新たな学校

次の記事

自宅のシステムをアップグレードしてくれる、最強のWi-Fi 6ホームネットワーク

編集部注:本稿を執筆したJoe Apprendi(ジョー・アプレンディ)氏はRevel Partners(レベルパートナーズ)の創設者兼ジェネラル・パートナーである。

COVID-19により高等教育に変化が起きている。しかし、これはCOVID-19に対処するための大学による単なる「遠隔授業への移行」にとどまらない。今起こっている変化は全体的、かつ変革的で、長い間待たれていたことである。これらの変化は採用、訓練、そして最終的には雇用者が企業のための人材をどう見い出すかにも及ぶだろう。この変化は高等教育の性質そのものをも変容させると考えられる。

職を得ようとする場合、COVID-19以前には、伝統的な教育ルートを経るのが普通だった。高校から大学へ、そして時には大学院へと進む。これらのほとんどがキャンパス環境で行われ、そこで学生は自分が誰であるかだけでなく、何をしたいのか、誰としたいのかを模索した。このルートの存在により、企業は特定の技能や文化的適合性など、将来の従業員となるべき人物にどのように手をかけ訓練するかを決定する確立された教育モデルに対応する必要があり、すべてを適正な人材を判断する取り組みの中で行う必要があった。

このモデルは年月の経過とともに肥大化し、それを支える教育業界は、2030年までに世界で10兆ドル(約1070兆円)規模になると予測されているが、この10年間でテクノロジー主導の変化に対しますます脆弱になっている。この変化が古い体制の教育業界を小売から物流、不動産に至るまで全般的に混乱させているのだ。

ニューヨーク大学スターンビジネススクールでマーケティングの教授を務めるScott Galloway(スコット・ギャロウェイ)氏は5月下旬CNNに対し「大学は報いを受けています」と語った。「私たちは1400%の値上げをしてきましたが、イノベーションを見れば…今の教室に入ってみればおわかりいただけると思いますが、その見た目や雰囲気、印象は40年前と大きく変化していないのです」。

ギャロウェイ氏はさらに4月に投稿したブログ記事の中で、COVID-19により大学間で淘汰が起こると予測した。小売業界における撤退は2019年には9500件であったが、2020年には1万5000件以上と大幅に増加した。これと同様、コロナウイルスの影響から立ち直ることができない大学が、数百とはいかないまでも数十の規模で出る可能性が高い。彼はまた過去数十年で初めて四年制大学への願書数が減少し始めその傾向は続くだろうと予測した。

ライブビデオコースマーケットプレイスのJolt Inc.(ジョルト)の共同創設者兼CEOであるRoei Deutsch(ロエイ・ドイチュ)氏はポッドキャスト「Coffee Break」での講演中に「高等教育世界への打撃は必然的に起こりました」と語った。「学生が得るものと支払うコストが釣り合わない、高等教育バブルが起きています。コロナウイルス禍でこのバブルの崩壊が始まっているのです」。

ウイルスは高等教育に必要とされていた変革を早める可能性がある一方、従来の高等教育に代わる別の選択肢を生み出すスタートアップにもチャンスを生み出すだろう。ただし、多くの他の分野でそうであるように、主にグローバル企業内でCOVID-19は急進的な変化を引き起こす力としてよりも、舞台裏で既に起きていた動きを加速する形で作用している。

過去10年に渡り大企業に様々なテクノロジーが急速に普及するにつれ、企業の人材開発(L&D)の重要性が増してきている。グローバル企業のeラーニング市場は、2022年までに年間平均13%の成長率で300億ドル(約3兆2000億円)まで成長すると推定されている。この成長の大部分は、実際に必要な技能と労働者の能力とを一致させる重要性が増したことによるものである。

人材開発で企業に主に利用されている製品は、学習体験プラットフォーム(LXP)や学習管理システム (LMS)である。これらは、従業員の学習活動を監視、追跡、管理するのに使用され、通常は、デジタル化されたオンラインカタログの形でサービスが提供される。学習用ソフトウェアは主に、よりパーソナライズされた学習体験を提供し、様々なソースから学習内容を組み合わせることでユーザーが新しい学習機会を発見できるように設計されている。またAIを使ってデスクトップアプリ、モバイル学習アプリなど、複数のデジタルタッチポイントに学習コンテンツを推奨および配信している。

重要なのは、まさにこれらのオンライン教育ツールが、COVID-19への対処法を探す多くの大学に採用され始めていることである。この事実がこれらのアプリ、ツール、プラットフォームへの考え方を変革するのに役立つだろう。これらのツールを既に採用していた企業は今、その可能性を再考しているところである。この先どうなるかを見通すのに多くの想像力は必要ない。

組織内の新しい、あるいは拡大された役割にふさわしい人材を継続的に育てるために訓練学校やLMSシステムを構築する代わりに、企業は今、採用プロセス(ファネル)の初期段階、つまり高等教育が始まる時点にターゲットを絞っている。COVID-19により大学生活が変容したことで、企業がそのファネルへどのように参加するかを再評価する可能性が開かれたのだ。グローバル企業が大学に匹敵する体験を提供する可能性が突然現実的なものになっている。

これらの既存の教育およびトレーニングプラットフォームを活用して、企業に特化したカリキュラムを作成することを想像してみよう。大学の閉鎖で職を離れた教授たちが、ギグワーク的な形でオンラインで授業を行うことができるだろう。彼らは企業のニーズに特化したカリキュラムをデザインする。

