マイクロソフトがTikTok買収に対する米政府への「支払い」と引き換えに要求すべきこと

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これは狂気のニュースの1つである。米国時間8月3日、ドナルド・トランプ大統領はメディア向けのイベントで、米国政府がMicrosoft(マイクロソフト)とTikTokの水面下での取引を承認するには「その買収額のかなりの部分が米政府に入ってこなければならないだろう」と発言した。

企業が契約書に署名してもらうために米国政府に賄賂を贈ったりはしないので、実際には実現不可能に近いと思われるが、これをあえて額面通りに受け止めてみよう。マイクロソフトは支払うべきか。支払うとしたら、米国政府との交渉で何を要求すべきか。

まず、いくつかの背景を説明しておく。TikTokの親会社であるByteDanceは、1000億ドル(約10兆6000億円)以上の企業価値がある(CNBC記事)。ByteDanceは、TikTokの中国版で非常に人気の高い姉妹アプリ「Douyin」や、大成功を収めているニュースリーダーの「Toutiao」など一連の著名アプリを所有しているため、TikTokの評価額を単独で推測するのは難しい。取引規制上の混乱や、Facebookなどの資金力のある企業による買収の多くは、独占禁止法違反の疑いがあるという事実が、さらに事態をややこしくしている。

実際の買収価格が数百億ドルではないにしても、少なくとも100億ドル(約1兆600億円)だと仮定すると、同社は政府との交渉をどのように考えるべきだろうか。

最も重要な目的は、マイクロソフトの買収後に規制上の頭痛の種を減らすことにある。TikTokには、規制が非常に敏感な分野である、十代の若者をも巻き込んだプライバシー問題が取り沙汰されている(未訳記事)。Facebookがプライバシーの問題に直面した際は、最終的に米連邦取引委員会(FTC)との50億ドル(約5300億円)の和解金を支払うことで昨年合意(FTCプレスリリース)し、すべての懸念事案に答えを出した。また、コンプライアンスを確保するために、監視メカニズムだけでなく、一連の制限事項にも合意している。なおTikTok(旧Musical.ly)は昨年、実際にFTCのプライバシーに関する570万ドル(約6億円)の和解に合意(未訳記事)している。

プライバシーに加えて、財務省からの輸出ライセンス問題、米議会からの中国製アプリのデータ保護に関する懸念、司法省からの反トラスト問題などが出る可能性もある。

この取り引きは、いまがまとめの時期だ。マイクロソフトがTikTok事業を買収する前に、プライバシー、貿易、独占禁止法規制に関するすべての請求に対する免責と引き換えに、最終的な買収価格に応じておそらく数十億ドルという高額な金額を米国政府に「和解金」として提示する必要があるだろう。おそらくマイクロソフトは、買収後180日間でプライバシー問題をクリアし、データを米国の独自のAzureクラウドに移動させ、TikTokが過去数カ月で導入しているペアレンタルコントロール機能(未訳記事)よりもさらに優れた制御機能を実装することも計画しているだろう。

これは悪い選択肢ではないはずだ。なぜなら、マイクロソフトの長期的な負債を大幅に制限することができるからだ。また、買収者が将来の訴訟で多額の費用を負担しないように、買収価格を全額前払いすることはない大規模なM&A案件で発生する典型的なエスクロー(第三者預託)とホールドバック(一部留保)も回避できる。

このような問題に大統領自身が直接的かつ不明確な方法で関与するのは恐ろしいことだ。自らが扉を開けてしまったいまとなっては、実はそれほど悪い方向には進んでいないのかもしれない。トランプ大統領には省庁間を調整して、すべての政府関係者を集め「罰金」と引き換えに免責レベルを受け入れる力があるのだ。

ただし、和解によってすべての問題を解決することはできない。TikTokは米国の他のインターネットアプリと同様に、連邦法だけでなく、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のようなプライバシーに関する州法にも従う必要がある。連邦政府との和解により、関連する州法に抵触する可能性があるのだ。さらに、選挙シーズンの真っ只中に多額の支払いに同意することは、議席の両サイドでも議論を呼ぶことになるかもしれない。

にもかかわらず、この取引は決して典型的なものではなく、典型的なM&Aのプロセスがあるとは考えるべきではないだろう。路上強盗のような奇妙な契約形態について、連邦政府の関与を勧める弁護士はほとんどいないと思われるが、今回の交渉は通行料を払って何らかの法的保護を得て先に進むだけの正当な理由はある。

画像クレジット:NICHOLAS KAMM/AFP / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)