UberがEUで「Prop 22」スタイルのギグワーク基準を求めロビー活動を展開

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Uber(ウーバー)は、ギグワーカーの労働条件を改善する新しい規則が必要かどうか判断するためにギグプラットフォームの労働条件の精査に乗り出したEUの議員に接触している。

配車サービスとオンデマンドのフードデリバリーの巨人は現地時間2月15日、白書を発表し、プラットフォーム業務の「新しい基準」と称するものに関して、欧州の政策立案者に対しロビー活動を展開している。

白書の中でUberは、ギグワーカーが得るメリットの一部を拡大する必要性を説き、ドライバーとライダーが労働者・従業員として再分類された場合、労働者としての権利のフルスイートに資金を供給しなければならないという (Uberにとっての)悪夢のシナリオを回避しようとしている。

Uberはまた、団体交渉の問題を切り離して、政策の議論の方向性を誘導しようとしている。白書では、アプリベースの労働者がより「意味のある」代表権を必要としているという考え方を提案し、その代表は、Uberのいう多様な(つまり個別化された)ニーズを反映するために必要であり、プラットフォームと労働者の間の継続的なエンゲージメントのさまざまなチャンネルを介して実現できることを示唆している。

Uberの白書は、タイトルの「A Better Deal(より良い取引)」を基軸に構成されている。アプリベースの労働者にとってより公平な取引を確保するために新しい法律が必要かどうかを議員が検討しているため、配車サービスの巨人は紛れもなく、自社のビジネスにとって可能な限り最善の取引を引き出そうとしている。

EUの議員が今後数カ月の間に注意を払う必要があるのは、プラットフォームで働く労働者がどのような取引をしているのか、そして大手テクノロジー企業の詳細かつ基調的なPR文書を掘り下げていく中で、欧州お得意の社会契約を損なうことなく、大勢の「契約社員」の条件を改善するための法的枠組みを作る必要があるのか、作るならどのように作るのかという点だ。

Uberは2020年、同社の専門領域に属するギグワーカーを再分類しようとする法案の打破に成功した後、カリフォルニア州の「Prop 22(プロポジション22)」がもたらした成果を世界的に推し進めていくと述べている。

しかし、欧州の法的、社会的な状況は米国とは大きく異なっている。欧州では、多くのプラットフォーム企業が雇用分類の問題で訴訟に直面しており、裁判所は労働者に有利な判決を下すことが多い。

金曜日(2月19日)には、英国最高裁判所が、元Uberドライバーらのグループによる、Uberの自営業者としての分類に関わる長期の係争に対して判決を下すと予想されている。つまりUberは、欧州の裁判所における、これまでで最大の試練に直面しているということだ(英国は現在EU圏外にあるが、この訴訟の結果は欧州全体の裁判に影響を与える可能性が高い)。

既存の雇用法をより明確にし、施行することは、社会を犠牲にし(税収の損失)、安定した雇用(とそれに付随する権利)を奪われた個々の労働者の労働力から利益を得るために、アルゴリズムによるマイクロマネジメントという利己的な分類を利用して法制度の隙間をハイテクハッキングしてきた大手プラットフォームを、欧州の政策立案者が取り締まるための方法になり得る、と批判的な人々はいう。

同時に、オンデマンド空間での統合化が進むことにより、大手ギグ企業の力がさらに強くなっている。では、ひと握りのメガプラットフォームが競争相手との統合を急ぎ、改善の可能性が閉ざされていく中で、労働者を守るための法の介入がなければ、プラットフォームの労働者は「意味のある」代表権や「改善された」条件をどのように期待できるのだろうか。

2月15日、Uberの白書に付随するブログ記事の中で、CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は、ギグワーカーの権利に関する大手テクノロジー企業の好ましい「新しい基準」は「ドライバーや宅配業者が最も重要だという原則に基づいていることであり、その原則とは、働きたいときに、働きたい場所で働ける柔軟性とコントロール、適正な賃金を得ること、適切な福利厚生と保護を受けること、そして意味のある代表権を得ること」であると繰り返し述べている。

「実質的な変化をもたらすためには、改革は業界全体を対象としたものでなければならず、すべてのプラットフォーム企業は、どのアプリを使っていても労働者が保護されるように、業界全体で標準化された福利厚生と保護を提供することが求められる」とコスロシャヒ氏は続ける。

プラットフォームの福利厚生に関する普遍的な基準は進歩的に聞こえるかもしれないが、ギグワーカーのための「妥当な」福利厚生という概念は、合意された雇用基準をはるかに下回る水準にこの労働力を固定してしまい、アルゴリズムによって永続的な管理の対象となる労働者にとって、より良い取引の可能性を閉ざす危険性がある。

このような業界全体の基準は、ギグプラットフォームが労働者へのより良い取引の提供をめぐってお互いに競争する必要性を損なうことにもなりかねない。そのため、政策立案者は、支援されるべき労働者にとって不利な取引が固定化されることのないように、慎重に事を進める必要がある。

Uberの白書は、労働者のための詳細な「取引」モデルを定義するのではなく、現時点ではいくつかの主要な原則を提唱し、利害関係者と協議して推し進める必要があると同社は述べている。

また同社は、プラットフォームが依然としてEU各国の寄せ集め規則の影響下に置かれる可能性が高いことも認識しているという。また、欧州委員会が法制化を決定したとしても、そのような法律が施行されるまでには何年もかかるため、判例が非常に重要であることに変わりはない。しかし、加盟国がギグワークの分野に関して取るアプローチや適用する政策に対してトップダウンの圧力となり得る包括的なEUガイダンスを、Uberが自社に有利になるように誘導しようとしていることは明らかだ。

大手プラットフォームは長い間、雇用の分類を「柔軟性と利益」の問題に落とし込もうとしてきた。労働者は何よりも柔軟性(プラットフォーム各社は「いつ働くかを選択できる能力」を意味すると定義している)を重視していると主張しているものの、同時にデータフィケーションやトラッキングを駆使して非雇用労働力のハイテクなマイクロマネジメントによる個人のサービス提供を管理している。

実際には、確かにそのようなプラットフォームにログオンして「好きな時に」働くことはできるが、強制最低賃金のような法的保護がなければ、ギグワークの「柔軟性」が個人の生活を支えるだけの収入になる保証はない。見方を変えれば、頼れる他の収入源がない限り、プラットフォームの労働者には、いつ、どのように働くかを選択する柔軟性や自由は、事実上ないかもしれないことを意味する。

そのため、プラットフォーム各社はしばしば「故意に搾取するように設計されている」と非難されているビジネスモデルの逆説的な防衛を推進している。批判的な労働組合はそれを人間の労働力の搾取や抽出だと指摘し従来型の雇用によってもたらされる社会契約と安定性を蔑ろにするプラットフォームを非難している。

Uberの白書の中で「雇用はプラットフォームの労働者が求める答えではない」と主張を展開するセクションでは、このテクノロジー界の巨人は「柔軟性」がそのてがかりだと述べている。つまり、そのモデルは「ドライバーには、需要に応えるためアプリに接続する自由や、望めばより静かな時間を過ごす選択権がある」ことを意味するという。しかし、ギグワークで収入を得て生計を立てる必要がある人たちは、より静かな時間を過ごす「選択」はできないかもしれない。そんなことをすれば収入が減ってしまう。ではUberは、実際にどの程度の柔軟性(つまり良識的な賃金)を提供しているのだろうか。

(関連する点として、これらの大手ギグ企業の多くは、自動化技術の開発推進のために多額の資金を投入してきた。雇用にともなう税金を払わないことで節約したお金が、完全に人間の労働者に取って代わろうとすることに注ぎ込まれているということだ。そのような所に尊厳はあるのだろうか)

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決断を迫られるギグエコノミー

2019年12月の雇用委員会委員へのミッションレターで、欧州委員会のUrsula Von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、Nicolas Schmit(ニコラス・シュミット)氏に、現行法の執行が機能していることを確認することを含め、プラットフォーム労働者の労働条件を改善する方法を検討するように依頼した。またレターには「尊厳があり、透明性があり予測可能な労働条件は、EUの経済モデルにとって不可欠である」とも書かれている。

シュミット氏は指示を受けてすぐに、プラットフォーム(利益)VS労働者(権利)という構図の論争について、Euractiv(ユーラクティブ)に「プラットフォームに反対しているわけではない」と、バランスのとれた見方を語り、プラットフォームを「EUの新しい経済の一部」とみなし「ギグエコノミーでの優位性を失わないことが欧州にとって重要である」とも主張した。

しかし同氏はまた、ハイテクツールが、新たな「恵まれない」下級労働者を固定化するために使用されることをEUは許してはならないと警告し「19世紀に存在していたような労働条件で21世紀の経済を実現するわけにはいかない」と述べている。

欧州委員会が、不明確なプラットフォーム業務の「改善」のループをどのように政策の中に組み入れていくのかは、まだまったく分からない。しかし、フォン・デア・ライエン委員長が指示を出してからは、ここで良い仕事をしなければならないという責務が増しただけだ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、プラットフォーム労働者のための適切な社会的セーフティーネットの欠如がもたらす個人的および社会的なリスクに容赦なくスポットライトを当てているが、同時にその副作用として、オンデマンドのプラットフォーム業務(特に食品や食料雑貨の配達のような分野)は、活況を呈している。

Uberの白書では「独立請負人が最も必要としているときに、福利厚生と保護を確実に受けられるようにする」と記しているように、パンデミックの問題とプラットフォーム事業者が労働者を支援するために「さらに進んで」いく必要性について繰り返し述べている。しかしその一方、同社は、雇用のすべての権利と利益を提供することに反対するロビー活動を行っている。

国際的な法律事務所Taylor Wessing(テイラー・ウェッシング)の雇用グループのシニアアソシエイトであるJoe Aiston(ジョー・エイストン)氏は、Uberが白書の中で、ギグワークの「新しい基準」を求めてロビー活動を行っていることについて「同社が最低基準の福利厚生を求めるのは理に適っている」と話す。そして「適当かつ最低限の保護であれば、ビジネスモデルに大きな影響を与えずに容易に提供できる」と続ける。

「全員を従業員や労働者として再分類することを強いられれば、ビジネスモデルは大きく混乱することになり、ビジネスの面では当然、相当のコストアップにつながるだろう。最低賃金や休日出勤手当のような直接的な影響だけでなく、税金の観点でも、間接的に波及的影響を受けるはずだ」。

そして、労働者の状況分析によってギグワーカーが自動的に税務上の目的で従業員として分類されるわけではないが、エイストン氏は、判断基準は「かなり類似している」という。したがって、雇用の分類をめぐる訴訟は、Uberの税務上の立場、ひいてはその(潜在的な)収益性に明らかなリスクをもたらす。

ギグワークをどのように改善するかという問題について、欧州委員会は2020年9月にプラットフォーム業務に関する会議を開催するなど、最善の進め方を模索しながら情報を集めてきた。しかし2021年、EUの議員には大きな決断の時が迫りつつある。

今月末、欧州委員会は労働者と雇用主の代表者による正式な協議を開始する予定だ。そして、Uberの白書は、明らかにそのプロセスを対象としているため、プラットフォームの労働条件の「改善」に影響を与えようと、いくつもの私利的な画策が本格的に始まることになるだろう。

政策的に何が行われるのか、確かなことはまだ明らかになっていない。しかし、2020年3月、欧州委員会は285ページに及ぶ調査結果を発表し、プラットフォーム労働者の労働条件に関して特定された「主な」課題として以下のようなものを挙げた。雇用の状況、労働条件について労働者が利用できる情報、紛争解決、集団的権利および差別禁止などだ(つまり、考えられるほぼすべての課題が挙げられたということだ)。

