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食品科学業界念願の健康的な砂糖代替品をスタートアップがついに発見か

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3年ほど前、カリフォルニア州マウンテンビューのComputer Science Museum(コンピューターサイエンスミュージアム)で、会社を起業して間もない英国のケンブリッジ出身の創設者が、Y Combinator(Yコンビネーター)の8月のDemo Dayで、著名人、投資家、起業家を集めて講演し、食品科学の大革命を宣言した。

このイベントは数年の間に、テクノロジー系投資家や業界関係の億万長者に向けて、将来的に莫大な利益を生み出す可能性を秘めた企業直後のビジネスを紹介する、比較的ローテクで低予算な発表会となってきた。

他のイノベーション志向の新進起業家らと共同でプロジェクトを進めるケンブリッジの科学者らは、砂糖の味だけでなく、カラメル化や粘質までも模倣した甘味料を製造できるテクノロジーを自信をもって発表した。パッケージ食品の約74%には何らかの甘味料が含まれているが、その中でも砂糖を主力の添加物にしている特性が、カラメル化や粘質だ。その科学者たちが設立したCambridge Glycoscience(ケンブリッジ・グリコサイエンス)という会社は、少なくとも1000億ドル(約10兆7000億円)に相当する巨大なマーケットシェアを獲得するだろうと豪語する。

現在、同社は社名をSupplant(サプラント)に変更し、さまざまな植物の廃棄物を原料とした砂糖の代替となる商品を低コストで展開するために、ベンチャーキャピタルから2400万ドル(約25億7000万円)の資金を調達している。

甘い食材の苦い歴史

砂糖の起源はニューギニア、台湾、中国などを原産とするサトウキビを人類が食生活に取り入れた約1万年前にさかのぼる。その後2000年かけて、これらの地域からサトウキビがマダガスカルに広がり、最終的には紀元前500年頃にインドに渡り、そこで初めて精製されるなど、地域に根づいた。

そこからこの甘味料はご存じのように全世界へと広がった。紀元後1世紀までには、ギリシャやローマの学者がその薬効について文献に記し、十字軍後の中世に欧州全体で砂糖の消費が広まった。

当時のヨーロッパで好まれていた甘味料である蜂蜜や、ローマ人が使っていた致死量に迫る鉛が含まれている初期の人工甘味料の代替品として、砂糖が好んで使われるようになった。

ヨーロッパ北部の非常に寒い気候ではサトウキビを栽培することが困難なため、温暖な南部やヨーロッパ南部に位置する島々で栽培されるようになった。

これらの地域を起点に、砂糖貿易の副産物である農業奴隷制度の試みが初めてヨーロッパで行われ、砂糖生産の産業的成長がアメリカ大陸に広がったことで、何世紀にもわたってアメリカ先住民やアフリカの人々の労働力を国際的に搾取する原因となった。

当初アメリカ大陸では、ヨーロッパから季節労働を強いられた奴隷が送りこまれ、奴隷にされた先住民とともに砂糖生産の原動力となっていたが、欧州から持ち込まれた伝染病、大量虐殺、過酷な労働が原因で先住民の人口が減少すると、奴隷がアフリカから新しい植民地であるアメリカ大陸に連れてこられ、砂糖を生産するために畑や精製所で働くようになった。

砂糖の後遺症

奴隷制度が残した爪痕は砂糖産業の最も忌まわしい遺産かもしれないが、人類が甘味料を渇望することによって引き起こされた問題はこれだけではない。

気候変動が脅威となっている中で砂糖の需要が世界的に高いため、原生林を他の産業に転換するよう促すブラジルの新政策により、森林伐採が増加する恐れがある

「サトウキビから砂糖を精製する従来の方法では、水を大量に消費する」とサプラントの共同設立者であるTom Simmons(トム・シモンズ)はインタビューで語った。水は気候変動が悪化することで影響を受ける可能性がある資源であるため、水の問題は砂糖が環境に影響を及ぼすもう1つの問題だ。加えて、種の絶滅も大きな問題となっている。

「WWF(世界自然保護基金)によると、世界的に失われている生物の多様性に最も影響を与えているのは、砂糖を生産しているサトウキビプランテーションだ。砂糖の生産には大量の水が必要だが、当社の事業は持続可能性の面で大きな訴求力がある。原料は現在流通している農産物だ」とシモンズ氏はいう。

米国で砂糖の代替品が求められるようになり、ぶどう糖果糖液糖(異性化糖)が米国でさまざまな製品に使われるようになった結果、関連する健康面のコストがかさむようになってきている。ぶどう糖果糖液糖は1957年に発明され、砂糖の代わりとして一般的に使用される甘味料の1つであるが、消費者の健康に世界的に極めて深刻な影響を与えると考えられている。

