新型コロナで悪化するテクノロジー依存:脱するために今できること

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新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により、アメリカにおけるテクノロジー依存が加速した。依存によって多くの人が悲しみや不安にかられたり、やる気を失っている

Facebook(フェイスブック)やTikTok(ティックトック)、 Snapchat(スナップチャット)などの企業では、我々が彼らの製品を頻繁に使用すればするほど、より多くの広告収益を得ている。こうした企業はプッシュ通知やパーソナライズされたフィードを使用して我々消費者を惹きつけ、感情を操り行動に影響を与えている。

こういった企業の商売は実に順調だ。今アメリカ人は、デバイスを毎日5時間以上使用している

だから何なのか?Netflix(ネットフリックス)の「The Social Dilemma(監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影)」で語られるように、テック企業は引き続き自社の利益の動機に従って、我々を惹きつけることだろう。政府が、砂糖や違法薬物の消費よりも不健康なテクノロジーの消費のコントロールに関与する可能性は低いだろう。我々自身がコントロールする必要があるのだ。

私の見解はテック企業の元CEO、そしてテクノロジー依存者としてのものだ。私が創業したマーケティングプラットフォームは1億ドル(約104億円)以上集め、350名の従業員を持つ会社に成長し、去年プライベートエクイティ会社に売却した。私はその中で、酷いテクノロジーの習慣をいくつか身に着けてしまった。メールは常にチェックし、対面でのやり取りもプッシュ通知があれば中断していた。

昨年家族を訪ねたときには、私のテクノロジー依存は落ちる所まで落ちていた。そこで私はスマホを置き、重度のパーキンソン病を患う母と一緒にガーデニングに励むことにし、意図的にゆっくりと行動した。

禁断症状に苦しむ中毒者のような気分だった。スマホはまるで磁石のように、未読の仕事メールやニュース速報を確認するように私を引き寄せていたのだ。テクノロジーの使い過ぎにより、脳の配線回路が変わり、生活意識の質は下がり、疎外されているような感覚に陥っていた。

私は今年の初めにCEOを辞め、空いた時間を利用してマインドフルネス、神経の可塑性、テクノロジー依存症について学んだ。また最も重要なことだが、テクノロジーの使用を管理する戦略を作った。これにより気分は優れ、より生産的になった。

私が学んだことをお伝えしたい。

テック企業は我々の脳につけ込んで、注意を引こうとしている

一部のテック企業は我々の注意を引くために、UCLAの精神医学者Daniel Siegel(ダニエル・シーゲル)氏が「一階脳」と呼ぶ、脳の最も古い部分をターゲットにしている。一階脳には、脳幹と辺縁域があり、本能と衝動(闘争・逃走)や強い感情(怒りや恐怖)をコントロールする。反対に二階脳には大脳皮質があり、思考、想像、計画といった複雑な精神機能をコントロールする

一階脳は反応性で、緊急事態から我々を守るように設計されている。素早い判断ができ、意識をハイジャックして、強い感情を通じて行動を促すことができる。この一階脳が、 注意を引きたい製品のターゲットとなる。怒りを覚えるようなヘッドラインや、素早く反応したくなるTikTokの通知は、我々の一階脳に訴えかけてくるのだ。

反応的な状態の時間が長いと、脳の回路が変わってしまう

脳は訓練によって変わるものだ。研究では、我々の脳は神経細胞の発火パターンで再プログラミングされることが分かっている。神経系は、神経可塑性と呼ばれるプロセスで反復的な集中や行動を通じて再配線したり、変換したりすることができるのだ。

繰り返しデバイスを使用することは、神経可塑性の最適な例だろう。プッシュ通知に反応したり、無限スクロールで動画を視聴したり、SNSで社会的評価を求めたりなどにより多くの時間を費やすことで、脳の回路は再配線され、同じことをさらにやりたくなってしまうのだ。

企業による注意を引きつける力が増すと我々の依存はどんどん進む

多くのテック企業は、自社製品の過剰使用がもたらす問題について把握しているが、このアテンションプロフィットプールの分け前を減らすために必要な抜本改革をする企業はない。もしそんな企業があれば、別の企業がその後釜に座るだけだ。

こうした企業は、甘いドリンクを販売しているのだ。その味は飛躍的に改善された、今までにない最高に甘いドリンクだ。飲めば飲むほど、やめられないのだ。我々は消費と習慣をコントロールしなければならない。テクノロジーダイエットをする必要があるのだ。さもなければ、病的肥満に相当する精神病に悩まされることになる。

習慣を変えることで、より生産的で幸せになるように脳を再配線できる

テクノロジーの消費を食品の消費のように考えると、テクノロジー製品は、情報の質と配信方法に基づき、4つの食品グループに分けられる。コンテンツの質は重要だ。コンテンツには価値があるもの(MITのオンラインコースウェアなど)や重要なもの(仕事用のメールなど)があるが、その一方でほとんどは、役に立たない(TikTokなど)。

また配信方法も重要だ。健全なプラットフォームでは、ユーザーに主体性が与えられ、必要なときに役立つコンテンツが引き出されるようになっている。一方で有害なプラットフォームはプッシュ通知に頼ることが多く、何か別のことをしているときに、あまり役に立たない情報を送ってくるのだ。私の経験から、テクノロジーダイエットを実施するためにできる3つのステップを紹介したいと思う。

1. 一階脳を強化する製品を排除する(プッシュ通知される品質の低いコンテンツ)

自制には限度がある。甘いドリンクが要らないなら、家の中には置かないことだ。我々は、今までに開発された中でも最も注意散漫になるアプリを、常に手に届くところに置いている。こうしたアプリが一階脳を食い物にし、より有意義な思考をハイジャックし、ほとんどの人にネガティブな価値を植え付ける。最も効果的な防衛策はこれらを生活から排除することだ。こうしたアプリはそもそも使用すべきではない。

助言:私はiPhoneとMacBookにApple(アップル)のコンテンツ制限を使用している。TikTok、Instagram、Facebook、Snapchatといった明らかな元凶と、個人的に害となっているZillow(ジロー)、StreetEasy(ストリートイージー)、NYPost(NYポスト)も追加した。上書きコードは妻が持っている。必要に応じて解除できるが、生活意識に入ることがない程度に、困難なプロセスとなっている。

2. 二階脳を強化する製品をより多く消費する(必要に応じて利用できる質の高いコンテンツ)

優良なコンテンツは知識やスキルを広げてくれ、思いやり、想像力、マインドフルネスに繋がる方法で二階脳の再配線に貢献する可能性がある。

優良コンテンツの消費は実りのあるものだが、努力が必要になる。途切れることのない集中力が求められる。無意識に消費してしまう甘いドリンクと違い、生野菜は意図的に消費する必要がある

助言:お気に入りの「生野菜」のリストを作ろう。私の生野菜リストは、Kindle(キンドル)、Feedly(フィードリー)、テック系の定期刊行物、お気に入りのキュレーションプラットフォームのHackerNews(ハッカーニュース)、Product Hunt(プロダクトハント)だ。人気急上昇中のマインドフルネスアプリの1つCalm(カーム)も入っている。ホームスクリーンに入れているアプリはこれだけだ。おかげでもっと頻繁に使うようになっている。食べ物のダイエットのように、「良い」消費を達成するための目標を設定し、進捗状況をモニターしている。

定期的にテクノロジー断ちをすることもお勧めする。私は息子と散歩するときや、友達とディナーに行くときはスマホを家に置くようにしている。また二階脳の再配線を促す、ハイキングや楽器を習うなどのテクノロジーを使用しないアクティビティもお勧めだ。

3. 生産性ツールの消費パターンを再設計する

Eメールはほとんどの人にとって必要なものだろう。生産的になれる可能性もある。だが平均的なメッセージの質は低く、常にオンで、頻度が高く、デフォルトでプッシュ通知になっているデザインにより、我々の生産性はベストな状態ではなくなっている

助言:私は緊急を要したり、タイムリーなメッセージではないものすべての通知をオフにしている。テキストメッセージやLyft(リフト)、Tovala(トバラ)オーブンなどがその例だ。Boomerang(ブーメラン)のChrome(クローム)拡張機能では、1時間ごとにすべてのEメールを配信するように設定できる。 Eメールを1時間ごとにバッチ処理することで、中断を大幅に減らすことができる。応答に影響することはない。

我々は、食品、製品、セキュリティなど、近代の祖先も嫉妬するような相対的に豊かな世界で生活しているが、豊かさは我々を幸せにはしていない。記録によると、我々世代は最も幸せではないらしい。大の大人が強い感情、情動、衝動ばかりに気をとられて、ひっきりなしにかんしゃくを起こしている、一階脳の感情を集めた中で生きているように思われる。

だがまだ希望はある。

個人的には、たった数ヶ月でもテクノロジーダイエットは効果があったと思う。衝動的になることが減ったし、より気を配れるようになった。従業員ならば、アテンションエコノミーから利益を得る企業で働くことを辞めることができる。マネージャーならば、夜はデバイスをオフにし、Slack(スラック)の通知をオフにして本当のバケーションを取るように、チームに強く主張できる。親ならば、子供が健康的な消費パターンを築けるように助けることができる。

集団行動と脳の回路の再配線によって、政治の方向性を変えたり、21世紀において最も重要な課題を協力して解決できるかもしれない。

アメリカのイノベーションにより、アテンションエコノミーは圧倒的な勢いをつけてきたが、今度はそのイノベーションでテクノロジーの使い方を正す時がきたのではないだろうか。

【編集部注】著者のStuart Wall(スチュアート・ウォール)氏は、スモールビジネスの拡張を手助けするクラウドベースのカスタマーコミュニケーション・プラットフォームSignpost(サインポスト)を創設したテクノロジーエグゼクティブであり起業家。

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タグ:新型コロナウイルス コラム 健康

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(翻訳:Dragonfly)