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SaaSやサブスク事業者の業務効率化と収益最大化をサポートするアルプが3.15億円調達

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近年、さまざまな業界に「サブスクリプション」の波が押し寄せている。

SaaS型のプロダクトが増えてきたソフトウェア産業や月額定額サービスが浸透しつつあるエンタメ産業はもちろん、自動車や製造業など歴史ある業界も例外ではない。トヨタの「KINTO」などはこの時代の変化を示す事例の1つであり、売り切り型のビジネスモデルを採用していた企業からも、サブスク型のサービスが生まれてきている。

本日3月23日に3.15億円の資金調達を発表したアルプは、そんなサブスク事業者の“業務効率化と収益最大化”を実現しようとしているスタートアップだ。昨年10月にリリースした「Scalebase」を通じて、契約管理や請求管理などサブスクにまつわる業務を一元管理できる仕組みを提供し、担当者を複雑なオペレーションから解放する。

今回の資金調達はScalebaseのさらなる拡大に向けて、エンジニアやカスタマーサクセスを中心に人材採用を加速させることが主な目的。DNX Ventures、 電通ベンチャーズ、ANRI、PKSHA SPARX アルゴリズムファンドから出資を受けた。

なおアルプは2019年3月にもANRI、PKSHA SPARX アルゴリズムファンド、DNX Ventures、千葉功太郎氏、片桐孝憲氏から1.5億円を調達済みで、今回はそれに続くプレシリーズAラウンドでの資金調達となる。

サブスク事業における複雑な契約請求管理業務をシンプルに

Scalebaseはプライシング、商品管理、顧客管理、契約管理、請求書の発行・送付、クレジットカード決済・口座振替などの決済、各種データ分析、前受金管理、仕訳登録など“サブスク事業で必要となる複雑な業務”を一元管理・自動化するSaaS型のプロダクトだ。

たとえばSaaS事業者の契約請求管理業務を例に考えてみよう。多くのSaaSでは複数の料金プランが設けられていて、プロダクトの進化とともにさらに新たなプランが加わったり、料金が値上げされたりすることも珍しくない。

その結果、サイト上では3つの料金プランしかないように見えても裏側の契約管理や請求管理の工程では十数パターンが存在する、といったことが起こる。さらに「ある顧客はディスカウントの対象で一定期間は特別料金」「別の顧客は年間契約で1年分を前受けしている」など、契約単位で細かい料金モデルや請求サイクルが異なる場合もある。

サブスク型のビジネスにおいては事業が成長して顧客との接点が増えるほど、このように顧客の契約形態も多様化し、それに伴うオペレーションも複雑になりがちだ。裏を返せば、事業の急拡大に耐えうるほどのオペレーション体制が構築できていなければ、それが成長を止める足かせにもなってしまう。

だからこそアルプでは「SaaSやサブスクビジネスにおいて収益成長と業務効率化は表裏一体の関係」と考えていて、一連の業務をシンプルにすることの価値も大きいという。

サブスク事業における複雑な契約請求管理業務をシンプルに

ではScalebaseを使うと何が変わるのか。まずサブスク事業の成長を加速させるためのアップセルやクロスセルのオペレーションが円滑に進むようになる。

簡単な画面操作で価格変更や新規オプションなどの商品設計を調整でき、割引キャンペーンや無料トライアルなども柔軟に設定可能。プランのアップグレードも「契約のバージョン管理」によってシンプルに実現される。

商品金額や請求タイミングは契約単位で細かくカスタマイズができ、請求データに関しても自動で料金計算が行われ、データを生成。「マネーフォワード クラウド請求書」など請求発行サービスとAPI連携をしておけば、請求書データの郵送やメール通知も請求日に合わせて自動化される。担当者が毎月契約内容や請求金額を確認して1件1件請求する手間も不要だ。

請求発行サービスに限らず、CRMや電子契約、決済、会計ソフトなど国内外のSaaSと広く連携しているのもポイント。2月にリリースされた「Scalebase Connect for Salesforce」を使えばリアルタイムにサービス間でデータを同期でき入力の手間を最小限に抑えられるほか、クラウドサインや請求発行サービス、会計ソフトなども連携することで、見積作成から契約締結、請求・入金管理までのプロセスが圧倒的になめらかになる。

Scalebaseには必然的にサブスク事業で重要な情報や細かい支払いステータスが蓄積されていくため、リアルタイムでMRRや解約率といった指標をチェックしたり、分析したりする際にも効果的だ。