糖尿病、肥満、脂肪肝疾患の有病率が世界的に増加していることは、ぶどう糖果糖液糖の使用量と相関があると確認されている。

オーストラリア、メルボルン、4月8日。この写真は、2016年4月8日のオーストラリア、メルボルンで、糖分を多く含む商品がスーパーマーケットに陳列されている様子を映している。WHO(世界保健機関)が初めて発表した、糖尿病に関する世界的な調査の報告書によると、発展途上国を中心とする4億2200万人の成人が、糖尿病を患いながらの生活を強いられていることが明らかになった。オーストラリアの糖尿病専門家は、拡大する問題に対処するため、砂糖税導入の検討を連邦政府に求めている(画像クレジット:Luis Ascui/Getty Images)

健康的な代替品への期待

サプラントは砂糖に代わる主要な代替品を投資家とともに提供することを目指すことにより、同じように代替品を提供しようとする他社たちと競合することになった。

実用可能で毒性のない化学合成に由来する砂糖の代替品は、18世紀後半にドイツの化学者によって初めて発見された。サッカリンと名づけられたその代替品は、第一次世界大戦にともなってともなって砂糖が不足したことを受けて普及し、1960年から70年にわたる健康ブームで需要が大きく増加した。

ピンクの小袋のSweet’N Low(スイートンロー)やその他の製品でサッカリンが使用されているが、今ではアスパルテーム(Equalやダイエットコークのような飲料で砂糖の代替品として商業的に認知されている)によって継承され、アスパルテームはスクラロースに取って代わられた。スクラロースはSplenda(スプレンダ)のブランドで知られている。

化学合成由来のこのような甘味料は、何十年も市場で一般的になっている。しかし、化学由来ではなく天然由来の代替品を求める声も高く、砂糖が食材として持つ機能的特性の模倣の失敗もあり、優れた砂糖代替品の需要がかつてないほど高まっている。

競合他社の先をいく

「私たちが支援しているものすべてが世界を変えるわけではないが、これは根底から変えることができる」と、サプラントを強力にサポートする支援者の1人であるAydin Senkut(アイディン・センクット)氏はいう。彼は、Felicis Ventures(フェリシスベンチャーズ)というベンチャー企業の創設者兼マネージングパートナーだ。

サプラントの甘味料がヨーロッパでFDA(米国食品医薬品局)にあたるEUの規制当局からすでに仮承認を得ているため、センクット氏はサポートを買って出たのだ。この承認は、サプラント製品の甘味料としての販売を承認するだけでなく、具体的な健康上の効用を持つプロバイオティクス製品としても承認していることになると同氏はいう。

つまりサプラント製品は創業者らが主張するように、間違いなくより良い代替品であり、砂糖の代替品として使えるだけでなく、消費者が定期的に使用することで食物繊維を多く摂取できるという健康上のメリットがある、とセンクット氏は語る。

「欧州のFDAは米国のFDAよりもさらに厳しいが、厳しい基準があるなかで仮承認を取得することができた」とセンクット氏はいう。

Yコンビネーターで行われたケンブリッジ・グリコサイエンスのプレゼンテーション直後に、センクット氏のフェリシスベンチャーズはすかさず同社に投資した。

「私たちはシードラウンドで最大の投資家となった」とセンクット氏はいう。

サプラント製品のセールスポイントは、グリセミック指数が非常に低いことと、植物の廃繊維から製造できることであり、最終的には低コストで製造できるとセンクット氏は述べた。

競合他社との差別化

その他の重要な点でもサプラントは競合他社と異なると、同社の共同創業者であるTom Simmons(トム・シモンズ)氏は述べている。

イスラエルのスタートアップDouxMatok(ドゥーマトック)やコロラド州のMycoTechnology(マイコテクノロジー)、ウィスコンシン州のSensient(センシエント)のような企業は、菌類や木の根、さらには樹皮から砂糖の甘みを強化する添加物の開発に取り組んでいる一方で、サプラントは甘味料を作るために代替糖を使用している、と同氏は語る。

「他社との根本的な違いは、他社がキビ砂糖を使っていることだ。当社のセールスポイントは食物繊維から砂糖を作ることであるため、キビ砂糖を使う必要はない」とシモンズ氏は述べる。

シモンズ氏は、他のスタートアップが間違った方向から問題にアプローチしているという。「彼らがテクノロジーを使って取り組んでいる食感、膨らみ、カラメル化、結晶化などの問題は、業界が抱えている問題ではない。私たちはテクノロジーを駆使して、グラム単位で同じ甘さにできる」と述べている。

糖質には、カロリーが異なる6種類の糖分があるとシモンズ氏は説明する。牛乳に含まれる乳糖、サトウキビやサトウダイコンから取れるショ糖、小麦や大麦などの穀物に含まれる麦芽糖、果物や蜂蜜に含まれる果糖、特に炭水化物を含有する野菜、果物、穀物などに含まれるブドウ糖、乳糖が分解されることで生成される単糖のガラクトースだ。

