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イノベーションのジレンマ
クレイトン・クリステンセン

「イノベーションのジレンマ」の著者、クレイトン・クリステンセン氏が逝去

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世界的ベストセラーとなったビジネス書、「イノベーションのジレンマ-―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」の著者でハーバード・ビジネス・スクールの教授を長く務めてきたクレイトン・クリステンセン氏が昨夜ボストンの病院で亡くなった。67歳だった。

Deseret Newsが今朝報じたところによると、死因は白血病に起因する複合的症状だったという。クリステンセン氏は以前から健康上の問題を抱えていた。30歳で1型糖尿病と診断され、58歳で心臓発作を起こし、ガンも発見されていた。2011年のフォーブスのインタビューでクリステンセン氏は「病気は一時的な障害ではあるが、(リハビりの一環として)現在受けている言語療法は新しいチャンスでもある」とオプティミズムを強調していた。

実際、クリステンセン氏は生涯にわたって自他のために新しい可能性を切り開いてきた。ビジネスの世界でクリステンセン氏が注目されたきっかけはインテル中興の祖とも言われる伝説的経営者、アンディー・グローブ氏が同社にアドバイザーとして招いたことだった。このときグローブ氏は「『イノベーションのジレンマ』は自分がこの10年で読んだベストのビジネス書だった」と語った。グローブ氏自身が「ハイアウトプット マネジメント」を始め優れたビジネス書を多数書いていることを考えるとこれはたいへんな評価だ。

2012年にNew Yorkerに発表された紹介によれば、クリステンセン氏はユタ州ソルトレイクシティの貧しい地区のモルモン教徒の家に生まれた。 2メートルを超える長身を小さな1986年製シボレー・ノバに押し込んで町を移動していたという。

クリステンセン氏は優秀な学生であるだけでなく人望もあり、高校では生徒会長に選出された。ハーバードかイェールに進学したかったが、(モルモン教の)母はソルトレイクシティのブリガムヤング大学への進学を望んだ。

ブリガムヤング大学では経済学を学ぶかたわら2年間休学してフルタイムでモルモン教の宣教師として働いた後、ローズ・スカラーとしてオックスフォード大学に留学し、さらにハーバードビジネススクールで学び、MBAを得た。卒業後はボストン・コンサルティングに就職、数年後にハーバードに戻ってPhD(博士号)を取得して教職に就いた。

クリステンセン氏は生涯で10冊の本を書いたが、なんといっても世界にあまねく知られているのは「イノベーションのジレンマ」だろう。後から考えるとこの本は書かれたタイミングも完璧だった。人々は高機能だが使い方が複雑な高価なプロダクトを捨てて、使い方がはるかに簡単で、多くの場合はるかに安い新しいプロダクトに殺到するようになったのかを解き明かす理論だった。当時、その実例が日々現れていた。ゼロックス、U.Sスチール、DECなどの巨大企業が一夜にして衰退し、アマゾン、グーグル、アップルがビジネスの覇権を握る時代に移った。

もっともNew Yorkerの記事によれば、 クリステンセン氏もときには間違いを犯した。その最大のものは「iPhoneは複雑すぎるので普及しないだろう」という予言だった。

そういう失敗はあっても、アップルの共同創業者でiPhoneを生んだスティーブ・ジョブズ氏はクリステンセン氏のファンだった。 2011年10月、ジョブズ氏の死後数カ月に刊行されたウォルター・アイザックソンの伝記によれば、「イノベーターのジレンマ」は「(ジョブズに)極めて深い影響を与えた」という。

2016年にStartup Grindカンファレンスにおけるクリステンセン氏と著名な起業家、ベンチャー投資家のマーク・アンドリーセン氏の対話はクリステンセン氏のビジョンを理解する上で非常に興味あるものだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook