“AIを守るセキュリティ”開発へ、研究者4人が創業したChillStackが3000万円を調達

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AIを活用したセキュリティシステムの研究開発に取り組むChillStackは3月31日、DEEPCOREを引受先とする第三者割当増資により3000万円を調達したことを明らかにした。

ChillStackは2018年11月に代表取締役CEOの伊東道明氏ら4人の研究者が立ち上げたスタートアップだ。4人は法政大学在学中に同じ研究室でAIの研究を行なっていた仲間で、全員が国際学会で論文を発表した経験を持つ。

中でも代表の伊東氏は学生時代からAI×セキュリティ分野の研究に従事。国際学会での最優秀論文賞の受賞経験があり、その反響で様々な企業からセキュリティシステムに関する相談を受けることもあったそう。次第に「1つの会社に入ってシステムを作るのではなく、いろいろな会社に技術を提供したい」という思いが強くなり、ChillStackの創業を決めた。

AI活用でゲームやアプリの不正利用を自動検知

現在ChillStackでは大きく2つの事業を展開している。1つは「AI“で”守る」プロジェクトだ。Webアプリやゲームなどにおける不正利用をAIを用いて検知する取り組みで、昨年夏に「Stena」というプロダクトをローンチした。

Stenaは導入企業から提供されたログデータを基に、様々なデータからチートやBotなど大きな被害に繋がる不正行為を自動で検知する。過去の利用ログから正常な行動パターンを学習することで、サービス本来の使い方らかけ離れた行動をするユーザーを瞬時に捕捉。人力で対応するには高度な専門知識がなければ発見が難しい複雑なパターンなどにも対応できる点が特徴だ。

現在Stenaではオンラインゲームを手がける企業を対象にサービスを提供している。この業界は競合が多く競争が激しいため、ほとんどの予算をゲームの質を高めることに使う必要があり、どうしてもセキュリティ分野への投資が後回しになりがちなのだそう。結果としてある程度の不正利用を許容せざるを得ないなど、大きな課題になっている。

今の所はSaaSモデルのツールとセキュリティエンジニアによる人的なサポートを組み合わせて提供しているが、今後はより安価に使えるように一連の工程を全自動化したツールも開発していく計画とのこと。対象領域もゲームのみならず、広告やチケット販売システムなど別領域まで広げていきたいという。

AIをサイバー攻撃から守るセキュリティシステム開発へ

このAIで守る事業と並行して研究開発を進めているのが「AI“を”守る」プロジェクトだ。自動運転やスマートシティ、スマートスピーカー、顔認証システムなど日常生活の様々なシーンにおいて今後AIが浸透していくことは間違いないだろう。そこではAI自身がサイバー攻撃の標的となる危険性があり、AIを様々な攻撃から守っていかなければならない。

AIを開発する工程でセキュリティを考慮せずにいると、攻撃者が細工したデータが学習データに注入されることでAIにバックドア(侵入ルート)が設置されてしまったり、AIの入力データが偽装されることでAIの判断に誤りが生じてしまったりするなど様々な問題が起こりうるという。

いずれ顕在化するであろうニーズに備えて、ChillStackではAIを守る技術の研究開発を進めている。伊東氏によると既存システムに対する攻撃手法とAIに対する攻撃手法とは根本的に原理が異なるものが多く、これまでのセキュリティ技術だけでは十分な対策ができないそう。AIを守るためには、それに特化したセキュリティ技術が必要になるわけだ。

今月からは三井物産セキュアディレクションとも共同研究に取り組んでいて、5月を目処にイチからAIの安全確保技術を習得できるハンズオン・トレーニング(研修プログラム)を提供する予定。現時点ではAIのセキュリティに対応できる人材が少ないため、まずはその人材を育てる活動から始める。ゆくゆくはこの領域における脆弱性診断ツールなども開発していく計画だ。

ChillStackでは今回調達した資金を用いてエンジニアやビジネスサイドのメンバーの採用を強化し、プロダクトの研究開発、拡販に力を入れるという。