これらの企業主導の新たなオンライン大学システムは人々を学業成績や文化的調和の観点から精査し、誰を教育するか、そして究極的には誰を採用するかを決定する。そして、そのすべてで学生を直接彼ら自身のシステムで受け入れる。現在もこうした大学システムは存在している。例えば米国のNaval Academy (海軍士官学校)のようなシステムである。このシステムでは授業料が無料であるかわりに、学生は卒業後一定期間海軍で勤務する義務を負う。大学とグローバル企業が融合した一種の営利型ハイブリッドモデルが現れるかもしれないと考える人もいる。

ギャロウェイ氏は提案する。「MITとGoogleが共同でSTEMの2年間の学位を提供するということもありえます。10万人の学生が授業料10万ドル(約1070万円)(特別価格である)でMIT/Googleのコースを取れば、年間50億ドル(約5300億円)(2年のプログラムである)がもたらされます… これはMITとGoogleに匹敵するマージンです。Bocconi/Apple、Carnegie Mellon/Amazon、UCLA/Netflix、Berkeley/Microsoftなど…いろいろな組み合わせが考えられます」。

抜本的変革への準備が整っているのは高等教育だけではない。新型コロナウイルスの大流行でその全体規模が21%低減すると予測されている米国の人材派遣およびリクルート市場は、 運営方法の面で変化する可能性がある。企業はこれまでのように大学で採用活動を行ったり、これらの旧式なシステムから新入社員を特定するために必要なツールやプラットフォーム、そしてリソースを使用する必要がなくなるだろう。こうして彼らは自社のニーズを完璧に満たすよう教育された社員へのダイレクトなファネルを持つことになるのだ。これにより企業は社内で新たな利益を生み出すことができるだけでなく、費用のかさむ非効率的な社員探しのプロセス(今日の採用モデルのほとんどがそうである)を回避することができる。費用の節減もわずかなものではない。

米国労働省によると、採用に失敗した場合にかかるコストは、その従業員の初年度の収入の最大30%に達する可能性がある。Undercover Recruiter(アンダーカバー・リクルーター)は採用に失敗した場合、企業は、採用、報酬、保持に関連した費用24万ドル(約2570万円)を支払うことになると見ている。CareerBuilder(キャリア・ビルダー)によると、ある調査で、不適切な人物を採用したと認めた企業の74%が個々の採用の失敗に対し平均1万4900ドル(約1600万円)の損失を出していることが明らかになった。

また学生側には付随的なメリットがある。高等教育にかかる費用はここ何十年にも渡って急騰しており、学生の負債は許容できないレベルに達しているにもかかわらず、学位をとったことで得られる収入は減少しているのだ。転換点は間近に迫っている:ある研究では、卒業生数が増えるにつれて、大学の学位の価値が下がっていることが示された。サハラ以南のアフリカ (ここでは学位は比較的希少である) では、学位を取ることで収入が20%増加する。スカンジナビア (成人の40%が学位を持つ) では、このパーセンテージは9%まで低下する。

これらの新たな企業固有の大学システムであれば、教育へ投じたすべての資金が実際に活かされ目に見えるROIが得られる。不安定な経済状況においては、卒業と同時によい収入が得られる特定の仕事が保証されていることは、極めて重要である。大学の授業料が法外なものになるに連れ、大学側はその額を正当化するのが難しくなるだろう。Google、Twitter、Microsoftへ直接人材を送り込むオンライン教育システムが併存する場合は特にである。そうしたオンライン教育が、多くの学生にとって魅力的であることが証明される可能性が高い。

COVID-19の高等教育に関連した二次的影響はまだはっきりしていないが、こうではないかと想定される状況が現れ始めている。誰を対象にいつどのように採用活動を行うのか、変革が必要な可能性がある。企業からのデジタル教育やデジタルトレーニングの要求が着実に増加する中、これらの要求をサポートしてきた急成長中の業界が、一夜にして変化を遂げ飛躍的に成長する可能性がある。学生は負債を半額に抑え、雇用に向けた明確な道筋を持てるようになる。最終的にどうなるにしても、待ち構えている変化は大学側にとって決して愉快なものではない。

「私は、大学は大変な危険にさらされており、COVID-19による打撃を受けると考えています」とギャロウェイ氏はCNNに対し語った。「10万ドル(約1070万円)を請求し90ポイント以上のマージンを取っている業界が他にあるか考えてみてください。希少な癌の治療薬を扱う製薬会社以外に、それほどのマージンが得られる製品が他にあるでしょうか?率直に言って、私たちはこれをやってきました」。

ある種の変化が起こるのは確実と思われるが、教育におけるパラダイムがシフトすることが良いことかどうかはそれほど確実ではない。ソフトウェアやテクノロジーによって破壊された業界の多くと同じく、テクノロジーによって市場効率が促進される中、莫大な価値が何百万という消費者に流れ込むだろう。消滅、あるいは変容する仕事がある一方、物事を進めていくための新しいやり方に適った仕事が新たに生み出されるだろう。より多くの富と力がFAANGの元に流れ込む状況で、主要なグローバル企業およびテクノロジー企業はこの変革から最大の利益を得る立場にある。

キャンパスベースの教養教育の特徴である知的発見、文化的評価、個人の成長といったものが、狭く定義された職業技能や企業効率の追求に置き換わるに連れ、高等教育における優先順位も再形成される。グローバル企業の高等教育への進出は、我々の人々に対する教育、採用、訓練の仕方を変えるだけでなく、高等教育についての根本的な捉え方や評価の仕方も変えることになるだろう。

関連記事:勃興するEdTech

カテゴリー:EdTech

タグ:コラム 教育

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)