チャイルドケア

米国で新型コロナと戦う医療関係者をスタートアップが支えている

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新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、世界中の何十億という人々の暮らしを滅茶苦茶にしている。米国では過去数週間、多くの地域で外出禁止命令が出されていて、これにより幼い子供を持つ多くの親は毎日子供や家族の面倒をみながら仕事をしている。子供預かりサービスは、必須なものにもかかわらず米国の経済では往々にして軽視されている。そうしたサービスのプロバイダーはいま、新型コロナ危機による経済的な不透明さに対処しつつ、新たな役割を担っている。エッセンシャルワーカー(医療従事者など必要不可欠な業務を行う人)向けの子供預かりだ。

家庭ベースのデイケアネットワークを含むチャイルドケアのスタートアップと、福利厚生やビジネス管理のソフトウェアは家族のサポートで協業している。例えば、エッセンシャルワーカーとチャイルドケアを提供する人達を結びつけたり緊急のチャイルドケアを提供するのにテクノロジーを使っている。また、サービスプロバイダーに政府の助成を案内したり、あるいは自前の救援基金をつくるなどしてサポートしている。

TechCrunchは米国に拠点を置く9つのチャイルドケアスタートアップ・ホームデイケアと、プレスクールネットワークのWonderschoolNeighborSchoolsWeeCareMyVillage、それからチャイルドケアを検索できるアプリWinnieKomaeHelpr、また法人ソフトウェア企業のKinsideKangarootimeに、COVID-19の影響にどのように対応しているのか話を聞いた。

エッセンシャルワーカーのためのチャイルドケア

TechCrunchが話を聞いたチャイルドケアスタートアップの多くがいま、医療関係や緊急救援、スーパーなど外出禁止が出されている中で必須と分類されている職に従事する人のサポートに専念している。スタートアップの一部は、エッセンシャルワーカー家族の急な需要と新型コロナウイルスとの安全対策のバランスを取りながら、需要に素早く対応できるようプラットフォームやサービスの形態を変えている。

例えば、米国内の認可を受けたチャイルドケアプロバイダーを探すためのプラットフォームであるWinnieは、どの施設が一時閉鎖されていて、どの施設が受け入れ可能なのか、リアルタイムにデータを集めてアップデートしていると創設者でCEOのSara Mauskopf(サラ・マウスコプフ)氏は話す。今週Winnieは、すぐに子供を受け入れられる緊急チャイルドケアを親が探すことができるポータルを立ち上げた。

選ばれたベビーシッターと親をつなげるアプリ、Helprの創業者でCEOのKasey Edwards(ケイシー・エドワーズ)氏はエッセンシャルワーカーにチャイルドケアを提供できるよう取り組んでいると話す。Helprの「アウト・オブ・ネットワーク」機能は、エッセンシャルワーカーが利用しているケアプロバイダーをプラットフォームに加え、雇用主からのバックアップケア助成金を受けられるようにするものだ。

一方、家族のグループが「ベビーシッティングサークル」をつくって交代でケアすることを可能にするアプリKomaeは、自社従業員に無料のケアクレジットを提供し、7つのヘルスケア組織と協業している、と創業者でCEOのErin Beck(エリン・ベック)氏は語った。

Komaeで作られるベビーシッティングサークルはプライベートで、「サークル内の家族は子供のケアをメンバーだけに限定でき、不特定多数がいるコミュニティに子供をさらすというリスクなしにケアを確保できる」とベック氏は話した。Komaeは現在ユーザーに1家族か2家族とだけで“チームを組む”ことを推奨している。

一部の地域では、家庭での小規模ケアプロバイダーは営業継続を許可されている、とWonderschoolの共同創業者でCEOのChris Bennett(クリス・ベネット)氏は話した。Wonderschoolは家庭ベースのチャイルドケアやプレスクールをカリフォルニア州やニューヨーク州、テキサス州など米国で展開している。

