マーケットプレイスの作り方

マーケットプレイスの作り方(3):サプライを増やす12のグロース戦略集

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サプライを増やす12のグロース戦略集(マーケットプレイスの作り方)

【編集部注]本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するPodcast「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。当シリーズの第1弾「Airbnb、Uberから学ぶマーケットプレイスの作り方(1)マーケットプレイスを制限する」、第2弾「マーケットプレイスの作り方(2)サプライかデマンド、どちらにまず集中するべきか?」も合わせてぜひチェックしてほしい。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。普段は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。今回も前回に引き続き、Lenny Rachitskyさんから許可を頂き、翻訳した「マーケットプレイスの作り方」シリーズをお送りします。過去回を読まれていない方はこちらから読むことができます。

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本シリーズは、大きく3つのフェーズに分けての構成になります。

フェーズ1:ニワトリとタマゴ問題について
マーケットプレイスを拘束・制限すること
 ・サプライ側かデマンド側、どちらにまず集中するべきか?
初期サプライの伸ばし方(←今回)
・エンドユーザーの伸ばし方

フェーズ2:マーケットプレイスのスケールの仕方
・サプライ側とデマンド側のどちらが伸び悩んでいるかをどう判断するべき?
・スケール時のグロース戦略
・クオリティー担保戦略
・学び・やり直すと何を変える?

フェーズ3:マーケットプレイスの進化させる方法
・「Managed」(管理された)マーケットプレイスへの進化する方法とは?
・新規事業の追加方法 ・新規事業の追加方法

多くのマーケットプレイスはサプライ側を伸ばす課題を持ち続けている

過去にa16zパートナー Li Jinさんのツイートを翻訳しました、C向けのマーケットプレイスのほとんどはデマンドが多すぎて、サプライを伸ばすのが常に課題になっているのがわかります。

AirbnbやUberなど有名マーケットプレイスの初期

サプライ側がそれだけ大事とわかったところ、今の大手マーケットプレイスはどうやって初期サプライは獲得したのか。以下のチートシートは、成功したマーケットプレイスのグロース戦略を分けた表だ。

画像1

サプライのグロース戦略をまとめると、

  1. ダイレクト営業
  2. リファラー
  3. 既存ネットワークの活用
  4. 口コミ
  5. 助成金
  6. 従業員がサプライヤーになる
  7. シングルプレイヤーモード
  8. 広告
  9. ループを見つける
  10. イベント
  11. SEOとコンテンツマーケティング
  12. コミュニティー

面白いことに、成功した企業のほとんどが戦略を絞って実行していた。平均で2.5戦略を使って、中央値が2個のグロース戦略。ここで学びは「1つの戦略にフォーカスすること。何が成功する戦略か探したタイミングでそこにひたすら投資すること」です。ここから成功しやすかった戦略から順にご紹介したいと思います。

グロース戦略1:ダイレクト営業

インタビューの中での一番の驚きは、「ダイレクト営業」がいかに重要だったかということ。約60%の会社は、ダイレクト営業がかなり重要なグロース戦略になっていた。

事例1:Airbnb
「ダイレクト営業は最初のリスティング時に重要だった。ユーザーもまだ集まってない未熟な市場では特に重要。それによってサプライの選別をしてどういう家が良いのか選べた。各ローカルチームが街中でどの地域、値段、リスティングの大きさを判断できるようにしたよ。」— Georg Bauser氏

事例2:OpenTable
「レストラン側では簡単なグロース戦略はなかったよ。営業チームを採用して、直接ドアノックしてソフトウェアをデモしていた。」— Mike Xenakis氏

事例3:Etsy
「一番成功したのはクラフト系のイベントなどで売手側を見つけてリクルートすることだった。そのうち、どこかのタイミングで売手が勝手に自分をプロモーションしてくれるようになった。」— Dan McKinley氏

事例4:Caviar
「私達のサプライ側の成長戦略はダイレクト営業だった。」— Gokul Rajaram氏

事例5:Uber
「Uber Blackは最初電話営業だった。リムジン事業者にひたすら電話し、ピッチしていた。リムジン事業者の多くは個人事業主だったので、そこでピッチしたのはUber Blackアプリを使うとミニマムの収入ギャランティーを約束していた。」— Andrew Chen氏

事例6:DoorDash
「一番のレストラン数を伸ばす戦略は電話営業とドアノック営業。ピッチで話すことは、集客を増やすこと。大手チェーンのマクドナルドは、デリバリー事業で70〜80%の売上増加が見込めると発言しているが、小さい店舗だと集客を増やすオプションが限られている。パートの採用、マーケティング、バックオフィスの仕事で追われているので、私たちがマーケティングを代わりにして上げることをピッチした。」— Micah Moreau氏

