ドローン配送(用語)
Wingcopter(企業)

独Wingcopterが米国に進出し新世代配送用ドローンを展開、4年間の自己資金運営を経て22.8億円調達

次の記事

Visaによる買収が未遂に終わったPlaidが無名のフィンテック企業家を支援するインキュベーターを立ち上げる

ドイツのドローン技術スタートアップWingcopter(ウィングコプター)は、これまでほぼ自己資金でやってきたのだが、初めての大型ベンチャー投資となるシリーズAラウンドで2200万ドル(約22億8000万円)を調達した。

ドローン配送に特化する同社は、2017年の創設以来、長い道のりを経て、特許技術である独特なティルトローター機構を採用した配送用Wingcopter 178 Heavy-lift(ヘビーリフト)の開発、製造、飛行を実現させた。これは、垂直離着陸機が持つあらゆる利点と、長距離の水平飛行を可能にする固定翼機の長所を持つものだ。

この新しいシリーズAラウンドは、シリコンバレーのベンチャー投資企業Xplorer Capitalと、ドイツの成長株ファンドFutury Regio Growthが主導した。WingcopterのCEOで創設者のTom Plümmer(トム・プラマー)氏はインタビューの中で、シリコンバレーの投資企業を加えたことは、同社にとって特に重要だったと話している。FAA(米連邦航空局)の規制をクリアして事業認可を得るための試験飛行の実施や、将来の米国におけるドローン製造のための同国支社設立など、米国進出の準備を進めている最中だからだ。

Wingcopterはすでに、世界各地のさまざまな市場で商用運用を行っている。たとえばバヌアツでは、ユニセフと共同で辺境地域にワクチンを届けている。タンザニアでは、政府とともに医療物資の双方向輸送を行っている。アイルランドでは、インスリンの輸送のために世界初の目視見通し外(BVLOS、緊急対応のための人間のオペレーターが目視できる範囲を超えてドローンが飛行することを意味する専門用語)の運用を世界で初めて実現した。

WingcopterのCEOで創設者のトム・プラマー氏(画像クレジット:Jonas Wresch)

これまでWingcopterはドローンのOEMメーカーとしてのビジネスモデルを追求しており、彼らのドローンを効果的に購入したいという熱心な顧客もいた(ある客などは、まだ会社用の銀行口座もないうちに送金しようとしきたとプラマー氏は話す)。しかし現在は、ドローンで「サービスとしての配達」を提供する事業を進めようとしている。苦労して技術を一から作り上げ、事業展開に必要な世界各地の規制当局の認可を取得してきたプラマー氏と共同創設者たちは、その過程でこう悟った。サービス事業への参入は単に新しい収入源を得るためのものではなく、潜在顧客のより多くのニーズに、より良い対応できるようにするためのものだと。

「認可の申請、認可の取得、そして今は5つの大陸のいくつもの国との共同事業を通して、実際にBVLOS飛行でドローンの運用を行っている私たちは、それに大変に長けているのだと知りました」と彼はいう。「それが非常に大きな収入源となりました。収益の半分以上を占める時期もありました。しかしOEMとしてビジネスモデルの拡大を考えると、それは何というか……リニアです」。

確かな収益と安定した需要によるリニアな成長は、大学生たちが家族や友人から少額の資金を集めて設立し、自己資金でやってきたスタートアップであるWingcopterにすれ重要なことだった。しかしプラマー氏は、彼らが開発したテクノロジーにはもっと大きな潜在力があると、みんなで話しているという。しかも、ドローンによる「サービスとしての配達」市場の急激な拡大が、旧来型のベンチャー投資家に対して説得力を持つようになっている。初期のころからWingcopterに話を持ちかけるベンチャー投資企業はあったものの、その当時は彼らの方向性に合わないと感じていたとプラマー氏は話す。だが、状況は変わった。

「この4年間、自己資金でやってこられたのはラッキーでした」とプラマー氏。「なにせ、ドローンの販売収益だけで、30人もの従業員を雇えたのです。しかしある時点から、本気で収益の計画を考えるようになると、月々決まった収益がほしくなります。ソフトウェアビジネスの、サービスとしてのソフトウェアのように継続されるものです」。

Merckの配送を行うWingcopter 178配達ドローン。

Wingcopterはまた、サービス事業にとって都合のいいヘッジを構築することもできた。それは自社がハードウェアの供給元であることに加え、商用ドローン飛行の黎明期に世界の数多くの航空規制当局と密接に協力して規制プロセスを作り上げてきた実績によるものだ。たとえば現在同社は、FAAと認可のための協議の最中だ。週に1度当局を訪問して、BVLOSドローン運用のための認可手続きを協議している。規制環境を理解していることと、さらには規制環境の構築の手伝いもしていることが、自社に専門家を雇い入れて規制対応部門を創設するのが難しい企業への大きなセールスポイントになる。

だが同社は、およそ6kgの荷物を搭載して最大時速160kmで120kmまでの範囲を飛行できるWingcopter 178 Heavy-Liftを販売するだけではなく、OEMとしての役割も継続する。なぜなら、そのユニークなティルトローター機構により、飛行効率がよいばかりか、さまざまな条件下での飛行も対応できるからだ。他のドローンと違い、より厳しい条件での離着陸ができる。

Wingcopterは、ハードウェア開発業者としての栄光の上にあぐらをつもりはないとプラマー氏は話す。同社は間もなく、異なる能力を有する新型機を発表し、OEMとして、またサービスとしてのドローン事業として、対応可能な市場の範囲を拡大する予定だ。

 

米国に進出しても、配送市場に重心を置くことに変わりはないが、その特異なテクノロジーが、観測や調査などの市場や、さらには通信分野の需要にうまく対応できない理由はないとプラマー氏は指摘する。しかし、Wingcopterには望まない市場がある。軍事と防衛だ。これらは宇宙航空とドローンの市場では上得意客ではあるが、プラマー氏によれば、Wingcopterには「持続可能で効率的なドローンソリューションを生活の向上と命を守るために創造する」という理念があるという。そして彼らは、この理念に沿うあらゆる潜在顧客に目を向けているが、防衛産業はこれに当てはまらない。

同社はシリーズAラウンドのクローズを発表したばかりだが、すでにいくつかの有望な投資家にシリーズBラウンドへの参加を呼びかけているとプラマー氏は話す。さらに、FAAの認可に必要な試験過程で力になる、内蔵システムソフトウェア開発と飛行運用試験のための人材を米国で募集する予定でいる。

プラマー氏は、Wingcopterの特許技術であるティルトローターからはロングテールとしての価値が生まれ、幅広い業界で活躍できる可能性があると見ている。だが、その価値を本当に実現するまでは、M&Aによる可能性は一切探らないという。その一方で同社は、ユニセフのAfrican Drone and Data Academy(アフリカン・ドローン・アンド・データ・アカデミー)に協力して、ドローンの飛行と運用のための訓練プログラムを実施するなど、未来の潜在顧客のための種まきを始めている。

Wingcopterがドローンによる配送事業に明るい未来を描いていることは確かだ。他に差をつけるハードウェアの上に構築した事業に集中し、さらに世界の規制作りに貢献することで、その未来の中心に同社が立てるようになるだろう。

関連記事
宅配大手UPSとドイツのWingcopterが共同で配達用多目的ドローンを開発
ドイツでトラックに代わるドローンによる社内輸送の試行を実施

カテゴリー:ドローン
タグ:Wingcopter資金調達ドローン配送

画像クレジット:Wingcopter

原文へ

(翻訳:金井哲夫)