微小重力環境でバイオテックの基盤を作る新種の宇宙企業Luna

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トロントに拠点を置くスタートアップであるLuna Design and Innovation(ルナ・デザイン・アンド・イノベーション)は、経済状況が変化し続けるこの巨大産業に次々に生まれては優位に立とうとする宇宙スタートアップを代表する企業と言える。CEOを務めるAndrea Yip(アンドリア・イエップ)氏が創設したLunaは、商用化された宇宙での新しい機会(それは何かまだ誰にもわからないが)から多くを得る立場にあるバイオテクノロジー企業の挑戦に火をつけようと目論んでいる。

「私はこれまで、医療業界の公開企業と非公開企業で、製品やサービスのデザインと改革に専念してきました」とイエップ氏はインタビューの中で私に話してくれた。「私は数年間、製薬会社で働いていましたが、製薬と宇宙とデザインが交わるところで仕事ができる道を本気で探そうと、2017年末に製薬業界を離れました。人類の医療の未来は宇宙にあると信じたからです」。

イエップ氏はその信念を現実のものにしようと、今年の初めにLunaを設立した。宇宙にしかない研究環境を利用可能にして、バイオテクノロジー分野にチャンスを与えることが狙いだ。

「私たちは、宇宙を研究プラットフォームだととらえ、その宇宙プラットフォームが、地球での医療上の問題の解決に寄与すると信じています」とイエップ氏は説明する。「なので私にとって、バイオテクノロジー分野と製薬分野に宇宙への道を拓き、そこを研究開発と画期的な発見のための研究プラットフォームとして使えるようにすることが、きわめて重要なのです」。

国際宇宙ステーションでは、製薬とバイオテクノロジーの実験を数多く受け入れてきた

NASAの宇宙活動は、乳房生検に使われるデジタルイメージング技術、子宮内の胎児の成長をモニターするトランスミッター、脳腫瘍手術のためのLEDなど、数多くのものを生み出すきっかけを与えた。また宇宙での医薬品の研究開発は、ずっと以前からMerck(メルク)やP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)といった大手製薬会社が手を染めており、国際宇宙ステーション(ISS)で実験が行われてきた。今ではSpaceFarma(スペースファーマ)などの企業がミニ研究室をISSに設置して、クライアントの実験を代行している。しかし、利用されていない機会がまだまだ多い業界であり、イエップ氏によれば、可能性が山ほどあるという。

「残念ながらそこは、今のところ、ほとんど利用されていない研究プラットフォームだと思っています」と彼女は言う。「一部の物理学的現象と生命科学的現象は、宇宙、つまり私たちが微小重力ベースの環境呼ぶ場所では、異なる振る舞いを見せます」。

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「例えばがん細胞は、微小重力下に短期間いた場合と長期間いた場合とでは、転移の仕方が変わることがわかっています。そのため、そうした種類の見識を得られるだけでも、またなぜに挑戦して理解するだけでも、たくさんの新発見が解き放たれ、がんの実際のメカニズムを理解できるようになります」。

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そしてそうした見識を得ることが、新薬のよりよいデザイン、地上でのよりよい治療機会に、実際につながってゆくのです」。

Blue Originのロケット「New Shepard」 写真提供:Blue Origin

微小重力環境でのバイオテクノロジーの研究は、一部ではすでに行われているものの、「このイノベーションにおいては、私たちが最初の結論です」とイエップ氏。さらに、今後10年程度の間に旧態依然とした既存の大手製薬会社を破壊するのは、宇宙での研究開発にいち早く積極的に投資を行なった企業だと考えを述べた。

Lunaの役割は、宇宙での研究のための効果的な投資となる、最良のアプローチとバイオテクノロジー企業を引き合わせることだ。その目的のために早期に実現した成果として、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の商用宇宙ロケットを打ち上げる企業、Blue Origin(ブルー・オリジン)との間でチャンネルパートナーという役割を獲得したことがある。この契約は、LunaがBlue OriginのNew Shepard(ニュー・シェパード)ロケットのセールスパートナーになることを意味し、Amazonの創設者であるベゾス氏のこのロケット企業のために、低軌道での宇宙実験をどうしたら実施できるか、またなぜそれが必要なのかを潜在顧客と考えてゆくことになる。

それは短期的な展望であり、この地球上にもっとも強いインパクトを与える方法を模索するためのものだ。しかし、もっと先の未来が握っているバイオテクノロジーの可能性は、現在の宇宙産業の針路を考えることで開花し始める。それは、NASAの次なるステップや、スペースXなどの民間企業による他の惑星の有人探査などだ。

「私たちは、2024年の月再着陸についても話し合っています」とイエップ氏は、NASAのアルテミス計画を示唆しつつ語った。「今後数年で火星に行くことを、私たちは考えています。そこには、私たちのために発見しなければならないものが大量にあります。そしてそれは、巨大なチャンスでもあります。他の惑星で何が発見できるのか、本当にそこへ人を送り込むのかは、まだ誰にもわかりません。なので私たちは、そのための準備と、必要な能力の構築に着手するのです」

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(翻訳:金井哲夫)