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提携銀行3400行、ユーザー数2億5000万人を抱えるまでに成長したスウェーデンのオープンバンキング企業Tinkが約107億円を調達

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オープンバンキングプラットフォームは、これまで同じ場所で提供されていなかったサービスをAPIによって連携させたもので、ここ数年で台頭してきたトレンドの1つになっている。そして米国時間12月11日、欧州でこの分野をけん引する企業が、事業拡大のための資金調達ラウンドを完了した。

Tink(ティンク)は、APIで統合させた多くの銀行や金融サービスにユーザーが新しいチャネルを使ってアクセスできるようにする、スウェーデン、ストックホルム発のスタートアップだ。同社はこの度、8500万ユーロ(約107億円)を調達し、資金調達後の評価額は6億8000万ユーロ(約857億円)となった。今回の資金は、欧州での銀行ネットワークと決済サービスの拡大に充てられる予定だ。ティンクはすでに3400の銀行と提携しており、そのユーザー数は約2億5000万人に達している。提携先にはPayPal(ペイパル)、NatWest(ナットウエスト)、ABN AMRO(ABNアムロ)、BNP Paribas(BNPパリバ)、Nordea(ノルデア)、SEBなどがあり、その中には戦略的投資家も含まれている。一方、ティンクには同社のAPIを使用する開発者が約8000人いる。

今回のラウンドは、新たに加わった投資家であるEurazeo Growth(ユーラゼオ・グロース)とDawn Capital(ドーン・キャピタル)が共同でリードして実施された。他にも、PayPal Ventures(ペイパル・ベンチャー)、HMI Capital(HMIキャピタル)、Heartcore(ハートコア)、ABN AMRO Ventures(ABNアムロ・ベンチャー)、Poste Italiane(ポステ・イタリアーネ)、BNPパリバのベンチャー部門Opera Tech Ventures(オペラテック・ベンチャー)が参加している。

2020年1月に9000万ユーロ(約113億円)のラウンドを発表してから1年も経たないうちに行われた今回の資金調達は、いってみれば前回のラウンドの延長線上にある。ちなみに前回ラウンド時の同社の評価額は4億1500万ユーロ(約524億円)だった。同社の銀行ネットワークはその後も着実に成長を続け、今年1月の時点で提携銀行数は2500に達していた。同社はこれで累計1億7500万ユーロ(約220億円)を調達したことになる。

世界中がパンデミックに襲われたここ1年の間に、より多くのサービスがオンライン化されクラウドに移行された。そのおかげで、人々も企業も銀行取引や販売・ショッピングなど対面では行えなくなった活動を今でも続けることができている。サービスのオンライン化やクラウド化は、金融サービスの世界で間違いなく大きな役割を果たしており、銀行や、銀行と競合する企業、その技術パートナーは、柔軟性の高いデジタルチャネルへの需要が急増していることを実感している。

ティンクの共同創設者兼CEOのDaniel Kjellén(ダニエル・ケレン)氏は次のように語る。「2020年は、困難な状況にも関わらずティンクが大きく成長できた1年だった。今年はオープンバンキングによる決済取引が急増した。2021年には特に英国でオープンバンキングが拡大し、欧州全体へと広がっていくと予想している。今回の追加資金調達により、オープンバンキング技術を基盤とした新しいデータ製品を顧客に提供しながら、決済指図サービスの開発を欧州全域でさらに促進していきたい」。

オープンバンキングに資本を投入しようとしているのはティンクだけではない。12月第2週の初めに、突然姿を現した別のスタートアップUnit(ユニット)が1860万ドル(約19億円)を調達した。同社は、銀行機能や銀行をこれまで銀行が存在しなかった環境に統合させるという野望を抱いている。その他にもPlaid(プレイド)やRapyd(ラピッド)などの企業が、金融サービスを連携させ、他のプラットフォームやアプリに統合させることに取り組んでいる。

プレイドは現在、53億ドル(約5477億円)でVisa(ビザ)に買収される手続きの最中なのだが、この買収取引が現在、独占禁止法違反の疑いで調査されている。ラピッドは引き続きVCの支援を受けており、前回の評価額は13億ドル(約1344億円)だった。こうしたサービスの普及と成長は、プレイドによって市場が独占されるわけではないことを示す強固な論拠になるかもしれない。しかし1つの決済サービス大手がプレイドを所有すれば、市場の進化の仕方は間違いなく変わるだろう。

Eurazeo Growth(ユーラゼオ・グロース)代表取締役のZoé Fabian(ゾーエ・ファビアン)氏は次のように述べている。「オープンバンキングの動きは加速し続けており、2021年には、実績があり信頼できるパートナーとともにオンラインサービスを顧客に提供したいフィンテックと大企業とがさらに広く提携するようになるだろう。8年前の創業以来、ティンクは欧州において業界をけん引するオープンバンキングプラットフォームとなってきた。当社の投資は、ティンクとオープンバンキングに対する当社と業界の信頼の証であり、当社はティンクの取り組みを引き続きサポートすることを楽しみにしている」。

ティンクのビジネスは、既存の銀行サービスへの容易な統合を実現し、統合後に行われる取引から手数料を得られる決済指図テクノロジーをベースとしている。同社によると、現在5つの市場で毎月約100万件の決済取引を処理しているという。

同社は取引高や収益に関する具体的な数字を公表してはいないが、既存顧客の中に、スウェーデンで400万人のユーザーを擁するデジタルメールボックスプロバイダーKivra(キブラ)が含まれていることに言及している。また、今年前半の時点で、500万人以上の顧客を擁する決済フィンテックLydia(リディア)もティンクの顧客に含まれていた。ティンクのサービスは、スウェーデン、英国、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、ポルトガル、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、ベルギー、オーストリア、オランダで提供されており、2021年にはさらに10の市場に拡大する予定だ。

同社は、今回調達した資金で提携ネットワークとフットプリントの拡大に注力すると同時に、無機的成長も積極的に進めている。同社は今年、事業拡大を目的として3社を買収した。このことは、すべての企業が現在の市場で成長するためのスケールや資産を有するわけではないため、今後もさらに統合が進む可能性が高いことを示している。ちなみにティンクが今年、信用リスク商品の拡大を目的として買収したのは、スウェーデンの信用決定ソリューション企業Instantor(インスタントア)、アカウントアグリゲーションプロバイダーEurobits(ユーロビット)、英国のアグレゲーションプラットフォームOpenWrks(オープンワークス)の3社である。

ドーン・キャピタルのジェネラルパートナーであるJosh Bell(ジョシュ・ベル)氏は次のように述べている。「ティンクは欧州を代表するオープンバンキングプラットフォームとして登場し、急速に金融テクノロジーインフラストラクチャの重要な戦略的要素になりつつある。今年は、プラットフォーム全体でオープンバンキングの製品とサービスが数多く採用、導入され、ティンクのネットワーク全体での活動が急激に加速した。我々は、今回の資金調達ラウンドをサポートできたことを嬉しく思っている。来年、ティンクのチームと協力して、すでにかなりの大きさになっている銀行ネットワークの幅と深さを拡張し、口座間の決済指図ソリューションの展開を加速させ、急成長する顧客ベースに卓越した価値を引き続き提供していけることをとても楽しみにしている」。

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(翻訳:Dragonfly)