事例7:AngelList
「初期サプライを増やすためにいろんな投資先にウェブフォームにて名前、地域、好きな領域、年間投資社数、平均投資額などを記載してもらった。」— Babk Nivi氏

グロース戦略2:リファラー

2番目に使われていたグロース戦略が「リファラー」だ。これは既存サプライに新しいサプライを紹介してもらう仕組みづくりのこと。インタビューしたマーケットプレイスの3分の1が、これで成功した。

事例1:Lyft
「リファラーやアンバサダープログラムはかなり重要だった。何十%の新規サプライはその仕組みから来ていたよ。コアユーザーが若かったので、初期ターゲットは学生。学生へのピッチ内容は仕事の経験とお金儲け。報酬はレベル分けをしていて、トップレベルはアルバイトと同等の報酬。しかも、トップレベルになると、Lyft COOから推薦状をもらえたので、多くの学生がリファラーになった。ネットからのリファラーも影響はあったが、現場のアンバサダーは各都市では欠かせない存在だった。それで初期プロモーションも出来てたし、コスト削減もできた」(Benjamin Lauzier氏)

事例2:Uber
「サプライ側では3分の1がリファラー経由だった。そこからのドライバーが一番良かった。その他だと口コミが3分の1、広告からが3分の1」(Andrew Chen氏)

事例3:Caviar
「リファラーは、どのマーケットでも最初の大きな成長戦略。これは初期もそうだし、成長してからでも重要」(Gokul Rajaram氏)

事例4:DoorDash
「リファーラルはDasher側ではかなり大きかった。エンドユーザー側でも効果的だったが、サプライ側の方がリファーラル経由での獲得が多かった」(Micah Moreau氏)

グロース戦略3:既存ネットワークの活用

3分の1の事例は、既存ネットワークをうまく活用して伸びた(ほとんどのケースはCraigslist)。うまくいったケースでは1、2を争う成長戦略となった。

事例1:Uber
「Launcherチームが新しい市場に入り込む時は、まずサプライ側の囲い込みを行う。その際にはまずCraigslistを使った」(Andrew Chen氏)

グロース戦略4:口コミ

成長戦略ではないかもしれないが、口コミは初期サプライ側の獲得にかなり役立っていた。

事例1:OpenTable
「レストラン業界はかなり親密だ。レストランオーナーはお互い知っていて、何か新しいことを試すとバイラルに広がる。それを上手く活用できたと思う。さらにレストランの従業員は転職の頻度が高いので、新しいオーナーにOpen Tableを使うように言ってくれるんだ」(Mike Xenakis氏)

事例2:Eventbrite
「IPO申請資料を見てもわかるが、サプライ側の36%は口コミから来ている」(Brian Rothenberg氏)

事例3:Patreon
「クリエイターは、知り合いのクリエイターすでに使っていると、来てくれる」( Tal Raviv氏)

グロース戦略5:助成金

4分の1の成功事例は、初期サプライは自社で払ったり、ディスカウントする「助成金」の戦略を使っていた。

事例1:Uber
「お金を使って課題解決した。Uberを使って運転してくれたら、1時間$40払うギャランティーをして、その代わりに常にアプリを稼働させて70%の配車リクエストを承認すること」(Andrew Chen氏)

事例2:Lyft
「ドライバーに対して最低収入を設けた。このおかげでマーケットプレイスのサプライを獲得できた」(Benjamin Lauzier氏)

事例3:Breather
「どっち側を補助するかを決めなければいけない。Breatherの場合は、サプライ側だった。家具、金庫、鍵を提供してサプライ側のクオリティを上げた。1取引が小さいため、悪いクオリティにすると致命的」(Julien Smith氏)

事例4:Zillow
「初期リード獲得は、ほぼ全て補助をしていた。新しいユーザーにマーケットプレイス上のコネクションをリスクフリーで見せるためにはそうするしかなかった。後々バリューを見せつけられたタイミングで課金し始めたりした。これで初期のサプライを増やしたよ」(Nate Moch氏)

グロース戦略6:従業員がサプライヤーになる

数社では流動性と課題周りをより理解するために、従業員が初期サプライ側となった。

事例1:Rover
「初期サプライはすべて従業員だった」(David Rosenthal氏)

事例2:DoorDash
社内の全従業員が月一でDashをするポリシーがある。初期の時はDasherが足りてなかったのでCEOのTonyさんとチームがほぼ毎日Dasherとして勤務していた。しかもTonyさんの奥さんも一緒にDasherとして勤務していた時もあった」(Micah Moreau氏)

