ZeroのSR/Sはスポーツバイクとツーリングバイクの一台二役をこなせる電動バイク

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Zero Motorcyclesが今年初めに発表したSR/Sは、スポーツバイクとツーリングバイク両方の性能属性と特徴を備えたフル電動バイクだ。この記事では、SR/Sならではのメリットとデメリットをガソリンバイクと比較しながら紹介する。

SR/Sは、そのメーカーであるゼロの事業ミッションにも貢献するモデルだ。カリフォルニア州を拠点とするEVバイクメーカーである同社は、電動バイクの量販化を目指して、すでに1億3700万ドル(約144億4000万円、Crunchbase調べ)を調達している。

前身モデルSR/FとSR/Sの違い

TechCrunchは今回、SR/Sの新車を持ち帰って徹底的に試乗する機会を得た。TechCrunchは昨年もかなりの時間を費やして、SR/Sの前身である2019年発売のSR/Fネイキッドバイクを試乗した。SR/Sは一見すると、SR/Fにフルカウルを取り付けただけのように見えるが、SR/Sならではの特徴は他にもある。

SR/SとSR/Fには多くの共通点がある。トレリス構造のフレーム、車輪・タイヤ、ドライブトレイン、バッテリー、モーター、充電システム、オペレーティングシステムは両モデルで同じものが採用されている。しかしSR/Sには、フルカウルに加えて、いくつかの細かな調整が施されており、それが乗り心地を著しく改善している。その点について、これから詳しく説明していく。

まず、一般的な仕様面では、SR/SもSR/Fと同じく、最高速度は時速124マイル(約200キロメートル)、トルクは140ft-lb(約19.4Kgf-m)、充電時間は60分で95%、オプションで6キロワットのプレミアム充電器を選べる(アップグレード費用は2000ドル(約21万2000円))。

ゼロのSR/SとSR/FはどちらもIoTバイクであるため、エンジン出力や操縦性など、全体的なパフォーマンスを、デジタルライディングモードやモバイルアプリを通じて管理できる。また、どちらのモデルにも、コーナリング時のABSやトラクションなどをコントロールするBosch(ボッシュ)製のスタビリティコントローラーが搭載されている。

フルカウル以外でSR/SがSR/Fと大きく違う点は、フットペグが下がり、バーの位置が上がったため、より楽に乗れる(アップライトの)ライディングポジションになっていることと、空力性能の向上により高速走行時(ハイウェイレンジ)の航続距離が13%伸びたことだ(ゼロの発表に基づく)。シリコンバレーから山をひとつ隔てたスコッツバレーに本社を構えるゼロの広報担当者によると、SR/Sではサスペンションのプリセットをフルカウル向けにカスタマイズしたという。SR/Fの車体重量は485ポンド(約220キログラム)だが、SR/Sの車体重量はフルカウルを装着した分、20ポンド(約9キログラム)ほど重くなっている。

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価格は、SR/Sのベースモデルが1万9995ドル(約211万7000円)で、SR/Fの1万9495ドル(約205万5000円)をわずかに上回る。また、SR/Sのプレミアムモデル(大容量バッテリー搭載)は2万1995ドル(約231万8000円)となっている。

SR/Sのある暮らし

筆者はSR/Fの見た目も性能も非常に気に入った。それと同時に、(少なくとも筆者の好みに基づいて判断する限り)SR/Sは他よりも優れた電気バイクだと感じた。SR/Sではライディングポジションが改善されて、より操縦・走行しやすくなったため、長距離のツーリングがさらに快適になり、カーブが多い道路ではさらにスムーズに走行できるようになった。

SR/Fと同様に、そしてこれは高性能の電動バイクの特性でもあるが、ゼロのSR/Sはトルクが大きくてアクセルが軽く、騒音やオイル臭は発しない。ガソリンバイクよりも可動部品の数が少なく、クラッチもシフトもないため、電動バイクのパワーデリバリーは内燃機関バイクより強力で安定している。スロットルを握って回せばすぐに発進できる。

SR/Sではカーブの走行方法に合わせて回生ブレーキを調整、適応させることが可能だ。回生ブレーキは電気エネルギーをバッテリーパックに戻すだけでなく、スロットルを閉じるときにSR/Sのモーターをどの程度減速させるかを調整できる。コツをつかむまで少し時間がかかるが、マスターすれば、機械的なブレーキをほとんど、またはまったく使わずに、スロットルのオン・オフだけで、ガソリンバイクよりもスムーズにカーブを走行できるようになる。

