EUがギグワークを「より良質」なものにする方法を探し始める

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欧州連合(EU)は、ギグプラットフォームとギグワーカーを含めた協議プロセスの第1段階を開始した。

EUの議員らはプラットフォームで働く人々の労働条件を改善したいと述べているが、EUのデジタル政策責任者であるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は現地時間2月25日のスピーチで、そうした人々が「貧しく」「不安定」である可能性を認めた。しかし、ベステアー氏はまた、ギグワークの問題に関する欧州委員会のアジェンダは、(貧弱な)プラットフォーム業務と、良質で安定した(権利が保護された)雇用との間に、ある種の「バランス」を見つけることだと明確に述べた

過酷なサービス提供に従事していながら従業員名簿に載らない多くの人々は、労働者としての権利の一部しか与えられていない。彼らに支払う大金を削ることが、企業としての(多くの場合、理論上ではあるが利益がともなう)持続可能性に連鎖的に結びついている。そうしたことを踏まえると、ギグプラットフォームの仕事がいつまでも良質かつ安定したものにならない悪循環をEUの議員らがどう正していくのか、まだ詳細は不明だ。

しかし、おそらくそれこそが、欧州委員会の協議プロセスで把握しようとしていることだ。このプロセスの第1段階では「より良質」なプラットフォーム業務がどうあるべきか、ギガプラットフォームとギガワーカーの代表者らとともに徹底的に議論することが計画されている。

「プラットフォーム経済はEUとともにあり、新しいテクノロジー、新しい知識源、新しい仕事の形態が今後数年で世界をかたち作っていくでしょう」とベステアー氏は述べ、続けてプラットフォーム労働者の権利や社会的セーフティーネットが疎かにされてはならないというデリケートな問題に躊躇なく切り込んだ。「そして、デジタル経済に関わるあらゆる仕事を守るため、新しいチャンスだからといって権利が制限されることがあってはなりません。オンラインでも実社会と同様に、すべての人々が保護され、安全に尊厳を持って働けるようにするべきです」(ここでは「べき」という言葉に非常に力強い決意が込められている)。

「この協議における重要な課題は、プラットフォーム経済の機会を最大限に活用することと、プラットフォーム経済で働く人々の社会的権利を従来型の経済と同じように保証すること、この2つを両立させることです」とも述べ、次のように続けている。「また、プラットフォームと、現行の労働法の適用を受け人件費がかさんでいる従来型の企業との間で、公正な競争が公平な条件で行われるようにすることも重要です」。

ギグワークに関する欧州委員会の2段階の協議プロセスは、委員会のいう「プラットフォーム業務における労働条件を改善するために、EUが取りうる施策の必要性と方向性」について「社会的パートナー」による協議から始まる。

この協議は少なくとも6週間にわたって行われる。これには、プラットフォームが労働者(および・または、労働者の代表者)と話し合い、プラットフォームの労働条件の観点で「より良質」とはどのようなものかについて合意を見い出すことが含まれており、欧州委員会のイニシアチブの方向性を決定するためのものである。あるいは、両者が現実的な方策の同意に至った場合には、そのイニシアチブについて法整備を進めることになる。

協議の第2段階は「社会的パートナー」が合意に至らない場合を想定しており、夏前に行われる予定で「イニシアチブの内容」に焦点を当てるとベステアー氏はいう(つまり、正すべき悪循環を正すために、EUが最終的に何かを提案するということだ)。

ギグワークにおける難問である競争要素、つまり「雇用主の公平性」というダイナミクスも考慮しなければならない。プラットフォームが従来の雇用主と同じルールを適用していないために、良質で安定した仕事を提供しているライバル企業の競争力を低下させる可能性があることを考えると、欧州委員会がなぜ「社会的パートナー」の協議と並行して競争に焦点を当てた協議を始めているのか説明がつく。

「社会政策ではなく競争法に関するものであるため、別の法的基盤を持つこのイニシアチブについて、まもなく公聴会を開始する予定です。2つのイニシアチブについて別々に協議を行うのは、このためです」とベステアー氏は指摘する。

同氏は、これによってEUの競争規則が「必要とされている団体交渉の邪魔にならないよう」にすると述べた。また、(この意味はまだ不明確だが)「より良質な」プラットフォーム業務のバランスを実現するうえでの解決策が、団体交渉によって形成されることを委員会は期待しているという。

とはいえ、シニカルな人は、この意見公募が、最終的にはおそらくある種の見せ掛けに終わるだろうと予測するかもしれない。つまり、ベステアー氏がEUとともにあるべきと主張したプラットフォーム経済を実際に崩壊させることなく、プラットフォームにおける権利のギャップを埋めるための詰め物という見方もできるということだ。

Uber(ウーバー)の場合、プラットフォームの「法的な明確さ」を向上させるという欧州委員会の話を機会と捉えている。

巨大な配車サービス企業であるウーバーは先週、ホワイトペーパーを発表し、プラットフォーム業務への規制強化の動きを阻止すべく議員に働きかけた。カリフォルニア州では雇用法の強化からの切り離しに成功し、欧州でも同様の成果を求めProp 22スタイルを推し進めている。

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他のプラットフォームも同様に、欧州の社会契約の中で自社のビジネスモデルに不都合な部分の再調整を促す利己的な提案をしてくることを予想している(例えば先週、ウーバーは規制緩和のロビー活動に有利になるよう、労働者の条件改善を意図的に引き延ばしたと非難された)。

欧州委員会のギグワーク協議の開始は、長期にわたる雇用法廷に対するウーバーの上告を棄却した英国の最高裁による画期的な判決(英国時間2月19日)に続くものだ。

最高裁判事は、ウーバーを訴えたドライバーのグループは確かに誤って「自営業者」に分類されていたとの見解を確定させ、ウーバーはずっと支払っていたはずの(労働者の)権利に対する補償金を支払う義務があるとした。

EUが(ブレグジット後の)英国と比較してプラットフォーム労働者に低いレベルの権利しか提供できずに終われば、ブリュッセル(EU本部)は確かに面目が立たないだろう。

プラットフォームが既存の雇用規制を回避し、社会通念を破壊してでも利益を追求することに基づいていることを考えると、本質的にアンバランスなビジネスモデルの観点で「バランス」を取ることについて話すのは非現実的かもしれない。しかし、欧州委員会は協議プロセスや重なり合うEU全体の規制のネットワークが、ギグエコノミーや大手テクノロジー企業の極めて悪質な行き過ぎた行為をより一般的に抑制するための方法であると考えているようだ。

協議についてのプレスリリースでは、プラットフォーム業務はEUのさまざまなビジネスセクターで「急速に展開されている」と述べられている。そのため「ハイテクを駆使した『発展』を邪魔することはできない」という冴えない記述がある。

委員会は「従来の労働市場の職に就くことが難しいと感じている人も含めて、柔軟性の向上、雇用機会の増加、副次的収入を提供することができる」と、おそらく「バランスのとれた」結果を求める向きに合せていると思われる、認識されたいくつかのポジティブな面から書き始めている。

「しかし、ある種のプラットフォーム業務は不安定な労働条件を伴い、契約の透明性や予測可能性の欠如、安全衛生上の課題、社会的保護の利用機会が不十分であることとして表面化している。プラットフォーム業務に関するその他の課題には、国境を越えた範囲とアルゴリズムによる管理の問題が含まれる」。

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また、プラットフォーム業務の普及を加速させていることと、ギグワーカーの「脆弱な状況」に対する社会的な懸念が高まっていることの両方において、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが果たす役割についても言及している。「脆弱な状況」のギグワーカーは感染しても、(病欠手当が全額支給されないと)仕事をやめるわけにはいかないので、収入を得るために、自分自身の健康(だけでなく他人の健康)を危険にさらすという選択を迫られるかもしれない。

欧州委員会の報告によると、EUの労働者の約11%(約2400万人)が、すでにプラットフォームを通じてサービスを提供したことがあると答えている。

ベステアー氏は、これらの人々のほとんどは「プラットフォーム業務を単に副次的、あるいはあまり重要でない収入源としているだけ」と言われていることに対して、300万人ほどは本業としてやっていると付け加えた。

そして、欧州でこれらの300万人に給料を払わなければならなかった場合のギグプラットフォームのコストを想像してみて欲しい。

プラットフォーム業務はEUとともにあるべきだとの見解を表明したスピーチの中で、ベステアー氏は、消費者の35%から55%が「今後も宅配を利用するつもりだ」と回答したという最近の調査結果を引用した。

「プラットフォーム経済は急速に成長しています」と同氏は付け加えた。「世界的に見ても、オンライン労働プラットフォーム市場は2年間で30%成長しています。この成長は今後も続くと予想され、プラットフォームを介して働く人の数は、今後数年の間に著しく増加すると考えられています」。

「我々は欧州の価値観を中心に据え、欧州のデジタルの未来をかたち作るために取り組んでいます」と同氏は続け、EUの施策リストにある幾多ものデジタル規制に触れた。幾重もの規制網を使い、欧州委員会が社会的に許容される公正な運用の枠組みにプラットフォームの巨大企業を縛りつけようとしている様子を暗黙のうちに示したのである(ただ、実際にはまだこうしたEU規制は行われていない)。

「12月に提出されたデジタルサービス法案とデジタル市場法案は、テクノロジーが基本的な権利を侵害するリスクがある場合に、消費者としての私たちを保護することを目的としています」と同氏は述べる。「4月には2020年発表した人工知能に関する白書のフォローアップを行い、今後の提案では同様に、市民としての私たちを保護することを目的としています。公平性と欧州の価値観の統合は、夏までに予定しているデジタル税に関する次期提案の推進力となるでしょう」。

「私たちは、デジタルトランスフォーメーションが持つ大きな可能性を社会や経済と調和させようとしています。これらの取り組みはすべて、こうした意欲の現れです」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EUギグワーカー

画像クレジット:Jaap Arriens/NurPhoto via Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)