに収められ、車のCAN(コントロールエリアネットワーク)に接続される。CANのバス型ネットワーク回線は、実質的に自動車の神経回路であり、これを通してさまざまな部品が互いに通信し合う。

キットを取り付けるには、自動車にはCANバスと電子制御式のステアリングが必要となる。カメラセンサーは車体の周囲に配置される。カメラは、リアビューモニターの背後に設置された別のカメラとともに、後部ナンバープレートの取り付け金具と一体化したものに統合される。

カメラを搭載した3つめの装置は、ドアの窓枠に取り付けられる。

基本的に、このキットは後付け製品となる。まずは最も人気の高い20の自動車ブランドに対応させ、その後、対応車種を増やしてゆく予定だ。

ゴーストは、消費者が実物を見て、そこで取り付けが行える小売りスペースの展開を計画している。しかし最終的には、GPSや衛星ラジオがそうなったように、最初から車に組み込まれるようになるとヘイズ氏は信じている。

ハードウェアは、目で見てわかりやすいゴーストの部品だが、同社の75名の従業員は、ほとんどの時間を運転アルゴリズムの開発に費やしている。そこに、ゴーストの強みがあるとヘイズ氏は話している。

ゴーストの自動ドライバーの育て方

ゴーストは、自動運転技術を開発する企業のほとんどが行っている公道での走行試験をしていない。カリフォルニア州には、車両管理局から自動運転技術の公道テストの許可(安全のためかならず人間が運転席に座ることを条件に)を取得した企業が36社ある。

ゴーストのアプローチはすべて、人間の運転者は基本的に正しいという原則に基づいている。同社は、運転経験が豊富な人の車に取り付けた装置で録画した動画データを大量に収集することから始めた。そしてゴーストは、それぞれの映像で何が起きているかを特定する複数のモデルを使い、運転者の動きを測定して、どのように運転するかといった他のデータと組み合わせた。

ハイウェイでの車線に沿った走行、ブレーキング、車線変更といった通常の運転のモデルにデータをマッチングさせるのは簡単だった。しかし、それではハイウェイの自動運転の課題は解決できない。なぜなら、急ハンドルや、そこからの立て直しといった非常事態に対応できるドライバーをいかに構築するかが重要なポイントだからだ。

ゴーストのシステムは、収集した大量のデータの中から、注目すべきシナリオを機械学習によって抽出し、それに基づき学習モデルを構築している。

ゴーストのキットは、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)、通勤で長距離を運転する人たちの車にすでに取り付けられている。ゴーストでは数十名の運転者を募集して、年末までに数百台の車にキットを取り付けたいとしている。来年までには、数千台の車にキットが取り付けられるとヘイズ氏は話していた。すべてはデータ収集が目的だ。

共同創設者でCTOのVolkmar Uhlig(ボルクマー・ウリグ)氏を含む同社の幹部陣とその他の従業員の経歴からは、ソフトウェア開発と、それをハードウェアに組み込む際のアプローチ方法の秘密が垣間見える。

従業員たちはデータ科学者とエンジニアだ。ロボティクス畑ではない。LinkedInで履歴を見てみると、他の自動運転車関連企業の出身者は一人もなく、有能な人間を競合他社から引き抜くのが当たり前の今の時代に、とても珍しいことだ。

たとえばウリグ氏は、IBM Watson(ワトソン)研究所で経歴をスタートさせ、Adello(アデロ)を共同創設し、プログラマチック・メディア・トレーディング・プラットフォームのアーキテクトとして同社を支えた。それ以前に、Teza Technologies(テザ・テクノロジーズ)で高頻度取引のためのプラットフォームを作っている。コンピューター科学の博士課程にいた間にも、彼はL4Ka::Pistachioマイクロカーネルの構築に参加していた。これはAppleとAndroidの30億台以上のモバイルデバイスに使われている。

もしゴーストが、すべてのアプローチに焼き付けられているとヘイズ氏が言うこのアプローチの有効性を示すことができれば、個人所有の自動運転者が来年にはハイウェイを走ることになる。米幹線道路交通安全局の介入もあり得るが、テスラと同様、ゴーストのアプローチは規制から外れたスイートスポットを叩くだろう。「そこは政府がまだ規制をかけようとしていない場所だ」とヘイズ氏は語る。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)