テクノロジーを正しく機能させるにはユーザーの理解が必要

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先週、民主党のアイオワ党員集会で起こったことは、公共部門の仕事にテクノロジーを使う場合、正しく機能させようとしても必ずしもうまくいかないことがあるという教科書的な例だ。

ここからアイオワ州での教訓として、政府関連の手続きにテクノロジーを使うべきではないと結論付けることもできる。だがこれは間違った結論であって、起こったことと起こらなかったことを混同している。テクノロジーは失敗に終わった手続き変更を修復するものではない。重要なのはそれが何に役立つのかを理解することだ。

公共分野の問題解決にテクノロジーを正しく活用したらどうなるだろうか。公益に資するテクノロジーを効果的に構築するための3つの基本原則がある。実際の問題を解決すること、ユーザーの生の姿を念頭に置いて設計すること、小さく始める(テスト、改善、テスト)ことだ。

アプリを開発したり、新しいテクノロジーを政治的手続きの中に投入する前に、次のように問う価値はある。アプリで何が達成したいのか。アプリが既存の手続きを改善する役に立つのか。

実際の問題解決にアプリやテクノロジーを正しく適用する第一歩は、それを使う人間を理解することだ。彼らが実際に必要としているのは何か。アイオワ州のケースでは、地元のベテランの選挙主催者に投票結果集計で何が役立つかを聞いておく必要があった。また、地区のリーダーや党員集会の参加者と直接話をしたり、不成功に終わった候補者の支持者に対し、学校の体育館の別の隅に移動するよう隣の人が説得するという独特のプロセスを観察しておく必要もあった。ウェブアプリの構想について質問するだけでなく、実際の環境とユーザーでアプリをテストし、その動作を確認して改善することも重要だ。

この手の当日一発勝負のアプリを開発する際には、操作手順や使いやすさを現実世界にかなり近い環境でテストする必要がある。アプリ開発担当企業のShadow(シャドー)はユーザーを用いた「軽量級の」テストを実施したが、アプリ設計時に想定した利用者からフィードバックを得たり利用者向けに微調整したりする、いわば助走期間がなかった。アプリが正しく機能しても、誰も使わなかったりダウンロードできなかったりすれば意味がない。

これがどのように機能するか参考になるモデルの1つとして、初めて母親になる低所得者を支援する社会福祉非営利団体であるNurse Family Partnership(ナースファミリーパートナーシップ)がある。

同団体は、メールやテキストメッセージで母親や看護師からフィードバックを受け取る仕組みを備えた。フルタイムで働く担当者が「直接的、間接的な顧客のみならず内部関係者の意見にも耳を傾けた上で学習し、極めて良質の体験を提供するために何ができるか考え、団体の計画を拡大するビジョンを支えて」る体制も整えた。

直接会って母親を支援するプログラムのために同団体は、ソーシャルイノベーションラボであるHopelab(ホープラボ)と、同ラボが提携する行動科学に基づくソフトウェアを開発するAyogo(アヤゴ)とアプリを共同で設計した。「Goal Mama」は看護師と母親の関係をベースにしたアプリだ。調査の結果、プログラムを利用する大多数の母親がスマートフォンを広範囲に使用していることが判明したため、そうしたクライアント像を念頭に置いて開発された。テクノロジーとデータを使用して従業員とクライアントのニーズに対応するこのアプローチにより、633の郡と41の州で30万9787人の母親にサービスを提供している。

もう1つの例は、80の都市と郡でホームレスをゼロにするという野心的な目標を掲げるBuilt for Zero(ビルドフォーゼロ)の取り組みだ。コミュニティの主催者は、住む場所を持たない人が個人的に直面している問題から始める。彼らは、人間とそのニーズを理解しなければ、たとえ介入してもその人に住む家を提供する試みは成功しないことを知っている。彼らは、人間中心の方法論とスマートデータサイエンスを組み合わせて、継続的に自らの進め方を評価・改善している。Built for ZeroはTableau財団と協力して、新しい基準でデータを収集し、ホームレスゼロの目標に向けて進捗を管理し、コミュニティを構築・育成している。