「繰り返しになるが、小規模の家庭チャイルドケアオペレーターの事業継続を郡当局は許可していて、外出禁止となっていても必要不可欠と分類されている職業の人達のためにサービスを提供している」と同氏は述べた。「我々のプログラムは、大規模のプレスクールが現在提供できない重要な役割を果たしている」。

WeeCareも家庭でのチャイルドケアを提供している。共同創業者でCEOのJessica Chang(ジェシカ・チャン)氏は、同社が「サポートを時間単位で調整し、各郡で変更されているプロトコルを考慮している。北カリフォルニアやニューヨーク市のような特定のエリアにおいては、我々のプロバイダーはどのようにコミュニティを支えるかを念頭に置いて変更を加えている。デイケアに定期的に通っている子供のケアではなく、いまは救急隊員やエッセンシャルワーカーの子供たちを引き受けている」。

マサチューセッツ州では、Charlie Baker(チャーリー・ベイカー)州知事が3月23日から全てのチャイルドケアセンターを閉鎖するよう命じた。同州でいま唯一サービス提供を許可されているセンターはExempt Emergency Child Careプログラムだ。これはエッセンシャルワーカーのためのもので、幼児教育ケア(EEC)の部門が運営している。

その結果、家庭チャイルドケアプロバイダーと提携しているボストン拠点のNeighborSchoolsは命令に従ってすべてのセンターでのサービスを停止した。共同創業者でCEOのBrian Swartz(ブライアン・スワーツ)氏は、提携しているプロバイダーの一部は医療従事者や救急隊員、社会的弱者向けの緊急チャイルドケアの提供を申し込んでいる、と話した。同社は現在、プロバイダーに法的規制を案内し、政府の援助を活用するためのガイダンス周知を図っている。また、同社のプラットフォームへのフルアクセスを提供すべくEECの幹部と連絡をとっている。

「こうした展開は考えたこともなかったが、我々のネットワークのために立ち上げたサービスは、家族とチャイルドケアプログラムをリアルタイムに自動マッチングするのに適している」とスワーツ氏は話した。「チャイルドケアの予定を組むには、子供の生年月日、家族のスケジュール、年齢幅に応じて各プログラムで認可される受入可能人数を考慮する必要がある。EECから要請があれば、我々のチームは何を置いても真っ先に対応する用意ができている」。

オンデマンドサービス

スタートアップたちはまた、短期あるいは緊急のチャイルドケア探しでも親をサポートしている。一部のスタートアップは、親が在宅勤務と家庭生活のバランスを取るのをサポートしようと、デジタル・プレイデートのようなオンラインサービスを立ち上げた。

コロラド州とモンタナ州の家庭ベースケアプロバイダーのネットワークMyVillageには、「大規模なチャイルドケアセンターや教育機関の閉鎖のために一時預かりや短期利用を求めている家庭からかなりの関心が寄せられている」と共同創業者でCEOのErica Mackey(エリカ・マッキー)氏は話した。同社は現在、いくつかのMyVillageプログラムでチャイルドケアを必要とする家族向けの短期利用ソリューションに取り組んでいる。

急に在宅勤務生活を余儀なくされた親をサポートするために、KomaeとHelprはオンラインサービスの提供を始めた。Helprはプラットフォームでオンライン音楽レッスンとファミリー向けのチュータリングを立ち上げ、Komaeはデジタルプレイデートを展開している。デジタルプレイデートでは親はアプリで子供の友達とのビデオコールを設定できる。

「私の幼い子供がコンピュータースクリーン上で友達にこんなにも楽しませてもらえるなんて想像もしなかった。子供たちは互いに自分のおもちゃや変な顔を見せ合って1時間ほど過ごす」とKomaeのベック氏は話した。「我々皆にとって社会的なつながりは必要不可欠なものだ」。

安全とサポート

子供の手洗い

安全のための取り組みは常にチャイルドケアプロバイダーにとって最優先事項だが、特に今は極めて重要だ。COVID-19拡大を抑制するためのCDCガイドラインに従うのに加えて、多くの企業は独自のセーフガードも実行している。一部では、新型コロナによって受け入れ中止を余儀なくされているケアプロバイダーを援助するための経済的サポートプログラムを実施している。

たとえばベック氏は3月12日、オハイオ州が全米で初めて学校を閉鎖した数時間前に、アプリを利用する親に交代でのチャイルドケアを直ちに停止するよう求める手紙をKomaeのサイトに載せた。

「創業者としてこれまで行ってきた決断の中で、最も難しいものの1つだった。というのも、私自身も親であり、互いを思い、仲間と思っている多くの家族がどれほどさみしく感じるか痛いほどわかっていたからだ」と同氏は話した。「しかしソーシャル・ディスタンス(社会的距離)は今ほど守られていなかった。すべきことをする企業であるために、この大きなコミュニティのリーダーとして我々は責任を負っていた」。

ヘルスケアの組織で働く親がチャイルドケアを見つけられるようにサポートしたり、デジタル機能を立ち上げたりするような取り組みによりKomaeはコミュニティを維持している、と同氏は付け加えた。「そうしたことを実現させられるツールをKomaeは持っていた。ソーシャル・ディスタンスを取りながら、我々は隔離やデジタルケアシェアリングを受け入れた」。

安全のための策として、WeeCareはケアを提供するスタッフの体温をモニターする機能を開発した。日中の子供の様子の写真やビデオを撮ることができるアプリにすでに入っているファンクションを活用している。この技術では、ケアプロバイダーが毎朝体温計で測定した体温を撮ったビデオを提出することができる。ビデオがWeeCareのチームに認証されると、プロバイダーは認証された日付入りの「健康状態:熱なし」のバッジがもらえる。

チャン氏はこの機能により「プロバイダーは、コミュニティの安全と健康を確かなものにするために、CDCが推奨する通りさらに積極的な対策を取ることができる」と話す。

いくつかの企業は閉鎖を余儀なくされたプロバイダーをサポートしようと、そして病気なのに働こうとすることがいよう経済援助プログラムを提供している。たとえばMyVillageは4月までの予定されていた収入が継続して入るよう、ネットワーク内で追加の基金を立ち上げた。これまでのところ匿名の2人が寄付した、とマッキー氏は話している。

「我々の教育者の多くが休業するのに必要なセーフティネットを持ち合わせていない。だからこそ我々はできるだけ長く、そして安全にサービス提供を続けて欲しいと考えている」と同氏は語った。「もし親がウイルスにさらされたり感染したり、あるいは隔離対象となったら復帰するまで、我々の救援基金が子供のケア費用14日分のうち11日分をカバーする」。

Helprは、米国で最初のCOVID-19感染ケースが報告された後、同社のプラットフォームを使用するベビーシッター向けの有給病気休暇のポリシー立ち上げた。ユーザーは予約する時に情報開示を義務付けられるが、ベビーシッターたちはその家庭での病気の有無についても案内される。

TechCrunchがWonderschoolに話を聞いた数日後、CEOのベネット氏は同社がコロナ危機によりチームメンバーの解雇を余儀なくされたと発表した。発表前にベネット氏はTechCrunchに対し、子供や親、プロバイダーが症状を示したり、陽性と診断されてWonderschoolのケアプログラムを閉鎖しなければならなくなったら、同社はケアを探す家庭向けのサポートネットワークから手を引くだろう、と話していた。Wonderschoolは事業者向けの州や政府の経済支援策を待っている。

「これらの緊急支援金は、一時的にサービスを中止した家庭ベースのプロバイダーを、日常が戻った時に親たちが再び利用できるようにするために重要な役割を果たす」と同氏は述べた。

法人向けソフトウェア

チャイルドケア関連の法人向け管理ソフトウェアを構築するスタートアップにとって、パンデミックは異なる種の課題を生み出した。

チャイルドケアプロバイダーのための事業管理ソフトウェアKangarootimeのGenevieve Carbone(ジュネビーブ・カーボン)氏は、顧客の多くがサービスを利用する家族に目まぐるしく変わる規則の最新情報を提供するのにメッセージ機能に頼っている、と話した。同社のソフトウェアはまた、情報を紙に印刷して渡す代わりにデジタルでの提供や、アプリでのチェックイン・チェックアウト、オンライン決済などによる「少ない接触」を可能にしている。

「我々は新型コロナが今後事業に及ぼす影響、そしてパンデミックが収まったときに顧客をどのようにサポートできるかについて、注意深く見守っている」とカーボン氏は述べた。「助成金が出ると思う。政府のチャイルドケア費助成を必要とする家族向けには増額があると見込んでいる」。

従業員の介護給付管理やデイケア探しをサポートするソフトウェアのKinsideでは、外出禁止や社会的距離のために加入する親が60%減った、と創業者でCEOのShadiah Sigala(シャディア・シガラ)氏は話した。ネットワークに加盟している何千ものデイケアもまたサービスを停止している。

「まだ外出禁止命令が出ていないその他の地域でも、緊急のケアを探す親の数は減っている。全米で同様の措置が取られるのは時間の問題だろうとわかっているからだ」とシガラ氏は付け加えた。

しかしKinsideはエッセンシャルワーカーのチャイルドケア探しをサポートしていて、つい最近、プラットフォーム上での病院やグローサリーチェーンの従業員へのチャイルドケアサポート提供でそうしたところの人事部門との協業も始めた。

パンデミック後

デイケアや学校の閉鎖により、家族は類稀な困難な状況でそれまでの生活を変えることを余儀なくされた。こうした現実が、ケアを提供する人たちの経済への貢献や家族の健康のありがたさを思い知らせている。と同時に、多くのプロバイダーはセーフティネットが少なく影響を受けやすい存在であることも浮き彫りにしている。

MyVillageは長らく存在してきたチャイルドケアの構造的な問題を解決するために立ち上げられた、とマッキー氏は話す。「パンデミック以前でもそれを実現するのは難しかったが、今はいっそう困難だ。全国の家庭ベースのチャイルドケア事業の40%以上が子供を預かって得る収入がなければ2週間ももたないと報告している」と同氏は指摘した。MyVillageは米国の完全に機能していないチャイルドケアマーケットをなんとかしようと設立された。既存のマーケットは、平均時間給が11.50ドル(約1240円)の教育従事者や、チャイルドケアのために公立大学の授業料以上の額を払っている働いている親が利用できるようなものではなかった」。

シガラ氏は「パンデミックは、働く人の毎日や経済全体におけるチャイルドケアの必要性を露わにした。我々の仕事の多くは在宅勤務にフィットするかもしれない。しかし子供の面倒をみながらの在宅勤務には明らかにフィットしない」。

パンデミックが終息した後、子供を以前と同じケアプロバイダーに預かってもらうのは困難かもしれないし、料金が支払えるよう新たなプロバイダーを探す必要があるかもしれない、とシガラ氏は付け加えた。Kinsideは現在、何千もの雇用主、そして合計で子供100万人を受け入れられるデイケアセンターと協業している。同社は、企業が危機を乗り越えて再興する間、Kinsideへのアクセス料金を大幅に割り引いたり、無料アクセスを提供したりする計画だ。

「企業のトップたちはこれまでよりも共感の念を持って経営に戻ってくると予想している」とシガラ氏は話した。「彼らは(おそらく初めて)、従業員が毎日直面している問題であるチャイルドケアインフラの完全な欠如を経験した。企業の人事労務部門の責任者や役員たちと共に取り組む準備はできている」

画像クレジット:LEREXIS / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi