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メンド

飲食店の手配から調べ物まで“面倒ゴト”をLINEでお願いできる「メンド」が事前登録開始、約1.1億円の調達も

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「明日の会食のお店探しと予約をしてくれない?」「来週出張が決まったから宿と航空券の手配をお願いしたい」「通っているジムの解約手続きをして欲しい」——。

somewhereが手がける「メンド」は、そんな日常生活におけるちょっとした面倒ごとやお願いごとをLINEのチャットで相談するだけでサポートしてもらえる“オンラインパートナーサービス”だ。

概念はいわゆる「オンラインアシスタント」や「オンライン秘書」にも近いが、LINEを使ってカジュアルに相談できるのがメンドの大きな特徴。somewhere代表取締役の甚田翔也氏は「アシスタントに依頼するというより、気の知れた後輩にお願いごとをするような感覚で使える」と言う。

これまでメンドは招待制のサービスとしてひっそりと運営されていたが、これから少しずつ間口を広げていく計画。それに向けて本日3月2日より、ユーザーの事前登録受付を開始した。

合わせてsomewhereでは開発面やオペレーション面などの組織体制を強化するべく、複数の投資家から約1.1億円を調達したことも明かしている。この調達は2回に分けて実施されたもので、2019年3月のエンジェルラウンドにて個人投資家11人から3500万円、同年12月のシードラウンドにてVCや事業会社、個人投資家7人から7500万円を集めたという。主な投資家陣は以下の通りだ。

  • 佐藤裕介氏
  • 河合真吾氏
  • 古川健介氏
  • 西川順氏
  • 有川鴻哉氏
  • 赤坂優氏
  • 河合聡一郎氏
  • 尾上玲円奈氏
  • 有富丈之氏
  • 山岡佑氏(ここまでは昨年3月のエンジェルラウンドの投資家)
  • 千葉道場ファンド(これ以降は12月のシードラウンドの投資家)
  • FGN ABBALabファンド
  • みんなのマーケット
  • 宮田昇始氏
  • 西野伸一郎氏
  • 末永匡氏
  • 伊藤久史氏
  • 松宮大輝氏

身の回りの“面倒”を解決する「対話型の検索+実行エンジン」

メンドは非常にわかりやすいサービスだ。ユーザーは困ったことがあった際にLINEのチャットを使ってメンドに話しかけるだけ。移動中の電車やタクシーの中でも、エレベーターに乗っている時でも、なんならトイレに入っている時でもスマホが手元にあればいつでも使える。

甚田氏によると利用用途の半分は「いい感じの飲食店を探して予約して欲しい」といった食事関連の相談なのだそう。そのほか旅行に関する交通機関や宿の手配から、Webを使った簡単な調べごと(公共手続きの流れを調べて教えて欲しいなど)、商品購入(消耗品をAmazonで代理注文したりバイク便の手配をする)などお願いの幅は広い。

「メンドは『対話型の検索+実行エンジン』。忙しくて自分でやる時間がなかったり、単に面倒くさかったり。そんな時にLINEで話しかけてもらうだけで預かっているユーザーさんの情報や過去の依頼履歴などを基に予約手配や問い合わせ、商品の購入などさまざまなアクションを代理実行する。まだ規模は小さいが、消費行動における一次受けとして、何か困った時に『とりあえずメンドに相談する』という流れを作れてきた」(甚田氏)

現時点では音声アシスタントみたいにAIが勝手に答えを返してくれるわけではなく、大部分を人力で対応。LINEの向こう側にメンドのパートナー(チャット担当者)が待機していて、彼ら彼女らが各ユーザーをサポートする構造だ。

「近年はWeb上に情報が溢れ取捨選択コストが上がっている。Amazonのレビューやグルメサイトの評価点数も信頼できなくなってきたという人も少なくない。メンドではその道のプロや詳しい人の知見・データを集めたデータベースを作り、ユーザーさんから都度フィードバックをもらいながら常にアップデートをかけている。欲しいと思うタイミングでいつでも誰でも良質な情報を提供できるように、今はセンスの平準化をテーマに開発に取り組んでいるところだ」(甚田氏)

個人向けの料金プランは月額2万4800円から5万9800円まで大きく3つあり、プランごとに相談できる時間帯やお願いできる内容が異なる。どのプランも月額定額制のため何回相談しても料金は一緒だ。

原体験は知人へのオススメの飲食店紹介

甚田氏は学生時代からBASEやコインチェック、マチマチといったスタートアップでインターンを経験。新卒でマチマチに入社した後、フリーランスを経て2018年2月にsomewhereを創業している。

毎年ブログでその年に行って良かったご飯屋の情報をまとめて紹介するほど“ご飯好き”だったため、知人からオススメのお店を聞かれることも頻繁にあったそう。その都度相手の要望に合わせて美味しいお店を提案していたという。要は以前からメンドに近いようなことを個人的に実践していたわけだ。

