神戸市が新型コロナ対策として遠隔ICUシステムを導入、スタートアップのT-ICUと連携

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神戸市は8月11日、新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れている市内の医療機関に「遠隔ICUシステム」を導入することを発表した。遠隔地からネットワークを通じて集中治療専門医による診療支援が可能にすることで、重症化の早期発見など感染症患者への適切な医療の提供と市内の医療提供体制の充実を図るのが狙いだ。

現在、神戸市内の医療機関のすべてで新型コロナウイルスに感染した患者を受け入れられる態勢が整っているわけではない。一部の医療機関が、軽症・中等症患者向け病床と、重症者向け病床を確保して懸命に治療に当たっているという状態だ。しかし現状では、中等症患者が重症化するリスクを考慮して、各医療機関が重症者病床を設けている中央市民病院に患者を早期に転送することが多くなっている。これにより最後の砦である中央市民病院の業務が逼迫するという悪循環が起きる恐れがある。

一方で市内すべての医療機関が感染症の専門ではないため、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関であっても、重症化しつつある患者の見極めが難しいケースもあり、結果的に治療が遅れてしまうリスクもある。なお、神戸市ではPCR検査の拡充を進めており「陽性件数のピーク時と比べて大幅に検査数を増やした」と神戸市長の久元喜造氏は説明する。

神戸市はこういった問題を解決するため、遠隔ICUシステムを導入。専門医によるリモート診断によって、軽症、中等症、重症を見極め、適切な処置が受けられる医療機関に患者を振り分けることで、重症者向け病床を持つ中央市民病院はもちろん、軽症・中等症患者向け病床を持つ市中の医療機関が逼迫しないように調整するのが狙いだ。導入を要請する病院は20病院。内訳は、新型コロナウイルス対策の指定医療機関が13病院、新型コロナウイルス対策を施した設備を用意した7病院。

遠隔医療には、神戸市拠点のスタートアップであるT-ICUが開発したシステムを利用。市内の医療機関に導入するこで、T-ICUに登録している集中治療専門医が待機するサポートセンターとネットワークでつなぎ、生体情報モニター、電子カルテなどの情報を共有してテレビ会議にてコンサルテーションを行うという。もちろん、感染症指定医療機関である神戸市立医療センター中央市民病院が、T-ICUに知見を共有し、治療方針などの助言も行う。中央市民病院とT-ICUとの情報共有は週1回程度のビデオ会議を想定しているとのこと。ビデオ会議にはMicrosoft Teamsを利用する。なお、心電図モニターや電子カルテなど院内PCに保存されているデータは転送せず、画面共有というかたちでT-ICUと共有する。

実際にT-ICUを使うには、医療機関側(二次救急医療機関)に専用のノートPCなどを導入するだけでいい。T-ICUの導入にかかる初期費用100万円と1カ月の運用経費15万円は神戸市が負担する。

T-ICUは、医師である中西智之氏が2017年に創業したスタートアップ。心臓血管外科に6年、麻酔科に5年、救急・集中治療に4年など従事した経験から遠隔医療の必要性を感じ、T-ICUのシステムを開発した。現在、集中医療専門医33名、認定看護師15名が在籍。関西を中心に東は千葉県の医療機関まで現在21病院と契約しており、相談件数は約400件とのこと。中西氏よると「神戸市だけでなく、ほかの自治体との話も進めている」とのこと。

導入スケジュールは以下のとおり。

  • 2020年4月〜:中央市民病院と西市民病院、および西神戸医療センターの間で試験導入し、有用性を検証
  • 0220年8月:市内医療機関での導入先調整
  • 2020年9月:システム設置、運用開始
  • 2021年3月末:事業終了予定(新型コロナウイルス感染症の状況により延長の必要性を検討)