優れた技術は常に小さく始め、実際のユーザーを使ってテスト、学習、改善を重ねる。政党、政府、非営利団体は、The Lean StartupでEric Reis(エリック・ライス)氏が提唱したテックスタートアップも使う学習方法を用いて拡大すべきだ。小規模なテストから始めて迅速に学習することにより、公益に資するテクノロジーには民主主義を改善する重要な役割があるということがわかってくる。実際に多くの人の人生がかかっているのだ。公平性、正義、正当性、誠実性を念頭に置きながら、小規模から始めることで、重要な変更を加えたりねじれを解決したりするために必要な助走期間を確保することができる。

Alia(アリア)の仕事を例にとってみたい。Aliaは全米家事労働者同盟(NDWA)が立ち上げたハウスクリーナー向けの初の福利厚生ポータルだ。家事労働者は通常、会社の従業員が享受できるような福利厚生がないため、病気で仕事を休んだり医師にかかったりするとその分賃金を失わざるを得ない。

使いやすいインターフェイスのおかげで、ハウスクリーナーの雇い主は直接掛け金を拠出でき、労働者側は有給休暇、傷害保険、生命保険を受け取ることができる。Aliaのエンジニアはハウスクリーナーのネットワークに入り込み、そこでユーザー視点の深い洞察を得ることができた。拡大するギグエコノミーにおいてAliaモデルは、地方、州、連邦レベルのさまざまな働き手にとって良い先例になるかもしれない。オバマ陣営の主催者らは2008年、ウェブサイトでの呼びかけのフレーズに使用する単語と色をA/Bテストしただけで、ボランティア活動を劇的に(最大18%)増加させることができた。

ユーザー向け(だけではないが)のデザインに力を入れた公益に資するテクノロジーが数多くある。例えば、市民と政府の間で容易でシームレスなやり取りを可能にするCenter for Civic Design(シビックデザインセンター)や、「ユーザーに寄り添うデザイン」を第一の原則としているThe Principles for Digital Development(デジタル開発の原則)などの市民社会での仕事だ。英国のGovernment Digital Service(政府デジタルサービス)から、オバマ政権で始まったUnited States Digital Service(米国デジタルサービス)など、政府内部で行われている仕事もある。

最後に、テクノロジーが使用される環境を深く理解することも役に立つ。ツールのユーザーが実際に体験するのはどんなことか。デザイナーは党員集会に足を運んで、ジム、カフェ、VFW(対外戦争退役軍人会)のホールで、参加者の身体や心の動きをしっかり観察したか。

アイオワ州のケースでは、党員集会の原則、規則、文化を理解する必要があった。党員集会は一種独特の状況だからだ。

言うまでもなく、今年のアイオワ州党員集会では透明性を高めるためにいくつかの手続きを変更したが、それは複雑さを増すことにもなった。テクノロジーによるソリューションを展開する前に、そうした背景を考慮に入れる必要があった。テクノロジーが展開される環境を理解するには、手続きそのもの、人間のふるまい、また手続きの変更がアプリの設計にどのように影響するか細部に至るまで理解しなければならない。

ユーザーが本当に必要としているものを確認する調査を行わずに、テクノロジーを使ったソリューションを構築すれば、信頼性を低下させたり損なうリスクを負うことになる。多くの場合、テクノロジーの構築自体は単純な部分だ。複雑なのは相互作用がある部分だ。対応するには十分な関与、トレーニング、テスト、これらを反復する体制構築への投資が必要となる。

我々は私生活や社会生活で即日配信や瞬時のストリーミングに慣れているため、公共部門への期待値も同じように高い。合理化が進み無駄が省かれていくと、アプリで何でも解決できると信じてしまいがちだ。だが、民主主義のための次のキラーアプリを構築するには、派手なツールをプロトタイピングするだけでは不十分だ。

公益に資するテクノロジー技術を構築することは、民主主義への信頼を再構築する広範で困難な課題に取り組むことだ。様々な手続きを合理化するためにテクノロジーを使うなら、究極のゴールを見据えて、正しく適用する必要がある。

【編集部注】筆者のHollie Russon Gilman(ホリー・ラッソン・ギルマン)氏は、New America’s Political Reform Programフェロー、コロンビア大学講師、Georgetown’s Beeck Center for Social Impact + Innovationのノンレジデントフェローであり、「Civic Power: Rebuilding American Democracy in an Era of Crisis」の共著者。同じく筆者のTara Dawson McGuinness(タラ・ドーソン・マクギネス)氏はオバマ大統領の元上級顧問であり、現在はNew America’s Political Reform ProgramのシニアフェローとしてMcCourt School at Georgetown Universityで公共政策を教えている。

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(翻訳:Mizoguchi