ポッドキャスト広告におけるビジネスインテリジェンスの問題

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著者紹介:クリスティーナ・ルビーノ氏は、Right Side Up(ライト・サイド・アップ)社のマーケティングエグゼクティブとして、オフラインにおけるグロースマーケティング活動を主導している。

グラント・ドゥランド氏は、現在、グロースマーケティングのリーダーとして、ライト・サイド・アップ社においてポッドキャストおよびオフライン広告のコンサルティングを行っている。

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ポッドキャストの利用とエンゲージメントに関する統計情報の収集と公開には、かなり重大な問題が数多く存在している。このメディアの分散型特性のために広告技術がいまだに発展途上であることも相まって、ユーザーの利用状況、広告の露出と効果を把握することが難しくなっている。また、 マーケターがこれらのチャネルで直面する課題についても、誤報や誤解が数多く見られる。

こうした問題はどれも新規および追加の広告投資を妨げ、チャネルにおける投資関係者全員のビジネスチャンスを奪うことになるため、クリエイターやパブリッシャー、ネットワーク関係者にとって広告収入の成長を阻害するものとなっている。業界全体に求められていることは、無料の統合レポートソリューションや新しいビジネスベンチャーを活用してより包括的なデータの収集と公開を行い、最終的にそれをポッドキャスト広告の成長につなげることだ。

ポッドキャストの配信、利用、コンバージョンに関する分析については、常に課題が指摘されてきた。ある業界では、2021年の広告費が10億ドル(約1050億円)を超えると推定されているが、驚くべきことにその広告にはRSSが使用されるという。確かに安定した技術ではあるが、数十年前の、文字通り大変シンプルな配信技術である。このテクノロジーにはデータフローが単方向であるという特性がある。公開が容易であるため普及率は高く、クリエイターにとってもコンテンツを共有しやすいメディアではあるが、広告主にとってはパフォーマンスを測定して広告費の投資先を決定するのが難しいという欠点がある。さらに、このメディアに特有の、クリエイター、サーバー、配信先やエンドポイントが分散しているという状況が、この問題をさらに複雑にしている。

クリエイター側では、Art19(アート19)Megaphone(メガフォン)Simplecast(シンプルキャスト)などといったホスト統合サービスの増加や、IABの影響を受け、ポッドキャストの配信分析の正規化が始まっている。一方、広告主側では、消費やコンバージョンの分析がいまだ大幅に遅れている状況にある。我々のようなパフォーマンス重視のマーケターや、我々がサポートするような成長著しいテクノロジー企業にとって、広告費の投資利益率を測定することは必須である。

ポッドキャストはビジネスインテリジェンスの点で他のメディアチャネルよりも遅れているため、消費者へのリーチ力や購入行動に与える影響が大きい割に、十分な投資がなされていない。このことは、今年の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、ポッドキャスト広告に非常に関心を持っている広告主や、すでに多額の投資を行っている広告主から、「新型コロナウイルス感染症とそれに伴うライフスタイルの変化により、ポッドキャストの利用状況も影響を受けているのか。受けているとすればどのような影響か」という非常に基本的な質問が出されたことからも分かる。

分散型ポッドキャストの広告データにおける課題

信頼できるパートナー企業に、それぞれの番組の現状について取材した。Acast(エーキャスト)でセールスおよびブランドパートナーシップの米国ディレクターを務めるNick Southwell-Keely(ニック・サウスウェル・キーリー)氏によると、「パンデミックにもかかわらず、ポッドキャストの再生回数はこれまでで最多となっている。[7月]には、1万件を超えるポッドキャストエピソードを含むポートフォリオ全体で、再生回数がエーキャスト史上最高の日が発生した」という。実際、他のほとんどのパートナー企業から同様の情報が得られた。しかし、このようなデータは集計されていないため、1社だけへの取材や1本のレポートだけで全体像を把握することはできなかった。さらに重要なこととして、それぞれのパートナー企業から得られたような情報を証明するサードパーティーの見解も発表されていないのだ。