事例3:TaskRabbit
初期はCEOのLeahさんとチームがTaskerだった。本社から従業員を現場へ送り込んだのを覚えている。初めはエンドユーザーの体験を最高にするため、呼ばれた時に何をしててもエンドユーザーの元へ行った。初期にクオリティー担保を保てたのはそのおかげ」(Jamie Viggiano氏)

グロース戦略7:シングルプレイヤーモード

サプライ側にデマンドを必要としない良いツールを提供することでサプライの数を伸ばす戦略は、意外と使われてなかったが、うまく行ったケースでは一番重要な成長戦略となった。

事例1:OpenTable
「オンライン予約が人気なかった時代に、レストランにオンライン予約の話をしても無駄だった。なのでまずは、デマンドを必要としないソフトウェアの開発への投資を行った。具体的にはレストラン側のマニュアルの予約システムのリプレイス。最初のピッチの9割はソフトウェアを使ってより効率よくレストランを回すことで、1割ぐらいオンライン予約の話しかしてなかった」(Mike Xenakis氏)

事例2:Eventbrite
「サプライ側にはプロダクトを早めにセルフサービス型にした。」(Tamara Mendelsohn氏)

グロース戦略8:広告

初期段階でサプライ側を広告で増やすのはLyftとUberぐらいだった。

事例1:Lyft
「SEM、ディスプレイ広告、Facebook広告は初期のサプライとデマンド獲得に役立った。そこのCACをベンチマークとして他の成長戦略を試した」(Benjamin Lauzier氏

事例2:Uber
広告チャネルからは半分の登録があったが、合計Trip数の3分の1しかなかったので、一番効率悪いチャネルだった」(Andrew Chen氏)

グロース戦略9:ループを見つける

EventbriteとAirbnbはサプライ側のグロースサイクルを見つけたことで成長できた。

事例1:Eventbrite
イベント参加者(デマンド側)がイベント作成者(サプライ側)になるようなバイラルループをプロダクトに埋め込んでいた。さらに、無償イベントだと無償で使えるfree-to-paidループのおかげで初回の利用ハードルを下げた。後ほど初回で無償イベントのイベント作成者は有料イベントを作成して課金してくれた。そのループは34%のサプライ側の獲得となり、無償イベントを作ったイベント作成者の17%は12ヶ月以内に有料イベントを作成している」(Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏)

事例2:Airbnb
「エンドユーザーが旅行をブッキングする → 体験に満足している旅行中に自分の家をゲスト用に空けて旅行費の一部を負担しないかとオファーを出す → エンドユーザーがホストになる」(Casey Winters氏)

グロース戦略10:イベント

AirbnbやLyftは初期サプライを増やすためにイベントやミートアップを開催していた。

事例1:Airbnb
「新しい都市でローンチする時にはそこでミートアップを開催していた。SFだとサービスの創業者に会うのはあまり大したことではないが、他の地域だと貴重な体験と思われる。私達に会ったことを友達に言ってくれる」(Brian Chesky氏)

事例2:Lyft
「初期の基盤となったのがドライバー用のオンボーディング授業。教育動画やチャットを用意して、ドライバーに来てもらって、ベーグルや食べ物も提供していた」(Benjamin Lauzier氏)

グロース戦略11:SEOとコンテンツマーケティング

SEOはほとんどの会社では成長戦略として使われていなかった。
事例1:Eventbrite
「初期にイベントマーケティングのノウハウ記事を書いてSEOトラフィックを稼いでいた。SEOループは、

  1. イベント作成者が自社コンテンツでイベントページを作成
  2. 自社サイトにEventbriteページのURLを貼る
  3. そのEventbriteページのSEOランクは高くなり、さらに自社の「サンフランシスコイベント」ページのコンテンツ作りとなって、さらにSEO効果があった
  4. デマンドだけではなく、サプライ側の獲得にも繋がった

(Tamara Mendelsohn氏、Brian Rothenberg氏)

グロース戦略12:コミュニティー

一番ユニークな成長戦略はEtsyかもしれない。

事例1:Etsy
「オフラインでEtsyコミュニティーを作るのが初期で一番の成長戦略となった。『Etsy street teams』と言う熱意の高いコミュニティーメンバーの組織を作り、現場のアンバサダーとなった。各地域のチームリーダーにはツールやお金を渡し、売手のコミュニティーを作れるようにした。いくつかのチームは未だに存在している。初期は広告も全く使わず、売手側が自分のショップやブランドをプロモーションして成長した。しかも金銭的なインセンティブがなく、単純にEtsyに対する愛情でやってくれていた」(Nickey Skarstad氏)

次の記事では「12のデマンド成長戦略」をご紹介します!

連載「マーケットプレイスの作り方」