経営管理特化クラウド「Loglass」正式リリース、8000万円の資金調達実施も

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写真中央:ログラス代表取締役CEO布川友也氏

経営企画部門の経営管理業務に特化したクラウドサービスを開発・提供するログラスは7月8日、プロダクト「Loglass」の正式リリースを発表した。同社は同時に、前田ヒロ氏がマネージングパートナーを務めるALL STAR SAAS FUNDからの出資と日本政策金融公庫からの借入により、総額8000万円の資金調達を実施したことを明らかにしている。

経営管理に特化したクラウドツール「Loglass」

企業の情報処理ツールのクラウド化はさまざまな領域で進んできた。経理部門向けの会計クラウドや営業向けのCRM・SFA、人事・労務管理ツールに経営分析のためのBIツール。多くの領域で経営情報がデータベース化されているが、「実は経営管理領域では、いまだにみんなExcelを使っている」とログラス代表取締役CEOの布川友也氏は指摘する。

布川氏は新卒でSMBC日興証券に入社し、投資銀行部門に在籍。その後ゲームメディアなどを運営するGameWithで上場直後に経営戦略を担当し、2019年5月にログラスを設立した。新卒から起業までの間、働き方改革の波を実感してきた布川氏は、「労働人口減でバックオフィスに人を割かない傾向にある今、システム化が特に大企業で進んでいる。新型コロナ感染拡大でさらにその傾向は強まり、問い合わせも増えていて、経営管理クラウドは時代の流れにマッチしている」と述べている。

自身が経営企画部門に属していた布川氏は、CFOや経営企画の担当業務について、こう話している。「経営企画の業務には定型のものと非定型のものがある。このうち経営管理は定型化しきれず、工数が大きい業務となっていて、投資や経営分析といった付加価値の高い業務に割くべき時間を奪っている」(布川氏)

その理由に「みんながExcelを使わざるを得ない、構造的・技術的な問題がある」と布川氏はいう。まず構造的には、関係者が多いこと、データフォーマットが多岐に及ぶことが挙げられる。「経営管理業務の工数の多くは、各拠点や部門から形が違うデータを収集し、加工してExcelに落とし込むことに充てられる。そうしてやっと分析を行い、経営陣にデータを提出することができる」(布川氏)

例えば、ある総合商社では末端部門をスタート地点に、5段階の組織を経由し、Excelで数値を提出・承認を行っている。また塾を運営するある企業では、全国2000教室からExcelで数値を集めているという。

「それぞれが提出するデータを統合するサービスはなく、経営企画の担当者はこれまでみんな『Excelでやらざるを得ない』と諦めてきた」(布川氏)

技術的な問題としては「ノウハウが秘匿化され、ベストプラクティスが得られない」ことが挙げられた。エンジニアではよくベストプラクティスの共有が行われており、営業、経理、PRなどの部門でも他社との情報交感が見られるが、「経営管理業務は秘匿化される」と布川氏はいう。「このためベストプラクティスが得られず、毎年仕組みを属人的に変えていったり、表計算ソフトの動作が重くなるといったことは経営企画では“あるある”のパターン。複雑化したExcelが属人化して業務が引き継げない、という課題が広く一般にある」(布川氏)

ログラスはこうした経営管理業務の課題をどのように解決しようとしているのか。布川氏は「分散バージョン管理システムのGitを応用して、履歴をSaaSで一元管理し、多人数での編集も行えるようにする。また、複数のデータフォーマットも自動集計できるようにし、編集・閲覧の権限設定も簡単に行えるようにする」と語っている。

業務の属人化・たこつぼ化については、SaaSでサービスを提供することで、解決を図ると布川氏。「SaaSは常に進化し続け、最適化することができる。個別企業の数値などはもちろん出さない形で、さまざまな企業の経営管理業務の集合知を最適化して、システムとして提供する」(布川氏)

布川氏はリリースしたLoglassを、コーポレートインテリジェンス(Corporate Intelligence、CI)プロダクトと位置付ける。ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence、BI)が幅広い部門にわたる可視化分析の取り組みだとすれば、CIは経営管理に特化して、データ収集プロセスの支援やパフォーマンス測定、全社へのデータ閲覧環境の提供などを行う。

「BIツールの市場は伸びている。Microsoftの『Power BI』普及や、Salesforceによる157億ドルでの『Tableau(タブロー)』買収、Googleによる『Looker』買収など、巨大IT企業がみんなBIツールに力を入れている状況だ。私たちは、これらのBIツールを使いたい経営管理の担当者が困っているポイントを全部解決して、連携できるようなシステムを作っている」(布川氏)

2020年2月にMicrosoftによるスタートアップ支援プログラム、Microsoft for Startupsに採択されているログラス。中長期的にはMicrosoftとの連携により、大企業のデジタル化推進を図ると布川氏は話している。4月にクローズドリリースで公開されたLoglassは「すでにいろいろな企業に売れている」とのこと。リリースから1.5カ月で売上1500万円に到達したそうだ。

「企業内データの断絶をなくす」ことを目指して


ログラス代表取締役CEO 布川友也氏

布川氏はログラスの強みを「経営企画出身の3人が創業メンバーとして参画し、ドメインに詳しい人間がプロダクトをイチから設計しているので、ユーザーが使いやすく、他社にはマネできないものが作れている」と話す。

またCFO・経営企画が集まるコミュニティをSNS上で1年かけてつくってきた布川氏。現在550名が参加するこのコミュニティでは、ログラスの顧客であるかないかに関わらず、経営企画、経営管理に関するコンテンツを提供し、コミュニティ内で情報を相互に発信できる環境を用意した。コミュニティで得た知見はプロダクトにも反映されているという。

布川氏は経営管理における予算策定の業務を「予算のロジックづくり、KPI設計」「各部門の予算収集」「会計ソフトとのデータ比較」「比較に基づく予算の見込み更新」の4つのフェイズに分類。「Loglassはこの全フェイズをカバーしている。またクラウドネイティブでモダンなUI/UXを初めから採用し、価格も安く提供しているため、既存の大手ERP製品やスタートアップ他社の予実管理ツールと比べても、優位性を持っている」と説明する。

「Excelをリプレイスするつもりはない。エンジニアが手元で書いたコードをGitHubに提出し、更新リクエストが送れるのと同様、Loglassでは入力フォーマットをExcelなどの表計算ソフト用に自動で発行でき、中のデータを更新してクラウド上に提出すると、そこで差分管理やデータの統合ができる仕組み。システムにすべてビルドインしてしまうと、KPI設定などで組みたい計算式が組めず、細かい部分でニーズが満たせない。クラウド上では統合・データ分析に特化することで、価値を感じてもらい、受け入れられているのではないか」(布川氏)

目指すのは「企業内データの断絶をなくすこと」。中期的には、経営管理SaaSに加えて、経営分析AI・BIの開発も検討している。また、SFAなど別のサービスとの連携も行いたいという。長期的にはIR・資金調達領域やPOSレジ連携による小売分野の開拓、グローバル進出や官公庁予算のGovTech領域への進出も視野にあると布川氏は述べている。直近で1500万円の売上を、1年以内に1億円突破させるところまでは見込んでいるとのこと。10年以内に時価総額2000億〜2500億円の企業価値を目指すと布川氏は語っていた。