「サービス案を模索している中で、お世話になっていた人から『気軽に使えるコンシェルジュサービスが欲しい』という要望をもらったのがきっかけ。クレジットカードのコンシェルジュなどは電話やメールでのやりとりが面倒で使いづらいという声も聞いていたので、それをチャットでカジュアルにできればお金を払って使いたい人はいるのではと考えた。(チャットでご飯屋さんの相談に乗っていたこともあり)コミュニケーションの進め方やポイントはある程度わかっていたので、まずは自分でやってみようと始めた」(甚田氏)

最初はFacebookメッセンジャーを使って、ご飯以外のお願いごとも含めてさまざまな依頼に自身で対応することからスタートした。ちなみにサービス名は甚田氏のニックネームをとって「じんたんコンシェルジュ」だ。

そこからオペレーション体制を整え、少しずつユーザー数を拡大。スタートアップの経営者や個人投資家を中心に数十人規模のユーザーに使ってもらう中で一定のニーズがあることも検証できたため、約1年が経過した2018年11月にサービス名を「メンド」に変えて内容や料金体系などを整理した。

サービスを広げていくにあたってはチャットでのコミュニケーションをよりシステム化して一気にユーザー獲得を進める選択肢もあったが、あえて属人的なやりとりにこだわり、拡大を急がない道を選んだ。

「最初からシステマチックにやりすぎると、人と人とのコミュニケーションの要素が薄れてしまって使い勝手が悪くなる。ユーザーさんにヒアリングをしている中で、コミュニケーションをしていてどこまで疲れないかが1つのポイントになると感じた。距離が遠くなると『こんなお願いして良かったんだっけ?』と思われてしまう。後輩的な立ち位置で、気軽に相談できる関係性を構築できれば、それが競合優位性にも繋がる」(甚田氏)

周囲からは認知を取るために「用途を絞ってバーティカルなサービスにした方がいいのでは?」という声もあったが、その道も選択しなかった。結果的には利用用途を狭めすぎなかったことで、ユーザー起点でどんどん新しい使われ方が生まれている。

たとえば「ダイエットのサポートをメンドにお願いする」という使い方はその一例だ。毎日の夕食における摂取可能カロリーをメンドからリマインドし続けることで、半年間で約10kgのダイエットに成功したユーザーもいるという。

「自分たちが解決したいペインは人々の『面倒』という欲求そのもの。ユーザーさんの生活における面倒なことは全てサービスとのタッチポイントであり、何か面倒なことに直面した時に頼られるサービスでありたい。面倒と感じることは人によってそれぞれとの考えもあり、特定の用途に限定することなく運営してきた」(甚田氏)

個人がマイクロタスクをアウトソーシングする時代へ

じんたんコンシェルジュ時代を含めると開始から約2年。初期に比べると社内の体制やナレッジもかなり整備されてきた。そんな中で実施した今回の資金調達は、人材採用の促進やセキュリティへの投資などを通じて、もう一段プロダクトを磨き込むことが目的だ。

採用面ではパートナーを中心にオペレーション面を強化するほか、エンジニアの採用にも力を入れる。甚田氏の話では顧客対応ツールや依頼されたタスクの管理ツールを始めとした社内用ツールの開発を進める予定で、LINEでは実現できない機能や蓄積できないデータなどは内製のシステムで対応していくことを検討しているという。

将来的にはテクノロジーの力で解決できる部分を増やし、現在は人力ベースのメンドのやりとりも「半ソフトウェア化」する計画だ。

「メンドは時間をお金で直接的に購入できるサービスという側面もあり、お金を払うことで面倒を解消できたり、精神的な負担を和らげたりもできる。今後も情報量が増えれば、選ぶコストはさらに上がっていくはず。メンドが生活全領域でユーザーさんの意思決定や困りごとの解決をサポートすることで、ユーザーさんが自分のやりたいことにしっかりとリソースを割けるようにお手伝いしていきたい」(甚田氏)

冒頭でも触れた通りオンラインアシスタントサービスというくくりで考えると、国内でも複数のサービスが存在する。法人向けであれば「CASTER BIZ」や「ビズアシスタントオンライン」などを始め、経理など特定の領域に特化した「メリービズ」のようなものもある。

個人向けでは500円から様々なタスクを依頼できる「My Assistant」やメンドと方向性の近い「nene」のほか、文脈は少し違ってくるものの領域特化のサービスとしては「ペコッター」や「ズボラ旅 by こころから」なども似たような使い方ができるかもしれない。

甚田氏が話すように、情報量の増加とともに意思決定にかかるコストが増える中で、自分が使える時間を少しでも増やすために「個人が身の回りのマイクロタスクをアウトソーシングしていく流れ」は今後加速していくのではないだろうか。

その文脈においても、メンドの今後の動向に注目だ。