「プランを複数設定したり、価格を上げていくこと自体はScalebaseがなくてもできるが、自分たちはそれをいかにやりやすくするかを追求している。価格変更や関連する管理業務が簡単になれば、実験的な取り組みもしやすい。オペレーションの摩擦係数を限りなくゼロに近づけることで、企業がポテンシャルを最大限発揮し、収益を最大化する支援をしていきたい」(アルプ代表取締役の伊藤浩樹氏)

150社以上の事業者にヒアリングしてわかったこと

顧客管理についてはSalesforceなどのCMSによって効率化が進む一方、契約管理や請求管理については今でもエクセルやスプレッドシートを用いて対応している企業が多く改善の余地が残されているようだ。

アルプが150社以上のサブスク事業者にヒアリングを実施したところ、これらの業務に関しては6割以上の企業が課題を感じていることがわかったという。

「事業者の1番のペインとなっているのが契約管理と請求管理。特にSaaS企業では売上を伸ばすためにどんどんプロダクトを変えてプランを改定したり、キャンペーンなど多様な売り方をしたりすることでバックオフィスのオペレーションが複雑化する。その結果『請求書が送れていなかった』『間違った内容で送ってしまった』といったことが多くの企業で発生してしまっている」

「Scalebaseはそのような課題を契約データと請求データを正しく持つことで解決していくだけでなく、オペレーションを最適化することで、今後もバックオフィスを気にせずプロダクトをアップデートできる基盤を提供する」(アルプ共同創業者で取締役の山下鎮寛氏)

この領域のプレイヤーとしては米国発のZuoraが特に有名だ。山下氏によると機能面では近しい部分も多いと言うが、Scalebaseでは日本発のプロダクトとして代理店管理や前受金管理など“日本の商習慣”に合わせた機能を複数搭載。導入して終わりではなくハイタッチなサポートが求められる領域のため、業務整理なども含めてカスタマーサクセス体制にも力を入れてきた。

またプライシングも異なる。Scalebaseは国内ではまだエンタープライズのSaaS事業者が少ないこともあり、中堅規模の企業でも導入しやすいように月額15万円から提供。MRRが1000万円以下のスタートアップ向けには、月額固定料金ではなく完全従量料金で提供するプランも用意した。

みんなが同じ課題を持っているならSaaS化する価値は大きい

アルプは2018年8月にIT業界出身の3人が共同で創業したスタートアップだ。

代表の伊藤氏はモルガンスタンレー、ボストンコンサルティンググループを経てピクシブに入社し、同社では代表取締役社長兼CEOも務めた人物。取締役の山下氏はヤフーを経てジョインしたピクシブでサブスクサービスのPMやビジネス開発統括を経験、もう1人の取締役である竹尾正馬氏も前職のサイバーエージェント時代に子会社で動画広告配信事業の開発責任者などを担った。

3人で事業ドメインを模索した際、最終的にScalebaseに行き着くきっかけの1つとなったのが、伊藤氏や山下氏がピクシブ時代にサブスク型のプレミアムプランに携わった際に感じた課題だ。

「決済手段やプランを増やすだけでも、エンジニアの工数が数人月かかり負担が大きかった。日本のC向けのサブスクを見渡してもNetflixやAdobeのようなレベルで決済周りをやれている会社はほとんどいない。誰もやれていなくて、みんなが同じような課題感を抱えているのなら、その解決手段をSaaSとして提供できれば価値があるのではと考えた」(山下氏)

また伊藤氏はピクシブ時代にさくらインターネットと共同で法人向けの画像変換SaaSを運営していた経験もあり、その際にも「コアでない業務はどんどんSaaS化できてしかるべきだと感じた」という。

「Scalebaseでは決済基盤や請求基盤を提供しているが、顧客としては本来サービス側のコアな部分により多くの人の力を投資したいと思っている。だからこそ基盤の部分はSaaS化のニーズもチャンスも大きい」(伊藤氏)

創業から最初の半年はほぼコードを書かず、約100社へのヒアリングに時間を投じた。その結果、当初はC向けの事業者を主なターゲットに考えていたが、実はSaaSなどB2B事業者の方がより大きな課題を抱えていることを発見。どちらにも対応はしているが、プロダクトに対しても今のところSaaS事業者の方がより反応がいいという。

今後は調達した資金を活用しながら組織体制を強化した上で、Scalebaseの機能拡充を進める。他社サービスとのAPI連携に引き続き取り組みつつも、Scalebase側でできることも順次増やしていく計画だ。