広告のパブリッシャー、代理店、関連企業からは、質問への回答が多数寄せられた。それにもかかわらず、数か月経った今でさえ、何かが生じたのか、生じたとすれば実際にはどのようなことか、それは現在も続いているのかといった問いに対し、チャネル全体の一元的かつ本質的な情報は得られていない。むしろ、マイクロトレンドを特定してそこに資金を供給できるよう、引き続きさまざまなパートナー企業に対する調査を行っている。このような現状は、有料検索メディアや有料ソーシャルメディア、「従来の」接続型メディア(TV、CTV/OTTなど)といったネイティブなデジタルチャネルとは対照的だ。そのようなチャネルでは、メディアに投資する際の参考となる統合レポートをマーケターに提供しているためだ。

新型コロナウイルス感染症の流行により露呈したポッドキャストメディアの不透明な挙動は、分散型の(あるいは、存在しない)世界的な調査ベンダー/企業が直面している課題や、広告主の収益が受けている可能性がある影響に関する最近のケーススタディの1つにすぎない。分かりやすい例を挙げよう。ある広告主は、ダウンロードに関するレポートを取得できず、投資の効果が得られないことを心配し、配信不足を恐れるあまり、定額料金単位の広告をキャンセルしたため、収益増加のチャンスを逃す結果となる。広告業界にとって、ポッドキャストの広告費が予測額を超えることよりも、このような基本的な欠点について説明することの方が重要と言えるだろう。

投資の効果が得られないことを心配する広告主は、配信不足を恐れるあまり、広告をキャンセルし、収益増加のチャンスを逃してしまうかもしれない。

指標やインテリジェンスが不明確なポッドキャスト広告に希望があるとすれば、それは優秀なグロースマーケターたちがこの新しいメディアを採用し、それを最大限に活用してパーソナライズした広告を使ってコンバージョンを増やそうとしていることである。それらの「ベテランたち」は、需要と料金がデータとともに増大する広告業界において、今のところ比較的目立たない存在であるポッドキャスト広告を巧みに活用している。

Babbel(バベル)でオフライングロースマーケティングのシニアマネージャーを務めているAriana Martin(アリアナ・マーティン)氏は、次のように述べている。「一方、パーソナリティーによる読み上げ広告を使ったポッドキャストマーケティングは、パーソナリティーの技量に依存するという側面もあり、時代やポッドキャストの内容によって効果が変化する可能性がある。このような要素が関係するため、ポッドキャストマーケティングがデータのみで単純に判断できるものになるとは言い切れない。ポッドキャストのデータは限られているという点を受け入れた上で、例えば、ポッドキャスト[広告]による売上を[アンケート調査]で特定する[など]、結果を判断するための基準があるのであれば、ポッドキャストは非常に有用だと言える」。

では、革新的ではあるものの、少数のブランドだけが利用している秘密のチャネルのようなポッドキャスト広告が、業種や業界全体に普及するために必要なものは何だろうか。

ここからは、ポッドキャスト関連のデータが普遍的ではないという問題と、その問題が広告主やパブリッシャー、サードパーティーの調査/追跡組織、そして広い意味ではポッドキャストのエコシステムにどのように損失となるかについて説明しよう。また、ポッドキャスト広告の利用率を増やしていくためのステップや、業界の今後の展望についても概説していく。

ポッドキャストの測定に関連した根強い誤解

1. ダウンロードの標準化

多くの記事では、注目を集めているこの成長中のチャネルが、より確立されたメディアタイプと比べて広告収入の点でどれほど遅れているかについて、正規化されていない「リスナー」数や「ダウンロード」数を根拠にしようとしている。ライト・サイド・アップ社は、直接の広告主によって実行されるスケーリング済みプログラムのほとんどをサポートしており、DR購入力においては業界トップ3に入っているが、把握している限りでは、ほとんどのパブリッシャーはIAB Podcast Measurement Technical Guidelines(IABポッドキャスト測定テクニカルガイドライン)バージョン2.0を採用している。

さまざまなネットワークや番組において、CPM計算の基礎成分となる変数、つまり非標準的な「ダウンロード」を測定する際にこのガイドラインを使用できるため、同じ基準による比較が可能となった。このガイドラインが広く採用される前は、あるパブリッシャーが言う「ダウンロード」と別のパブリッシャーが言う「ダウンロード」が同じものかどうかを判断できなかったため、特定のCPMを使ってパフォーマンスマーケティングの成果を予測することが困難だったのである。