画像クレジット:Jake Bright

航続距離については、パワー出力を最小、回生ブレーキを最大に設定した「エコ」モードを使い、あまりスピードを出せない市街地のみで走れば、ゼロが宣伝している「最大航続距離161マイル(約259キロメートル)」を達成できる可能性は高そうだ。しかし、そんな走行はかなり退屈そうなので、自分では試さなかった。SR/Sと過ごした数か月の間、筆者は、ちょっとした外出には「エコ」モード、田舎道を飛ばすときには「スポーツ」モード、というように異なる走行モードを組み合わせることにより、平均して100マイル(約160キロメートル)程度の距離を充電なしで走ることができた。充電時間は、バッテリー残量にもよるが、6キロワットのレベル2充電器で1時間から1時間20分かかった。

SR/Sならではの長所と短所についてだが、確かにSR/Sにはいくつか弱点もある。SR/Fと同じく、SR/Sのフロントブレーキ(4ピストン、ツインキャリパー)は効きが強いのだが、J.Juan(ホタ・ホアン)製のリアブレーキは効きが弱いように感じた。また、車体のカラーも、現在のグレーとダークブルーだけでなく、SR/Sの滑らかな曲線美をもっと目立たせるようなカラーを展開してもよかったのではないかと思う。ゼロのメインディーラーの1つであるHollywood Electrics(ハリウッド・エレクトリクス)もどうやら筆者と同じ意見のようで、SR/Sの車体カラーを明るいホワイトまたはレッドにカスタマイズするオプションを提供し始めた。

筆者がSR/Sについて非常に気に入った点は、フルカウルの装着、ペグやバーの調整、サスペンションの設定により、性能が向上し、機能が増え、乗り心地が改善されたことだ。ニューヨーク州とコネティカット州の各地で、通勤に使ったり、脇道を高速で飛ばしたり、ハイウェイで遠出したりと、思いつく限りの走行方法をSR/Sで試してみた。SR/Sは電動バイクの良さをさらに進化させたモデルだと思う。フルカウルにより空気抵抗が大幅に低減されたため、ハイウェイを時速80~90マイル(約130~140キロメートル)で走っても余裕があり、エンジンの騒音もない。従来のように風に挑んで走り抜ける感じはせず、むしろ、まるで風に乗って静かに流れていくような感覚で走れる。

SR/Sは、週末にスポーツバイクとして楽しむのに十分なパワーと性能を備えているだけでなく、EVスポーツツーリングも楽しめるように快適なライディングポジションを実現し、リア部分に荷物を積める設計になっている。しかし、電動バイクならではのメリットだけでなく、特に航続距離と充電に関して、いくつか妥協しなければならない点や、利便性の低い点がある。大抵のガソリンバイクやスポーツバイクは、タンクを満タンにしておけば200マイル(約320キロメートル)程度は余裕で走行でき、給油も数分で完了する。SR/Sの航続距離はその約半分しかなく、充電ステーションを探し回らなければならないし、充電が完了されるまで1時間あまり手持ちぶさたの状態になる。確かに、電動バイクならではの優れた性能属性や特徴もあるが、それでも内燃機関バイクと比べると不便な点も依然として存在する。

SR/Sはゼロの競争力を強化するモデル

ゼロの最新エントリーとなるSR/FとSR/Sは、スタートアップ企業がオートバイ業界の電動化を進める時期に投入された。

2020年にはHarley-Davidson(ハーレーダビッドソン)がガソリンバイクの大型メーカーとしては初めて、米国で公道を走れる電動バイクLiveWire(ライブワイヤー)を2万9000ドル(約306万円)で発売した。また、イタリアのEnergica(エネジーカ)は高性能電動バイクの販路を米国で拡大している。カナダのスタートアップDamon Motors(デイモン・モーターズ)も今年、最高速度が時速200マイル(約320キロメートル)、価格2万4000ドル(約253万円)の新型電動バイクHypersport(ハイパースポート)を発表した。Hypersportは独自の安全技術によって死角を検知する機能を備え、人間工学技術による調整可能なライディングポジションを実現している。

画像クレジット:Jake Bright

これらの新型モデルすべてが売れるだけの十分な需要があるかどうか、まだ確証はない。新型コロナウイルス感染症によって世界経済が不景気に見舞われている今の状況ではなおさらそう言える。しかし、数多くの電動バイクメーカーがひしめく中、ゼロはSR/Sによって競合他社より優位なポジションに立つことができている。既存のプラットフォームを改善することにより、ゼロは、2つの新しいクラスを1つのモデルに集約させ、電動スポーツバイクと電動ツーリングバイクを一般市場に届けることに成功した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:レビュー電動バイクZero Motorcycles

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(翻訳:Dragonfly)