アドフラウド(用語)
Phybbit
Spider AF(サービス)

“広告詐欺”なくし業界の健全化へ、アドフラウド対策ツールのPhybbitが3.2億円を調達

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アドフラウド対策ツール「SpiderAF」を提供するPhybbitは11月21日、三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタル、アコード・ベンチャーズ、Darwin Venturesの4社と個人投資家で元マイクロソフトの中島聡氏を引受先とした第三者割当増資により総額3.2億円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては昨年4月に6500万を調達して以来となるシリーズAラウンドでの資金調達となり、さらなる事業拡大に向けた人材採用と新規顧客獲得のためのマーケティング強化を進めていくという。

Phybbitが開発するSpiderAFは、不正な手法によって広告のインプレッションやクリック、コンバージョンを水増しして広告報酬を詐取するアドフラウド(広告詐欺)の対策ツールだ。自力でやるには膨大なリソースと知見が必要とされる業務を自動化することで、誰でも簡単にアドフラウド対策を実施できることを目指している。

一口にアドフラウドと言っても、複数の端末を用意した上でボットを使って大量のクリックやCVを人為的に作ったり、オーガニックユーザーのクリックやCVの成果を奪ったり(オーガニック喰い)などその手法は幅広い。

近年は手口の高度化も進み、インターネット広告市場の拡大と共に被害もさらに深刻化している状況。2022年までにグローバルでのアドフラウドの被害額が4.4兆円になると予測するような調査レポートもある。

広告を配信する事業者にとっては本来もっと有効に使えたはずの広告費が知らないうちに無駄になってしまっている(だまし取られている)ので早急に解決したい課題ではあるが、そのためにはアドフラウドへの深い理解や大量のデータを解析するスキルとリソースが必要になり自力でやるのは大変だ。

前回紹介した通り、SpiderAF自体もそんな課題に直面するアドテク事業者の声から生まれた。かつてPhybbitがデータ解析や開発の受託事業をやっていた際に、複数のアドテク企業から「月々数10~100TBを超える広告データのクレンジングや分析に膨大な時間がかかる」「不正アカウントを排除できても、別アカウントから再度攻撃されるのでいたちごっこになる」という悩みを聞いたのが開発のきっかけだ。

SpiderAFでは、広告ログを解析してその中から異常なものを抽出し、広告出稿先のサイトを目視でチェックするという“従来担当者が属人的に行なっていた一連の作業”を自動化。アドフラウド対策の負担を減らすとともに、検知の精度を上げる。

利用企業は普段使っているアプリ計測ツールと連携させておけばOK(アプリでなくweb広告主の場合はサイトにタグを設置する)。後はSpiderAFに搭載されているAIが自動で広告ログの収集、クレンジング、分析を行った上でメディアごとにアドフラウドの疑わしさをスコアリングして見える化する。

ダッシュボード上では総合的なフラウドスコアだけでなく、デバイスやOS、言語設定など細かいカテゴリーごとのスコアも算出。そのスコアになった判断基準もチェックすることが可能だ。

Phybbit代表取締役の大月聡子氏によると、たとえばアドフラウド判定の1つに類似性のチェックがあり、似た振る舞いのサイトを全て抽出するといったことも自動で対応できる。SpiderAFではルールベースで抽出するスコアだけでなく、機械学習によるMLスコアも開発中。これについてはまだ精度が十分ではないので現段階では一部のユーザーのみに試験的に提供している段階とのことだった。

この領域ではIntegral Ad ScienceやMomentumなど国内外で複数の事業者がサービスを展開しているが、有力なプレイヤーはナショナルクライアントなど広告予算の大きな企業にフォーカスしているものが多いというのが大月氏の見解。もう少しライトに活用できるアドフラウド対策ツールのポジションは空いているという。

SpiderAFの場合はリアルタイムのデータ解析に対応していないため事後対策の色が強くなるものの、その分金額を抑えるとともに高い精度も期待できる。

たとえば国内向けのサービスなのに言語設定が外国語になっていたり、そもそも海外でしか販売されていないデバイスからクリックやインストールが発生している場合、単発ではありえても頻繁に行われていればアドフラウドの可能性が高い。

これらはリアルタイムに逐一分析するのではなく、ある程度まとまった情報を事後的に分析することで検知しやすくなる。上述した類似性の分析も含めて、検知率の高さと透明性の高さ(判断基準の見える化による)がSpiderAFの特徴だ。

また大きなアップデートとして昨年12月から国内の大手ネットワーク各社が自社で収集したアドフラウドリストを共有する「SHARED BLACKLIST」をスタート。参画する企業がそれぞれのブラックリストをシェアすることで、1社だけでは把握しきれないアドフラウドにも事前に対策できる仕組みを作った。

現在は上述した機能などをミニマム月額9万円からのSaaSプロダクトとして、アドネットワーク事業者や広告主となる事業者など約50社へ提供。MRR(月間経常収益)も1年半前の前回調達時に比べて10倍近くになっているそうだ。

公式サイトで詳しく紹介されているが、一例としては「広告出稿費の約55%となるおよそ600万円分をアドフラウドとして一ヶ月で検知した事例」や「半年間で約19%となるおよそ1100万円をアドフラウドとして検知した事例」などがあるそう。

これらはそれぞれ請求から除外されているので実際にその金額分の被害にあってるわけではないが「それらのお金をもっと効果のいい広告にふることができて、当初の期待以上のユーザー獲得ができた」という点に価値を感じてもらえているという。

Phybbitでは今回調達した資金も活用して、引き続きプロダクトのアップデートを実施するとともにセールスやマーケティングにも投資を行い事業を拡大していく方針。まずは広告業界の健全化を目指してアドフラウド領域に注力するが、ゆくゆくはサイバーセキュリティ分野のスタートアップとしてラインナップの拡充なども計画しているようだ。

なおPhybbitは今回の発表に合わせてシリーズAの調達をする際に使っていたという事業計画書の一部を公開している。アドフラウドの現状やマーケットの課題についてだけでなく、KPIなどについても記載されていて興味深いので、合わせて紹介しておきたい。