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NASAが火星に降下するパーセベランス探査機の高精細度動画を公開

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NASAは、火星探査機Perseverance(パーセベランス)とその着陸モジュールローバーが撮影した動画を公表した。これは火星大気圏突入から着陸までの「恐怖の7分間」をPOV(一人称視点)で記録している。先週公開された画像はごく一部の予告編だった。こちらが完全な記録であり、史上初めて撮影された火星着陸動画だ。

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ローバーの降下と任務についてはこちらで随時ツイートされているが、ここではまず概要を説明しておこう。

惑星間を高速で航行してきた探査機は、ヒートシールドを前方に向けて火星の大気に突入する。大気で減速され高温になったヒートシールドは投棄され、超音速パラシュートが展開される。ヒートシールドが外れると内部のカメラなどのセンサーが観測を始め、着陸に適したフラットな地点を探す。さらに減速され所定の高度に達したところで、パラシュートの切り離しが行われる。ローバー着陸モジュールを覆っている「ジェットパック」が、前進速度と降下を速度を殺す。地表70フィート(約21.3メートル)でローバーを減速させるロケットエンジンを組み込んだ「スカイクレーン」からローバーはぶらさがるかたちになる。ローバーはスカイクレーンから切り離され、スカイクレーンはローバーを妨害しないよう退避する。ローバーは静かに着陸する。

この過程には7分間かかり、特に最後の数秒は完全な綱渡りとなる(下図)。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

以前の初代ローバー探査機は画像やテレメトリ情報を送り返してきたが、今回のような臨場感あふれる動画は史上初だ。2018年のInSight火星着陸機もこのレベルの映像を送り返すことはできなかった。

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JPL(NASAジェット推進研究所)の責任者、Mike Watkins(マイク・ワトキンス)氏は記者会見でこう語った。

火星への宇宙船着陸のようなビッグイベントを実際にキャプチャーできたのはこれが初めてです。アメージングなビデオです。我々はこの週末、パーセベランスからの動画を一気に見てしまいました。まあ数分間の動画を一気見するとは言わないかもしれませんが。もちろん、探査機が設計どおりの性能を発揮したことを見るのも楽しいのですが、多くの視聴者に火星への旅を体感してもらうことも同じくらい重要です。

NASAのチームによれば、こうした動画はそれ自体の科学的価値に加えて、チームが経験した絶大な恐怖と無力感をともに体験してもらいたいものだという。JPLのパーセベランスプロジェクトマネージャー補佐であるMatt Wallace(マット・ウォレス)氏はこういう。

この分野に長い私でさえ、いつか火星への着陸機を操縦するようになるとは想像できません。しかしこの映像を見れば、パーセベランスを操縦して火星のジェゼロ・クレーターに着陸するのがどのようなものであるか、非常に詳しく体験できます。

ローバーを囲むジェットパック・カプセルには上向きのカメラが、ローバー自体にも2台の下向きのカメラがあり、実質的に全周パノラマが記録できる仕組みだった。ヒートシールドが投棄される画像は印象的だ。そこに広がる火星の砂漠の風景はアポロが月に着陸するところを描写した映画のようだ。

火星に向かって下降する際、ヒートシールドを投棄するパーセベランス(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

フルビデオはこちら

この下降中に30GB以上の画像データが取得された。パラシュートの展開時にカメラの1台が不調となったが、それにしても巨大なサイズの画像だ。火星を周回する衛星の2Mbpsの回線を経由して映像を送るには時間がかかる(もちろん昔の数kbpsの回線に比べれば驚くべき高速化だ)。

すべての映像フレームが、火星着陸プロセスに関する新たな情報を提供してくれる。たとえばヒートシールドを投棄する使用されたスプリングの1つが外れたように見えるが、プロセスには影響しなかった。他のフレームと合わせて、今後精査されるだろう。

こうした驚くべき着陸プロセスの動画に加えて、パーセベランスはナビゲーションカメラによって撮影された多数のフルカラー画像を送り返してきた。まだすべてのシステムが稼働しているわけではないというが、チームはパーセベランスが撮影した画像をつなぎ合わせてこのパノラマ画像を作成した。

 

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAのチームは、画像を処理する度にアップロードしているので、今後さらに多くの画像が見られるだろう。

NASAからの最後のプレゼントは火星の表面からの録音だ。これ自身が新しい洞察に結びつく情報であると同時に、さまざまな理由で視覚的情報に接することができない人たちにも着陸を体験してもらいたいというのがNASAの願いだ。

着陸に必要な突入(Entry )、降下(Descent)、着陸(Landing Phase)の頭文字をとったEDLシステムにはマイクも含まれていた。残念ながら降下中に起動することができなかったが、着陸後は完全に作動して環境音を記録している。かすかながさごそという風ノイズは聞き慣れた音だが、この風が光の速さで11分間もかかる別の惑星の上を吹いているのだと思うと信じられない気がする。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook