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東南アジアでオンライン学習サービスを手がけるManabieが約5.2億円調達、今後は「学校のオンライン化」支援も

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「東南アジアではスマホの普及に伴って、これまで質の高い学習へアクセスできなかった子どもたちに良質な学習コンテンツを届けるスタートアップが台頭し始めている。今後求められるようになるのは単に学習機会を提供するだけでなく、オンライン上でもしっかりと学習を継続できる仕組み。その仕組み作りに向けて、もう一度起業をして本気チャレンジしたいという思いが強かった」

そう話すのは教育系スタートアップManabieの代表取締役を務める本間拓也氏だ。

本間氏はイギリス発のEdTechスタートアップ「Quipper」の共同創業メンバーの1人で、同社が2015年にリクルートに買収されて以降も含めて約9年間に渡ってオンライン教育に携わってきた人物。現在は2019年4月にシンガポールで創業したManabieを通じて、ベトナムを中心にオンライン学習アプリやオフラインの学習塾を展開している。

そのManabieは4月22日、さらなる事業拡大に向けて総額約5.2億円(480万ドル)の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社によると今回の資金調達額はエンジェルラウンドとシードラウンドを合わせたものとのこと。日本のエンジェル投資家やベンチャーキャピタルを中心に、国内外の投資家から出資を受けているという。主な投資家リストは以下の通りだ。

  • 本田圭佑氏
  • 梅田望夫氏
  • 有安伸宏氏
  • 松本恭攝氏
  • 福島良典氏
  • 渡辺雅之氏
  • 大湯俊介氏
  • ジェネシア・ベンチャーズ
  • そのほか東南アジアのVCや個人投資家など

Manabieでは今回調達した資金を活用し既存サービスの開発体制の強化を進めるほか、コロナウイルスの影響で「学校のオンライン化」が迫られる教育機関の支援にも取り組む計画だ。

動画レッスン+人によるサポートで継続的な学習を支援

Manabieが手がける「Manabie Basic」や「Manabie Prime」は動画授業をベースとした学習アプリだ。ユーザーはスマホなどを使って動画レッスンを見ながらインプットをし、クイズ形式の演習問題を解くことで知識を定着させていく。人間の先生ではなくバーチャル(アニメーション)のキャラクターによるレッスンという違いはあるものの、仕組み自体は「スタディサプリ」などに近いイメージだ。

今は高校生向けの数学/化学/物理/生物/英語に対応していて、約1000種類の動画レッスンコンテンツ、2万問の問題を提供。今後は中学生向けのコンテンツへの拡張やベトナム以外の東南アジアへの展開も見据えている。

年間50ドル(約5000円)で使えるManabie Basicが質の高い教育コンテンツをリーズナブルな価格で多くの子どもに届けることを目指したものだとすれば、年間250ドルのManabie Primeはそこに人力のサポートを加えることで、オンライン上での継続的な学習を強力に後押しするものだと言えるだろう。

このプランではManabie Basicのコンテンツにプラスして、オンラインコーチとメンターによる支援がついてくる。コーチはユーザーの心のケアや個々に合わせた学習計画の作成などが主な役割で、各生徒が途中で離脱してしまわないようにオンライン上で声かけをしたり相談に乗ったりする。一方のメンターはユーザーがわからない問題に直面した際に家庭教師のような形で質問に答えるのがミッションだ。

「現地の子どもたちは学ぶ意欲が高く学習塾などに通っている子も増えているが、そこに教材や塾のクオリティが追いついておらず、いろいろな負があるのが現状。まずはオンライン上で質の高いコンテンツにアクセスできるようになるだけでも、その状況を大きく変えられる」

「一方でオンライン学習サービスに共通するのが、全体の8割ほどのユーザーは学習が続かないということ。そのユーザーをいかにサポートしていくかが鍵になる。Manabie Primeではコーチやメンターによるサポートを取り入れ『教育版のライザップ』のような形で支援する仕組みを作った。各ユーザーにはコーチから自分用に設定された今日のToDoが送られてきて、コーチやメンターのサポートも受けながら課題に取り組む」(本間氏)

Manabie Primeでは裏側のオペレーションなどにもかなりこだわっているそう。コーチングカリキュラムはスタンフォード大学でコーチング領域を学んだメンバーが開発。それに加えてコーチ用に生徒ごとの進捗状況などが見れるシステムを開発し、どの生徒にどのタイミングで声かけをするのがいいか、サジェストするような仕組みも入れている。