シモンズ氏いわく、同氏の会社の砂糖代替品は1つの化合物だけを使って生成されるのではなく、食物繊維を構成するさまざまな成分に由来している。食物繊維を使用するため、体がその化合物を食物繊維として認識し、消化管内で食物繊維と同じように処理されることになる。一方で製品は砂糖のような味がして、食品中で砂糖と同じような作用をするという。「食物繊維由来の糖類は糖類に分類されるが、カロリーが高い糖類ではない」とシモンズ氏は説明する。

ニューヨーク、12月6日。2004年12月6日のニューヨークで販売されている人気の砂糖代替品「スプレンダ」のパッケージ。ノンカロリー甘味料の主要成分であるスクラロースのメーカーは、需要が非常に高いため、2006年に生産量を倍増させないと米国の新規顧客に対応できないという。スプレンダは低糖質のアトキンスダイエットの人気もあり、売り上げを伸ばしている(画像クレジット:Mario Tama/Getty Images)

プロセスの信頼性

サプラントは、テクノロジーを駆使して酵素を使い、さまざまな繊維を分解した上で細分化する。「繊維が分解されていくと分子的にはショ糖やキビ砂糖のように変化し、キビ砂糖のような成分になる」とシモンズ氏は語る。

この技術は、ケンブリッジ大学で始められた長年の研究の成果だと同氏がいう。「私がケンブリッジに来たの教授になるのが目的で、ビジネスを始めるつもりはなかった。科学の研究や発明、なによりも世界に届けられるようなものに興味があった。そのためには教授になるのが一番だと思っていた」

やがてシモンズ氏は博士号を取得し、サプラントに生かされる研究をポスドク研究として開始した後、会社を設立する必要があることに気付いた。「何かインパクトのあることをするためには、大学を辞めなければならなかった」と同氏は語る。

サプラントはある意味で、シモンズ氏が関心を持つ健康、栄養、持続可能性のすべてが融合して運営されている。そして、さまざまな消費者製品に加工テクノロジーを徐々に応用することを同社で計画しているが、現状では1000億ドル(約10兆7000億円)規模の砂糖代替品市場に重点を置き続けるとシモンズ氏はいう。

「それぞれの分野で核となる部分に科学的にアプローチしている部分というのは、ほんの一握りしかない。例えば、パーソナルケアやホームケアに使用される製品や、その分野で使われる化学物質がそうだ。業界が実現に向けて取り組んでいることとして、シャンプーに含まれる化学物質を肌に優しくかつ洗浄力の高いものにするという動きがあるが、それを持続可能な方法で実現しなければならない。つまり、製品が持続可能な原材料から作られ、生物分解が可能な製品であるということが必要だ」と同氏は語る。

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サプラントは今、Manta Ray(マンタレイ)、Khosla Ventures(コースラベンチャーズ)、フェリシスベンチャーズ、Soma Capital(ソーマキャピタル)、Yコンビネーターなどの投資家から調達した資金で、ターゲットを細かく絞ったいくつかの実験でその製品価値を証明しようとしている【注】。シモンズ氏はあえて詳しく説明しなかったが、第1弾は著名なシェフと大々的に実験を仕かける。

センクット氏によると、同社の展開はImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)が市場に参入してきた方法に似ているとのことだ。まず高級レストランや高級食品で何回か試した後に、消費者市場に進出するという手法だ。

サプラントが生産する砂糖代替品の原材料はサトウキビの絞りかすと小麦であり、醸造業界の加工用設備を使用している。この手法は将来的に、同社が米国にオフィスを構え、大きな製造拠点を築く上でメリットとして働くだろう。

「当社は既知の科学を利用し、市場として魅力のある食品業界にその科学を応用している。新しい酵素やいろいろなプロセスを発明しているわけではない。使っているもの自体は新しいものではない。生成に使用している糖がうまく機能し、キビ砂糖の代わりになるということが発見なのだ。これは、今まで誰も実現できなかったことだ。砂糖の代替品はほとんどの場合、キビ砂糖のような成分にはならない。乾燥しすぎていたり、湿っていたり、硬すぎたり、柔らかすぎたりする」とシモンズ氏はいう。

何よりも大切なことだが、シモンズ氏と20人のチームは、この消費者向け製品を作るという使命をしっかりと共有している。「私たちは、世界中で生み出されている膨大な量の再生可能資源を利用するつもりだ」と同氏はいう。

【注】この記事は、マンタレイとコースラベンチャーズがサプラントへの投資に参加したことを受けて更新された。

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画像クレジット:Luis Ascui / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)