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消費者信用市場の変革目指すCrezit、スマホ完結のモバイルクレジットサービスをローンチ

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「個人が自分の信用情報を確認するのが難しい現状を変えていきたい。これまでのローンやクレジットカードにおいては、消費者が自分自身の信用情報について正しく把握・管理し、向上させる手段が乏しかった。たとえば学生時代のクレジットカードの支払い遅延が原因で、数年間ローンやカード審査に落ち続けてしまう事例など、信用情報に関しては不透明な部分も多い」

そう話すのはモバイルクレジットサービスを手がけるCrezit代表取締役社長の矢部寿明氏だ。同社では信用情報に関する課題の解決に向けて、ユーザーが自身の与信評価に関するデータを管理し、その情報を向上させられる仕組みを実現しようとしている。

本日3月26日にローンチしたスマホ完結型の無担保ローンサービス「CREZIT」にもその概念を取り入れ、誰でも「自分の現在の与信評価がどうなっていて、今後何をすればその評価を高めていけるのか」が簡単にわかる状態を目指していく計画だ。

個人が自分の信用情報を管理し、育てていけるプラットフォーム

Crezitが本日公開したCREZITは、登録から借入までの工程をスマホ上で完結できるモバイルクレジットサービスだ。

スマホから必要な情報を入力しCREZIT発行申請をすると、独自の与信審査に基づき各ユーザーには最大10万円の与信枠が付与される。与信枠内の金額であればいつでも好きなタイミングで借入を行うことが可能。返済回数と金額を選べば、登録した口座に希望額が振り込まれる。

現在用意されているベーシックプランは金利が0%。24時間オンライン上で申し込みを受け付ける。枠自体は最大でも10万円なので少額にはなるものの、既存の消費者金融や銀行カードローン、キャッシングなどと比べて低金利かつ手続きが簡単で、審査時間が最短5分とスピーディーなのも特徴だ。

冒頭でも触れたように、今後はプランの拡充などと共にユーザーが自身の行動によって与信枠を引き上げたり、契約条件を向上させられる仕組みを実装していく。

まずは利用履歴や返済状況、提出する追加データなどに基づいて、一定タイミングごとに与信枠が少しずつ拡大する体験を提供。ゆくゆくは独自のスコアないしランクのようなものも取り入れ、ユーザーが自身の与信評価を定量的に把握できるようにする計画だ。

「与信枠が上がる体験を大事にしていて、その粒度や頻度を従来よりも細かく設計している。たとえばローンやクレジットカードの審査に通らない人でも、少額からスタートして徐々に自分で信用を積み上げていけば、与信枠を上げていけるようにしたい。既存の仕組みだと与信評価を向上させることが難しいため、一度延滞などが原因で審査に通らなくなってしまうと、信用情報機関からその履歴が消えるのをじっと待つことくらいしかできない」(矢部氏)

消費者にとってこれまでブラックボックスになっていた「信用情報」を可視化し、ユーザー起点でそれを改善するためのアクションが取れるようにする。矢部氏たちが作ろうとしている体験はまさにそのようなもので、個人が自分の信用情報を管理し、育てていくプラットフォームという意味で、社内では「パーソナルクレジットマネジメント(PCM)」という表現をしているそうだ。

きっかけは自身がカードを作れなくなってしまった体験

Crezitは2019年3月の設立。創業者の矢部氏は大学卒業後にGE(ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)でファイナンス業務に従事した後、2018年3月からはBASEに参画して子会社BASE BANKの立ち上げや、将来債権譲渡のスキームを活用した「YELL BANK」の企画・開発などに携わってきた。

そんな矢部氏が消費者信用産業の変革に向けて起業したのは、自らの原体験の影響がある。実は矢部氏自身が学生時代にケニアでインターンをしていた際にクレジットカードの支払いが滞ったことが原因で、その後カードを作れなくなってしまったのだ。

「自分自身の体験もあって、コンシューマー側の金融サービスにすごく興味を持った。調べてみると信用情報や与信だけでもたくさんの課題があることがわかり、それを解決したくてCrezitを創業することを決めた」(矢部氏)

2019年4月にはジェネシア・ベンチャーズとインキュベイトファンドから約7000万円の資金調達を実施。同年12月には貸金業登録を完了するなど、着々と準備を進めてきた。

現時点のCrezitは非常にシンプルなため、インターネットを活用することでローンを使いやすくしたサービスに見えるが、矢部氏の話では既存のローンや消費者金融などの仕組みを単純にオンライン化したいというわけではないようだ。

同社の大きなチャレンジの1つは、業界のビジネス構造自体を変えていく点にもある。これまでのカードローンやキャッシングなどは、高い金利を設定するか、リボ払いのように返済期間を長く設けてトータルで膨大な金利を得るような形が多かった。Crezitではその現状を変えていきたいという。

「分かりにくさや不透明制を高めることでマネタイズをするのではなく、与信評価を管理し、高めていけることに対して価値を感じてもらい、その対価として収益が得られるようなモデルを作っていく」(矢部氏)

与信上限や返済回数の自由度を高めたプレミアムプランなど、個人向けにもマネタイズをする計画はあるが、より重要になってくるのは法人向けのビジネス。CREZITを通じて培ってきたデータや要素技術を外部へと提供する、与信プラットフォームとしての展開だ。

Credit as a Service(CaaS)の展開も見据える

従来銀行や金融が担っていたようなバンキングサービスを機能単位で切り分けて提供するBanking as a Service(BaaS)が日本でも注目されるようになってきているが、それに対してCrezitの場合は「与信」に関わる機能群をAPIを通じて外部に提供する。

矢部氏の言葉を借りれば「Credit as a Service(CaaS)」だ。同社の中長期的な展望としては個人向けのPCMと事業者向けのCaaSという2つの事業が軸で、今回の無担保ローンサービスはPCMの一部という位置付けになる。

今はメルカリがメルペイを立ち上げたり、Uberが金融商品・サービスに特化したチームを作ったり、BtoBのバーティカルSaaSを手がける企業がユーザー向けに融資などの金融サービスを提供したりするように、様々なプラットフォーマーが金融事業を手がけるような時代だ。

いざ事業者がコンシューマー向けのクレジット・ファイナンス機能を構築したいと考えた際に、Crezitが提供するCaaSに繋ぐことで低コストかつスピーディーに実現できるようにするのが目標だという。

「たとえば中国の芝麻信用ですらも、スコア評価の30〜40%くらいは信用情報機関のクレジットヒストリーを参照していると言われている。CREZITでこれから蓄積されていくデータだったり、そこで培われた要素技術は、何かしらの換金価値が生まれうるだろうと考えている。それを推進することが、巡り巡ってユーザーにより多くの価値が還元されることに繋がるような仕組みを目指していく」(矢部氏)

もちろんこの大きな構想は簡単に実現できるものではないだろうし、時間もかかるだろう。まずはCREZITでしっかりと実績を作ることが前提にもなる。

矢部氏が「まだまだ課題も多く、変革の余地もある」と話す消費者信用市場を、テクノロジーを活用してどのように変えていけるのか。今後のCrezitの動向に注目だ。