ただし、Chartable(チャータブル)のCEOであるDave Zohrob(デイブ・ゾロブ)が指摘しているように、IAB 2.0ガイドラインはユニークユーザーの識別に関する問題を完全に解決しているわけではない。「ある種の匿名化されたユーザー識別子を使用してリスナーの規模を適切に計算することが望まれる。IABガイドラインでは、手元のデータに基づく概算が提供されるが、それぞれのIPまたはユーザーとエージェントの組み合わせが表す実際のリスナー数を知ることができれば、大変有用だろう」。

2. 広告配信の証明

多くの記事で成長阻害の原因として指摘されている2つ目のビジネスインテリジェンスの問題は、「配信証明」がないことである。広告のインプレッションを確認できず、チャネルに投稿ログがないため、ポッドキャストの広告主がスポットの実行を確認するためには、ポッドキャスト広告そのものの「エアチェック」(録音された音声の確認)を行う必要がある。

昔からポッドキャストを使っている広告主は、未熟なスタッフからなるフルタイムのチームから電話やメールで面倒なエアチェックを求められたことや、時にはスポットの実行確認に1週間以上もかかったことを記憶している。このように正確な支出レポートを提供するのに時間がかかったため、パフォーマンスを重視するマーケターの迅速な要望に応えられず、ポッドキャストは遅く、柔軟性がなく、融通が利かないメディアタイプであるという印象を与える結果となった。

エアチェックの収集が体系的に行われるようになったことは、費用の検証だけでなく、創造的なコンプライアンスと最適化という点でも、ポッドキャスト広告への信頼を高める出来事であった。興味深いことに、これらのサービスを提供している企業が主に行っているのは実際には別のビジネスであり、ほとんどの場合、この機能は別の開発過程における副産物として誕生している。例えば、我々の良きパートナーであるMagellan AI(マゼランAI)は、本来、優秀なインテリジェンスプラットフォームであるが、広告主にとってエアチェックが問題となっていることに気付き、このサービスも提供するようになった。また、AI企業のVeritone(ベリトーン)は、エアチェックサービスを同社の広告代理店事業、Veritone One(ベリトーン・ワン)に関連付けて提供している。さらに、Podsights(ポッドサイツ)は、ピクセルベースのアトリビューションモデリングソリューションである。

3. 競合分析

最後に、競合分析とメディアリサーチは未解決の課題となっている。マゼランAIとポッドサイツは、業界活動を示す有料および無料のさまざまなレポートを提供している。このようなレポートでは、関連のあるポッドキャストの広告活動について、番組、広告主、カテゴリなどを検索でき、全体像とは言えないが、ある程度の方向性を見極めることができる。完璧ではないが、ポッドキャストに参加するかどうかを決定する際に、業界を垣間見て検討するには十分なリソースだと言えるだろう。

ポッドサイツの創業者、Sean Creeley(ショーン・クリーリー)氏は、適切にも次のように指摘している。「ポッドキャストを推進したいという思いから、ポッドサイツでは調査データ、分析、投稿などをすべて無料で提供している。DIYの広告主としてポッドキャスティングを採用する [ブランド]には、実に大変な作業が求められる。このような調査結果を見れば、少なくとも同じ分野の企業が何をしているのか理解できるだろう」。

パブリッシャーにとって役立つ非技術的なツールもある。Wonder Media Network(ワンダー・メディア・ネットワーク)の共同創業者であるShira Atkins(シーラ・アトキンス)に、ポッドキャストに関する調査をどのように行っているか尋ねたところ、驚くには当たらないが、非常に斬新な答えが返ってきた。「正直に言うと、私が行っている『調査』とは、本当に有能でポッドキャストを愛用している営業担当者の知人3~5人にテキストメッセージを送ったり電話をかけたりすることだ。私が高校生の時にラジオの営業をしていた人たち、ポッドキャストの複雑さを分かっている人たちは、パブリッシャーと広告主のどちらにも役立つキャンペーンをうまく展開している。異なる業界の在庫を追跡して、どのくらい売れているかを追跡する方法があればいいと思う。はっきりしているが、ポッドキャストで成功するための良い方法は、トップクラスのパブリッシャーの番組のサンプルを聞いて、どのように販売しているか、どのような広告を流しているかを体感することだ」。

ポッドキャスト広告の問題は、ダウンロードの標準化、支出の検証、競合調査などによって解決されているとはいえ、チャネルには克服すべきハードルがまだ残っている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:広告業界 ポッドキャスト

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(翻訳:Dragonfly)