Facebookはディープフェイクのファクトチェックなどでロイターに資金を提供

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通信社のロイターでは、目撃者からの写真や動画は、現在すでに入念なメディア検証プロセスを経たものを掲載するようになっている。今度はその専門技術を、Facebookの偽情報対策に役立てる。米国時間2月12日、ロイターは新しくReuters Fact Check(ロイター・ファクト・チェック)事業とブログをスタートさせた。この事業は、Facebookに蔓延するウソを暴くためのサードパーティーパートナーになると発表されている。

ロイターから派遣される4人のチームが、Facebookが提示した、またはロイターの編集チーム全体が怪しいと判断した投稿動画や写真、さらに英語とスペイン語のニュースの見出しと記事を審査する。そこで発見されたものは、ロイター・ファクト・チェックのブログで、中心的主張、なぜそれがフェイクなのか、部分的にウソなのか、本当なのかが一覧表示される。Facebookはその結論をもとに偽情報の投稿を嘘とわかるようにラベルを付け、ニュースフィードのアルゴリズムで評価を落とし、拡散を抑制する。

「金銭的な合意内容についてはお話しできませんが、彼らはこのサービスに資金を提供しているのは確かです」と、ロイターのグローバル・パートナーシップ担当ディレクターであるJessica April(ジェシカ・エイプリル)氏はFacebookとの契約について私に話した。ロイターは、アメリカのファクトチェッキングパートナーズの名簿に名を連ねている。これには、AP通信、 PolitiFact、Factcheck.org、その他4つの団体が加盟している。Facebookは60を超える国々でファクトチェックを実施しているが、フランス通信社の地方支社など、1つの企業とだけ提携していることが多い。

ロイターは、ワシントンD.C.に2人、メキシコシティーに2人のファクトチェック担当者を配置する予定だ。参考までに言うなら、メディア複合企業トムソン・ロイターには2万5000人以上の従業員がいる(ロイターの社員が3000人で、そのうち2500人が記者)。ロイターのUGC(ユーザー生成コンテンツ)情報収集部門のグローバル責任者であるHazel Baker(ヘイゼル・ベイカー)氏は、ファクトチェックチームの人員は、Facebookとの提携や2020年の大統領選挙からその先を見越して、増える可能性があると話している。ファクトチェック担当者は、12人態勢のメディア検証チームから独立して作業を行う。ただし、メディア検証チームが得た見識は共有される。

ロイター・ファクト・チェックは、さまざまな偽情報形式にわたって検証を行う。「私たちは段階を設けています。一番下の段階は、操作はされていないが内容が失われているコンテンツ、つまり再利用された古い動画です」とベイカー氏。偽情報特定講座の教材を共著した彼女は、そのレッスンを引き合いに出して話してくれた。次の段階は、遅くしたり、早くしたり、継ぎ接ぎしたり、フィルターをかけるといった簡単な編集を加えた写真と動画だ。次に、やらせのメディアがある。特定の政治家のふりをして録音された音声クリップなど、演じられたり捏造されたりしたものだ。次は、コンピューターで作成したでっち上げ画像や、実際の動画に嘘のものを入れ込むなどしたものだ。「そして最後に、合成またはディープフェイク動画があります」とベイカー氏は、もっとも手の込んだものとして示した。

ベイカー氏は、デマや偽情報をファクトチェックに送るのが遅すぎるというFacebookへの批判を認識している。ひとたび嘘と判定されたコンテンツの評価を下げることで、拡散を80パーセント減らせるとFacebookは主張するが、ファクトチェック担当者に疑わしいコンテンツを送る時点で、すでに膨大な数の怪しい投稿が審査待ちの状態にあり、どれだけの時間がかかるかは考慮されていない。「ロイターは、スピードの重要性を認識しているという点で優れています」とベイカー氏は強調する。Facebookが提出したものばかりでなく、ロイター全体のファクトチェックの経験を活かして自身で選択したコンテンツの審査も行うのは、そのためでもある。

残念ながら彼らが対応しない問題として、たとえそれが扇動的、中傷的な内容で選挙戦への寄付を募るものであったとしても、Facebookが政治広告のファクトチェックを行わないという方針への多方面からの批判がある。「Facebookのポリシーには私たちはコメントしません。完全に彼らの問題だからです」とベイカー氏はTechCrunchに話した。我々は、政治広告の禁止またはファクトチェックの実施、少なくとも大統領候補によるマイクロターゲティングの規制、誤解を招く余地のない規定のフォーマットを使用した場合のみ選挙広告を許可することなどについてFacebookに問い合わせている
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偽情報の問題は、2020年アメリカ大統領選挙の予備選挙に入ると増大した。単なる金銭的な動機よりもむしろ、個人のネット荒らしから怪しい選挙活動員、外国の諜報部員に至るまで、民主主義を貶めたいあらゆる人たちの政治的誘因がそこにはある。できるなら、ロイターの経験と合法性を備えた組織が、4人ではなくもっと多くの人員を配置できるよう予算を投入して数千万人のFacebookユーザーを守って欲しい。

不幸なことに、Facebookは、長年にわたる怠慢な安全対策の埋め合わせに利益をつぎ込んでいる。コンテンツのモデレーター、セキュリティー技術者、ポリシーの改善のために、総収入の伸びは2018年の末に前値比で61パーセントだったものが、前四半期にはわずか7パーセントに落ち込んでしまった。改善への努力が数字に表れている。だが、依然として問題は解決されていない。

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Facebookは、ユーザー数、収入、利益の急増により、何年にもわたり絶好調の収支報告を行ってきた。しかし、マージンが驚異的に跳ね上がったのはソフトウェアの力によるものだと思われていたものが、じつは安全対策への出費を怠っていたためだと判明した。ユーザーの保護にかかる費用に突然目覚めたのだが、それはAirbnbなどの他のハイテク企業にも打撃を与えた。2018年末には2億ドル(約220億円)の年間利益があったAirbnbだが、窃盗、破壊行為、差別に対処した1年後には、3億3200万ドル(約365億円)の損失に転落したとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。

ロイターの支援に資金を提供することは、Facebookにとって正しい方向への新しい一歩となる。ファクトチェックに着手するようになってから2年。残念ながら、あまりにも遅いスタートとなった。

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(翻訳:金井哲夫)