学習アプリを使ったオフラインの学習塾も展開

また同社では学習を継続する仕組みとして、学習アプリだけでなくリアルな学習塾「Manabie Hub」も手がける。ここでは集団学習塾のような形で講師が授業をするのではなく、各生徒がスマホやタブレットからManabieの学習アプリを開き、自分に最適化された課題を自分のペースで黙々と進めていく。

最近は日本でもタブレット学習アプリを取り入れた学習塾が増えてきているが、まさにそれと同じ仕組みだ。教室では1人の講師の代わりにコーチがいるので、何か課題にぶつかった際は彼ら彼女らにサポートを求めることができる。

本間氏によるとベトナムではまだまだ集団型の学習塾が主流で、授業についていけない生徒が学習を継続するのが難しいという課題が残っているそう。Manabie Hubはその解決策として機能していて、昨年12月以降でホーチミンに5つの教室を開いたところ、200人ほどの生徒が集まった(現在はコロナウイルスの影響で開校していない)。

冒頭でも触れた通り、近年はスマホの普及もあって中国や東南アジアでオンライン教育サービスが広がり始めている段階。本間氏の前職であるQuipperも東南アジアで事業を拡大しているほか、現地発のスタートアップも生まれ業界の変革が進む。

とはいえManabieが取り組むベトナムなどの国では強力なEdTechプレイヤーは生まれていない状況で、テクノロジーに強みを持つスタートアップには大きなチャンスがあるというのが本間氏の見解だ。

かつて本間氏がQuipperを創業したのもそういった未来を見据えてのこと。東京大学を中退後、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに通っていた際にDeNAの創業メンバーでもある渡辺雅之氏らと出会い、「全く同じようなことを考えていた」ため共に会社を作った。

それからは約9年間に渡ってQuipperの商品開発やグローバル展開、事業開発などを幅広く担当。 フィリピンやインドネシアなどにも滞在し、カントリーマネージャーとして現地チームの立ち上げや東南アジアでのサービス拡大にも取り組んできた。

東南アジアの教育市場が新たなフェーズに差し掛かるタイミングを迎える中で、自らもう一度大きなチャレンジをするなら今やるべきだと考えManabieの創業を決断したという。

コロナの影響受け「学校のオンライン化」支援強化も

本間氏によると既存事業が軌道に乗りつつあり、事業拡大のスピードを上げるべく今回の資金調達を実施したそう。当初は中学生向けなど対象を拡大するほか、ベトナム以外の国への事業展開を予定していたが、コロナウイルスの影響を受けて方向性を少しシフトすることになるようだ。

「ベトナムでも1月後半から学校が休校し、いつから再開できるかわからない状態。日本も含めて学校継続のために『学校のオンライン化』が大きな課題になっている。現場がかなり混乱している上に、このような状況は今まで誰も経験していないため解決策を手探りで探していかなければならない状態。自分たちとしてもこの課題解決に取り組んでいきたい」(本間氏)

それこそスタディサプリやQuipperも含めて学校向けに展開しているサービスもあるが、今まではあくまで授業の補助教材として使われるケースが一般的だった。学校が休校になるとそもそも従来のやり方では授業ができなくなり、前提条件自体も変わる。当然新しい課題も生まれてくるだろう。

「今はZoomなどを使ってオンラインの授業をしたり、宿題などの課題を配信したりすることで対応を始めている学校も出てきている。ただZoomで複数人を相手に授業をするとなると、どうしてもリアルな授業に比べてインタラクティブ性にかけてしまうし、生徒の反応も見えづらく、先生にとっては悩ましい問題になっている」(本間氏)

Manabieでは学校のオンライン移行をサポートするべく自社でガイドブックを公開したところ、様々な教育機関から問い合わせがきているそう。今後はそういった現場の声も踏まえながら、学校向けのラーニングマネジメントシステムの開発にも取り組む方針だ。

これについてはまだ詳細は明かせないとのことだが、もともと同社ではtoC向けのプロダクトと並行して教育機関向けのプロダクトの開発にも着手していたとのこと。まずは自社で展開する塾などでの活用を考えたいたそうだが、今の教育現場の状況を受け、現場で使えるような形で機能面をブラッシュアップしてリリースする計画だという。

「toC向けの事業は、まずは良質な学習環境にオンライン上でアクセスできる仕組みと学習がしっかり継続できるシステムを作り込むフェーズ。ただ本来は受験勉強以外にも学ぶべき大切なことがあると考えているので、中長期的には受験に限らず、今の時代を生きるにあたって必要なことが学べるようなサービスにしていきたいと考えている」

「その一方で足元ではコロナウイルスの影響で学校のあり方自体が変わり始めている。withコロナ時代の学校のあり方とはどんなものなのか、自分たちでもそれを考えながら学校現場をサポートするためにできることをやっていく」(本間氏)