メンタルヘルスをタブー視するアジアの文化に挑むIntellect

次の記事

NASAのアルテミス協定が宇宙協力に関する新ルールを起案

精神面の健康管理は、体の健康管理と同じくらい重要だ。しかしアジアではメンタルヘルスはタブー視されている。シンガポール拠点のスタートアップIntellect(インテレクト)はアプリによってメンタルヘルスにアプローチしやすくしたいと考えている。アプリでは、認知行動療法のテクニックに基づく自分で取り組めるエクササイズを提供している。

同社は消費者向けと企業向けのアプリを手掛けていて(企業向けアプリでは雇用主が従業員に厚生として提供する)、シンガポールやインドネシア、インド、中国にユーザーを抱える。

今年初めにベータ版を立ち上げて以来、ユーザー1万人と、スタートアップから大企業までさまざまな規模の企業10社がサインアップした、とIntellectの共同創業者でCEOのTheodoric Chew(セオドリック・チュー)氏は話す。同社は北京語とインドネシア語のバージョンの立ち上げを計画していて、ローカル版エクササイズを開発すべく現在研究者と取り組んでいる。ローカル版エクササイズには、日記づけや習慣に関するエクササイズが含まれる。ストレスや自己管理の甘さ、精神面でのバーンアウト、睡眠問題などをテーマとするショート音声クリップの「レスキュー・セッション」もある。

同社はプレシードラウンドで資金調達し、起業をサポートするシンガポール政府機関のEnterprise Singaporeも出資した。

米国や欧州では、一般的なメンタルヘルス問題にいかに対処すべきかをユーザーに一指南する自助アプリが増えている。新たに加わったものをいくつか挙げると、Headspace、MoodKit、Moodnotes、Sanvello、そしてHappifyなどがある。しかし自助アプリを展開する動きはアジアではまだ初期にある。

Intellectを立ち上げる前、チュー氏は2015年に楽天に買収された旅行予約マーケットプレイスVoyaginでアフェリエイト成長とコンテンツマーケティングの責任者を務めていた。そして同氏は自身の経験からメンタルヘルス分野に興味を持つようになった。

「私は不安の症状で一時期セラピーに通っていた。アジアでは(メンタルヘルスのセラピーを受けることに対し)社会的にマイナスのイメージがかなりあり、ツールはさほど多くない。米国や欧州ではすでに数多くあるが、アジアではまだまだだ」とTechCrunchに語った。

そして「ほとんどの人がメンタルヘルスについて話そうとしない。アジアではそうした傾向が強いが、メンタルヘルスという枠組みではなく個人の問題に取り組む、自己管理力や自信のなさに取り組むというふうにとらえ方を変えると、人々は態度をかなり変える」と付け加えた。

メンタルヘルスケア専門家のフィードバックをもとにIntellectは開発されたが、チュー氏は専門家のセラピーに取って代わるものではない、と強調する。その代わり、メンタルヘルスの話題が避けられる傾向が強い文化において、自身のメンタルヘルスを管理しやすい方法を人々に提供することを意図している。アプリにあるエクササイズは、気分の落ち込みや不安の解消だけでなく、自己主張の展開や批判対応といった職場や人間関係に伴う問題の解決にも使える。アプリの企業向けバージョンは、産業に合わせてエクササイズをカスタマイズできる。これはスタートアップや、大企業が提供できるような従業員サポートプログラムを持っていない中小企業のためのものだ。大企業が提供する従業員サポートプログラムには往々にして相談電話やメンタルヘルスケアサービス案内などのリソースが用意されている。

消費者向けアプリは月払いの定額料金ですべての機能が無制限に利用できる。ただし、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのいまは無料で提供している。

ゆくゆくは、アプリ内でユーザーが利用できるメンタルヘルス専門家のネットワークを開発したい考えだ。

「当社は、セラピーは鬱と診断された人だけでなくみんなが利用できるもの、というアプローチをとっている」とチュー氏は語る。「3〜5年内に、毎日の悩みを解決できるセラピーコモンプレイスをつくりたい。また、より医療的な問題にも取り組みたいと考えているが、認知行動療法に基づくメソッドを使って日々の問題に取り組む方法としてとらえれば、ほとんどの人がメリットを得られると思う」

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi