VR体験施設はコロナ禍で息の根を完全に止められたのか

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ここ数ヶ月景気の後退傾向が続く中、コロナ禍により息の根を止められるかに見えたスタートアップが大打撃を克服し、再び飛翔しようとしている。しかしすべての分野のスタートアップがこのような幸運に恵まれたわけではない。特に、最近は多くのロケーションベースのバーチャルリアリティ(VR)スタートアップが操業を停止するのを見てきた。

新型コロナが世界的に流行する以前のVR体験施設は完全に崩壊していたわけではなかった。この小さな業界はその時点で既に、VR市場の最後の賭け的存在であった。VR市場は、消費者が自宅で自分のヘッドセットを付けてバーチャルリアリティを楽しむという状況へいざなうことに失敗し、娯楽におけるVRの役割を一般大衆に認知してもらう方法として体験施設に望みを託していたのだ。消費者の関心の冷え込みと、体験を通じてユーザーをすばやく動かすためのスループットの問題が、VR体験施設が直面する最大の課題の1つであった。

今週Apple(アップル)は、Protocol(プロトコル)からの報告に続き、VRスタートアップであるSpaces(スペーシズ)の買収を発表した。Spacesはコロナ禍の影響で対面式体験施設を閉鎖せざるをえず、ビデオチャットソフトウェア向けのバーチャル環境作りに基軸を移そうと試みていた。Appleに買収されたということは、事業が失敗に終わったわけではないことを示すものの、AppleがSpacesの体験施設事業を復活させることに関心を持っている可能性は低い。

今月始め、Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)誌は、Sandbox VR(サンドボックス VR) の米国子会社が破産を申告したことを報じた。Sandbox VRは複数の業界を同時に立て直すという建前でかなりの資金を調達してきた。これは、減退傾向にあるモールの経営者がこうしたスタートアップに資金を提供し、若い世代の消費者を引き込むための目玉商品として実店舗を設ける一方で、ミックスドリアリティ(MR)のソーシャルメディアビデオを活用して、彼らのVR製品を口コミで成長させる、という構想であった。

7月、UploadVR(アップロードVR)はDisney(ディズニー)がVRスタートアップであるThe Void(ザ・ボイド)のDowntown Disney(ダウンタウン・ディズニー)でのリースを終了したことを示唆する文書を発見した。このリースの終了は、コロナ禍によりそのロケーションが閉鎖された数か月後のことであった。

これらの投資がなされた時点では、現在のパンデミック(世界的流行)を予測するのは不可能であった。しかしVR体験施設は既に確固たる投資対象には程遠いということを示していた。IMAX(アイマックス)はVR事業に巨額の投資を行っていたが、2018年後半には、最後に残っていた7つのVR体験施設を閉鎖した。

対面式のエンターテインメントが今後どのような形を取っていくのか不透明な現在、問題は、VR体験施設に今後復活のチャンスはあるのかどうか、である。

実際のところ、これらのスタートアップの多くは、複数の分野で現状に逆らいつつ、21世紀のデジタルエンターテインメントのあり方を真剣に変えようと、最初から気の遠くなるような試みを行っていた。

巨大映画館チェーンが、パンデミックが自らの業界にどのような長期的な影響を与えるか予測するのに苦労している現在、こうしたスタートアップの多くが今後に希望を見いだせず操業を停止するか、売却されていっているのは驚くには当たらない。投資家はこの分野の新たな取り組みに関与することに消極的であり、新型コロナにより、現在の参画者は コロナ以前のビジネスモデルとは劇的に異なる方向へと向かわされることになると考えられる(ただし1つ注意したいのは、米国のVR体験施設市場は明らかに中国や日本のそれとは異っているという点である。そういった国においてはVR体験施設は人気のあるゲーム文化にぴったりとはまっているように見える)。

VR体験施設が生き残る、あるいは生まれ変わるとしたら、それは消費者行動やVRの導入に非常に大きな変化が生じた場合だろう。

VR業界は難しい状況にある。米国では、実質的な形でその分野を存続させているのは基本的にFacebook(フェイスブック)だけだが、一方で、同社はそのテクノロジーの未来を独自の条件で構築しようとする取り組みに邁進しているようである。この夏の始め頃、Facebookは大ヒット商品であるBeat Saber(ビート・セイバー)を8月までに恒久的にゲームセンターから引き上げると発表した。2014年にOculus(オキュラス)を買収して以来、FacebookがVR事業に取り組む中で周囲に生じたエコシステムは実質的に後退しており、同社は再び孤立した状況に置かれている。

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カテゴリー:VR / AR /MR

タグ:コラム 新型コロナウイルス

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(翻訳:Dragonfly)