バイオテック
資金調達(用語)
DNA / 遺伝子(用語)
Zene(企業・サービス)

「次世代ゲノム解析サービス」を健康保険組合向けに提供するZeneが5000万円調達

次の記事

iMac Proが販売終了

「次世代ゲノム解析サービス」を開発するスタートアップであるZeneは3月8日、インキュベイトファンドを引受先とした第三者割当増資により5000万円の資金調達を発表した。

Zeneは個人の遺伝子解析を通じて「生涯不変の疾病リスク」を判定し、その対応策までサポートするスタートアップだ。前職でヤフーの遺伝子解析サービスを運営し、デジタルヘルス分野に10年以上従事している井上昌洋氏が2020年2月に設立した。

一生変わらないリスクを知る

「生涯不変の疾病リスク」とはなんだろうか。例えば、糖尿病は「生活習慣病」とも言われるように、食事や運動などの生活習慣がその発症の原因となりえる病気だ。しかし、ZeneのCEOである井上氏は「(2型)糖尿病の発症には、環境的な要因だけではなく、遺伝的要因が大きく関わっています。男性で約4割、女性では約9割が、遺伝的な要因で糖尿病にかかるという最新の研究結果もあるほどです」という。個人の遺伝子は一生変わらないものなので、それに起因する疾病リスクは一生変わらないというわけだ。

井上氏は遺伝子解析サービスのメリットとして「自分にとって不変の体質リスクを知るからこそ、継続して健康的な生活を送るためのモチベーションにつながります。また毎年行う健康診断とは違って、一度実施すればよいので経済的なメリットもあります」と語る。

同社の遺伝子解析サービスとこれまでの遺伝子検査との違いは、ゲノム情報全体を統合的に解析する「ポリジェニックリスクスコア手法」を採用した点だ。数個の遺伝子をタイプ別にわけて疾患者の割合を提供するという従来の手法ではなく、AIを活用してより多くの遺伝子情報を統合的に検査するため、その解析精度は高くなるという。

健康保険組合向けの新サービス

Zeneは今回の資金調達と同時に、企業や健康保険組合に向けたサービス「Zene360」を開始した。これは社員1人あたり6000円(目安)で、遺伝子解析サービスを導入できるというもの。検査の方法はシンプルで、自宅に送られてくる専用キットで唾液を使い実施する。キットを郵送すれば完了し、後日解析レポートが郵送もしくはウェブで閲覧できる。

Zene360の解析レポートには、糖尿病・乳がん・循環器・認知症・大腸癌などの生涯不変の疾病リスクが記載されている。また、これらの注意喚起だけで終わらず、その後の対応までトータルでサポートするのが特徴だ。例えば、糖尿病リスクが高いと判明したユーザーに対しては、食事改善メニューや運動メニューを提供したり、病院での受診を提案するという。井上氏によると「従来の遺伝子解析サービスは、レポートを提出してそこで終わってしまっていたんです。レポートの結果を受けて、ユーザーが具体的な行動に移るといったことは少なかった」と自身の過去の経験を語る。

画像クレジット:Zene

健康保険組合としても、効率性の観点からメリットは大きい。井上氏は「例えば脳ドックを挙げてみましょう。これまで健康保険組合は、社員全員に脳ドックを受診するように働きかけるのが通常でした。しかし、実際に受診するのは健康オタクのような人たちだけで、せいぜい1割程度です。Zene360を使えば、どの社員が脳梗塞のリスクが高いかがわかるので、ピンポイントでそのような社員に脳ドック受診を勧めることができますし、社員側としても遺伝的な根拠があれば、受診や健康管理へのモチベーションにつながるでしょう」と話す。単純に遺伝子解析のレポートを渡すだけではなく、その後の具体的な行動案を提示することで、他の遺伝子解析サービスとの差別化を図るというわけだ。

また、社員1人あたり6000円(目安)という価格も、他の遺伝子解析サービスと比較すると大幅に安いという。この価格設定の理由として、Zeneは解析した遺伝子データを個人を識別できない形に加工したうえで、将来プラットフォーム化することを狙いとしているからだ。

井上氏は「遺伝子情報は一度取得してしまうと、その後変化はないため再度検査する必要がありません。よって『勝者総取り』の構図になりやすい業界でもあります。だからこそ導入コストを下げて、まず企業や健康保険組合に利用してもらうことが大切だと考えています」と語る。

一方で課題は明確にある。遺伝子解析サービスは、あくまで集団における「相対的な危険度」を表すものだ。それゆえ母数の日本人ユーザーが増えない限りは、解析結果の正確性を担保することが難しい。だからこそZeneは、現段階では一般個人向けのサービスではなく、企業や健康保険組合に的を絞る。検査母数が増えることで解析精度が高くなり、それによってさらに導入が増えていくという好循環を狙っていく。

米国ではすでに3000万人を超える個人によって利用されているとされ、23andMeColorなどのユニコーン企業をも生み出す巨大市場である遺伝子解析サービス。今後、日本でも順調な拡大が期待できる分野といえるだろう。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Zene資金調達遺伝子日本