新型コロナに翻弄されながらもNASAは商用宇宙飛行と火星探査車の計画を敢行

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米国中のNASAの施設は、ほとんどが閉鎖された。一部のチームは自宅勤務(そして火星探査車を操作)しているが、その他の人たちは、重要なミッションを敢行しようと懸命に頑張っている。さもなければ、5億ドル(約540億円)もの延滞金を支払わされることになると、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官は言う。

米国時間4月15日に発行されたPlanetary Society誌のインタビューに応えて、ブライデンスタイン長官は、いろいろな興味深い話を聞かせてくれている。だが、新型コロナウイルスのパンデミックほど、NASAの業務に影響を与える緊急で突出した問題はない。

10年にも及ぶ暫定スケジュールで進められているプロジェクトの場合は大幅に余裕がある。しかし、そんな贅沢なミッションばかりではないと長官は話す。中でも特に重要とされるもの、そのために従業員に出勤を許可しているミッションが2つある。Commercial Crew(コマーシャルクルー、商用有人飛行)プログラムと、Mars Perseverance Rover(パーセベランス火星探査車)だ。なおパーセベランス火星探査車は、以前はMars 2020と呼ばれていたが、子たちの名称コンテストでパーセベランスと改名された。パーセベランスとは忍耐という意味だ。

コマーシャルクルーは、SpaceX(スペースX)とBoeing(ボーイング)が米国製有人宇宙船の開発を競っているプロジェクトだ。2011年にスペースシャトルが引退して以来、米国は国際宇宙ステーション(ISS)との宇宙飛行士の往来をソユーズのみに依存している。

「ひとつの理由によって、これは絶対に不可欠な機能なのです。我々には、国際宇宙ステーションに行ける独自の手段を確保する必要があり、これには米国人納税者からの資金1兆ドル(約107兆円)が投資されています。なのでミッションは敢行しなければならないのです」とブライデンスタイン長官は話す。

実際、世界中の工業界が厳しい状況に置かれているにも関わらず、早くも来月の日程ががっちり固められている。プログラムでは、空論的に設けられた締め切りがいくつも近づいては通り過ぎてゆく。

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インタービューの後半で、長官は、Crew Dragon(クルードラゴン)とStarliner(スターライナー)の両カプセルは、ソユーズとロシアのロケットと完全かつ永久に入れ替わるものではないが、確かな代替手段を確保し、依存関係だけがロシアとの唯一のつながりという状況をなくすものだと明言した。昨年はソユーズが打ち上げに失敗し、ISSは運用開始以来初めて無人の状態となった。だが迅速な調査が行われ、すぐに元通りになった。ISSに行くための手段が複数あれば、こうした危機的状況を招く危険性を低減できる。

もうひとつの非常に重要とされるミッションは、次期火星探査車のパーセベランスだ。

「このミッションは、ひとつの理由から重要視されています。つまり、火星への打ち上げウィンドウが非常に限られていることです」とブライデンスタイン長官。

軌道を回る人工衛星や、月ミッションであっても、長期の定期的な打ち上げウィンドウが用意される。だが火星へ向かう宇宙船を、短い飛行時間で狙った軌道に正確に投入するためには、地球と火星の位置が最適な時期にまとめて打ち上げなければならない。惑星間飛行は、非常に高い精度を要する科学技術だ。パーセベランスを予定通りに完成させなければ(この場合は7月17日)、悲惨なことになる。

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「その打ち上げ時期を逃すと、2年間で5兆ドル(約540億円)を超えるコストが掛かることになります。ミッションが全滅するわけではありませんが、そんな事態には遭遇したくありません」とブライデンスタイン長官は言う。

だが長官は、NASAの従業員の健康を犠牲にしてまで達成しようというのではないと、安全には気を遣っている。

従業員には、できる限り多くの予防策を講じた中で働いてもらうことになります。私たちは、従業員を分離しています。同時に働くことがないよう、シフトをずらしました。また必要なとき、必要な場所でPPE(個人用保護具)を使用しています。

NASAの従業員の中で、仕事のやり方に納得ができない者が一人でもいれば、その旨を知らせてもらいたい。そして、気兼ねな違う仕事に就いて欲しいと考えています。他の業務に就けるよう、我々が実際に手配します。働きづらい場所や危険な場所で働かせたくはないのです。従業員は、NASAにとって最重要の存在です。この非常に特異な状況で、すべての人が安心できるようにしたい。そのため私たちは、従業員が安心して働けるように自由意志を尊重し、それによって評価が変わるようなことが絶対にないように努めます。

それでも遅延が心配されるプロジェクトに関して、ブライデンスタイン長官は、次世代ロケットのSpace Launch System(スペース・ローンチ・システム、SLS)が「厳しい状況」にあると認めた。その初号機Altems I(アルテミス1)のテストは2021年末に予定されているが、2022年にずれ込む公算が高いという。だが、SLS2号機となるアルテミス2は独立して準備が進められており、初号機のスケジュールにはほとんど左右されないとのことだ。

2024年に月面に人類を立たせるという野心的な計画は、以前から大ばくちだと見なされていた。パンデミックは、それをさらに先延ばしにするだろう。しかし少なくとも短期的には、NASAの本当に重要な業務は継続され、事態が好転したなら(そう祈るが)、この春と夏には、歴史的なミッションが成功を飾る予定だ。

ブライデンスタイン長官のインタビュー全編は、Planetary Societyのポッドキャストで聞くことができる。

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(翻訳:金井哲夫)