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仮想通貨交換業から建設業へ転身、ユニオンテックCFO木村氏の挑戦

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ユニオンテックは12月1日、CFO(Chief Financial Officer)として、元コインチェックCFOだった木村幸夫氏の就任を発表した。同社は経営陣に新たな人材を加えることで組織体制の強化を図り、ネット関連事業をいま以上に加速展開させる狙いだ。

写真に向かって左から、ユニオンテックの新CFOに就任した木村幸夫氏、代表取締役社長の韓 英志氏

ユニオンテックは、現会長の大川祐介氏が2000年に内装仕上げを主力事業として立ち上げた建設会社だ。2016年にはネット事業に参入し、建設業界の受発注に特化したマッチングプラットフォーム「SUSTINA」(サスティナ)を提供。現在の会員企業数は1万1000社超、登録職人は11万人超と国内有数のサービスに成長している。

2018年9月には元リクルートの韓 英志氏が社長に就任。会長の大川氏と二人三脚で建設業界のディスラプトを進めてきた。18歳のときにクロス職人として建設業界に入った大川氏は、2018年10月に日本SHOKUNIN総研(日本職人総研)を設立し、建設業界の環境改善や建設職人の意識改革に取り組んでいる。

一方の韓氏は、SUSTINAをはじめとするネット事業に注力。職人仲間からの紹介・斡旋が中心だった仕事の受発注を、適正な評価システムなどを活用して、職人企業の新規顧客開拓を支援している。同社は建設会社としては珍しく、著名なネット企業から転職してきたエンジニアを中心とした、20人超の抱えるプロダクトチームを擁し、オフショアではなく自社でサービスを開発・運営しているのも特徴だ。2019年1月には、DCMベンチャーズを引き受け先とする第三者割当増資で9.7億円の資金調達も実施した。

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直近の同社の活動としては、10月に発生した台風19号の被災地域で、SUSTINAのネットワークを活用して、首都圏だけでなく全国から職人を募って、ブルーシートの張り替え作業などを支援。最初に支援協力した千葉県富津市では、高齢者や損壊の激しい家屋を中心に、同社が職人の手配から職人の滞在費、資材費、ブルーシートの張り替えなどの施工費まですべてを負担して、ボランティアとして活動。その後、千葉県庁からの依頼で県下の被災地全域での支援に切り替わり、千葉県に寄せられた約700件の案件のうち、200件超の案件をユニオンテックが請け負ったという。なお、富津市以外の案件については、職人の派遣をユニオンテックが担当し、滞在費(宿泊日)や交通費は千葉県が負担した(資材費や施工費は、被災者負担)。

韓氏によると「被災地に個人でブルーシートを運んでいたときに富津市役所の関係者の方との出会いがあり、すぐに支援することを決めた」とのこと。こうして富津市でのボランティアが始まった。その後、千葉県からの要請を受け、被災地支援専用のコールセンターをユニオンテック社内を設け、多いときは1日200件を超える連絡を受けたという。

なお、被災地支援中に自衛隊による復旧作業も並行して実施されたが、自治体でも正確な情報を把握することは難しいほど混乱した状況だったそうだ。「ブルーシートをきちんと張り付けられる高所作業に長けた職人は現地では圧倒的に足りず、自衛隊の支援を除くと数週間から数カ月待ちだった」と同氏。損壊した瓦の復元工事に至っては、被災者にとっては気の遠くなる1年半待ちという状態だったそうだ。

自治体すら把握できない混乱状態だったので、復興支援に見せかけた詐欺や工事代金の高額請求などのトラブルが発生する懸念があった。そこで同社は、被災地への職人の派遣にSUSTINAのデータベースと建設会社として20年間積み上げてきた実績をフル活用。同社と実際に取引があり信頼のおける1500社超の建設会社に被災地支援を打診したところ、職人がすぐに呼応。北は北海道から、西は兵庫県から職人が千葉県に駆けつけたそうだ。

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金融業界と建設業界は実はよく似ている

このユニオンテックに、元コインチェックの木村氏が新たにCFOとして加わることになる。同氏は、コインチェックが旧社名のレジュプレスのときの2016年に、CFOとして参画した人物。それ以前は、2000年に監査法人トーマツに入所し、2004年公認会計士登録。2006年からはコンサルティング会社のグローウィン・パートナーズで、シニアコンサルタントとして数十件のM&A案件を担当し、財務デューデリジェンス、株価算定業務に従事したほか、IPO支援、業務改善などにも携わった。2010年には、保険持株会社であるアニコムホールディングスに入社して、財務部長、給付管理部長、経営企画部長を歴任。東証一部への市場変更のプロジェクト責任者などを務め、子会社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるアニコム キャピタルの社長も兼務していた。

「コインチェックは入社してすぐに会社の規模が非常に大きくなり、IPOに向けた準備もしていたが、2018年1月に仮想通貨流出という大事件を起こしてしまった。事件後は、もう一度コインチェックを復活させ、会社に残った社員がきちんと働ける環境を整えることを目指して、被害者への補償やセキュリティの強化などに務めた」と同氏。事件から3カ月後の同年4月にマネックスグループ入りして事業を続行してきた同社は、2019年1月にそれまでの「みなし業者」から正式な仮想通貨交換業者として金融庁の登録が認められるまでに回復した。

木村氏によると「ユニオンテックへの移籍は金融庁の登録が契機ではないが、コインチェックのマネックスグループ入り後は、株主構成や経営体制も変わってきたことで経営基盤が安定したことから、次のチャレンジに向けた活動の機会を模索していた」という。ユニオンテックではCFOという役職に就任するが、当面は同社の組織運営を含めたCOO的な役回りも担当し、社長の韓氏とともに建設職人マッチングサービスのSUSTINAを中心に、ネット関連事業の拡大を進めていく。

「転職時に特に業界は決めていなかったが、建設業界の現状を知りユニオンテックでぜひ仕事をしたいと感じた。建設業界も市場やプレイヤーが巨大かつ長い歴史があるゆえに、まだまだITの進展によるビジネスチャンスの余地が大きいと感じている。まずは社内組織の改善を進めて、今後の攻めにつなげていきたい」と木村氏は力強く語ってくれた。

需要逼迫なのに人手不足に陥る建設業界をテクノロジーで解決

建設業界は、2030年には需給のバランスが大きく崩れることが指摘されている。大都市部では今後、築後10年や20年を経過したタワーマンションや超高層ビルなどの大規模修繕の需要が激増するほか、来年の東京五輪や2025年の大阪万博などで新規着工も増える。一方で、少子高齢化や職場環境の問題で職人の人手不足は深刻だ。そのため、建設投資額が増えるが、技能労働者、すなわち建設職人が減っていく。その結果、建設コストの高騰はもちろん、職人が集まらずに建設計画の見直しを余儀なくされるケースも多数出てくると考えられる。

建設業界も、ドローンやGPSを使った測量をはじめとして今後は機械化やロボット化が進むと考えられるが、それはミリ単位での調整が不要な土木工事などに限られる。図面どおりには建てられず日々の修正が必要になる建築物については、職人の手がどうしても必要になるのだ。

しかし、今後訪れる職人の人手不足はミスマッチを減らすことである程度軽減できる。そして労働環境が改善されると、職人を目指す人材も増えるはずだ。ユニオンテックはこういった問題を解決して好循環を生み出すため、今後ネット事業を主力事業に育てる戦略を掲げている。「現在請け負っている仕事で、ユニオンテックが請けるより、SUSTINAの登録会社が担当したほうが適切と判断した仕事はどんどん譲っていきます」と韓氏。建設会社は一人親方のケースも多く、小規模な工事であれば工期や工事代金などをユニオンテックよりも柔軟に対応できるケースもある。ユニオンテックがプラットフォーム事業に注力することによって、小規模な建設会社の新規顧客開拓につなげるという狙いもあるようだ。

そして同社がいま取り組んでいるのは、前述したユニオンテックとの取引実績がある1500社超のデータベースと同じものを、SUSTNAの法人会員1万社超に広げていくこと。所在地や従業員数はもちろん、人工単価、取得資格、夜間工事可能かどうか、得意とする工事、取引先、保険といった信用情報を蓄積することで、SUSTINAを介した取引量の増加を目指していく。

従来の職人仲間からの仕事の斡旋だけでは非効率だった受発注をSaaSで提供することで建設職人自身の働き方改革も目指す同社。韓氏は「今後は建設職人の空き時間までリアルタイムで可視化できるようにして職人の流動性を高め、受発注のミスマッチをなくしていく」と語る。