実際に研究結果を掘り下げてみると、低報酬と不安定な収入についても、非常に詳細に議論され、それらはプラットフォーム労働者にとっての「重要なストレス要因」とされている。

賃金は、確かに議論の重要な争点として提起されているようだ。特に、フォン・デア・ライエン委員長はシュミット氏への指示の中で「EUのすべての労働者が公正な最低賃金を確保できるよう」法的手段の提案を求めていた。

収入が労働者の法定最低賃金を下回る可能性があるというのは、プラットフォーム業務に対するよくある批判である(ギグワークによる賃金は、通常、ギグの注文や商品の受け取りを待つために費やしたダウンタイムすべてが対象となるのではなく、仕事をしている間や配達の完了時にのみ収益が上がるためだ)。したがって、EUの公正な最低賃金の対象となる「すべての労働者」が「プラットフォーム労働者を除く」という意味に終われば、欧州委員会はテクノロジーを利用した「恵まれない」労働者層を固定化してしまうことになる(シュミット氏が、そうなってはいけないと言ったことに反して)。

白書での賃金問題に対するUberのアプローチは、プラットフォーム労働者の「公正で透明性のある収益」(または「適正な」賃金)についてのみ語ることで、最低賃金の問題を回避している。

このテクノロジー界の巨人はまた「プラットフォーム労働者の報酬のあり方における変革を提言し業界をリードする準備がある」と述べている。しかし、業界全体で利用できる(「すべてのプラットフォーム企業が独立請負人に提供しなければならない業界全体の福利厚生と保護を備えた柔軟な収入の機会のための」)枠組みが求められていない限り、報酬については譲歩しないことを明らかにしている。

「これには、最近カリフォルニア州で導入されたProposition 22法のような普遍的な基準が含まれるかもしれない。または、プラットフォーム労働者、政策立案者、業界の代表者が協力し合い、業界のために報酬の原則を設定するという、社会的対話の欧州モデルに基づいたものかもしれない」とUberは示唆している。

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Uberは次のように述べている。「例えば、イタリアでは、フードデリバリー業界と一般労働組合が、配送の自営業者の地位を確認する合意に署名する一方、業界に対して、収入、傷害、第三者保険、訓練に関する規定を含む配送業者の労働基準を提供することを要求している」。

Uberはさらにこう付け加えている。「重要なことは、どのような報酬モデルであっても、どのプラットフォームで働くことを選択したとしても、すべての独立請負人に一貫した収益のベースラインを保証するために、業界全体に渡る公平な競争の場に基づいていなければならない」。

そして、この問題があらゆる面で大きな賭けであることは明らかだ。ギグワーカーの権利、大手プラットフォームの利益、そして社会的に進歩的なアジェンダを主張するEUの議員の信頼性がかかっている。

しかし、現時点でEUが法案を提出するかどうかについても100%確証があるわけではない。欧州委員会の広報担当者は、プラットフォームと労働者がこの不明確な労働における「より良い」労働形態のあり方について合意に達することができれば、政策決定は見送られる可能性があると示唆した(しかし、まあ、本当にそうなるのかどうかは運次第だ)。

2021年2月後半の開始が予定されている「社会的パートナー」の正式な協議は、欧州委員会の広報担当者によると、2つの段階で構成されている。

「第1段階では、プラットフォームを介して働く人々の労働条件を改善するためのEUイニシアチブの必要性について意見を求める。第二段階では、そのようなイニシアチブの内容について協議される」と同報道官は述べ、欧州委員会は「社会的パートナーの回答を慎重に評価する」と指摘した。

「社会的パートナーが、協定の交渉を行うことを決定しなければ、欧州委員会は2021年末までに立法的なイニシアチブを打ち出す予定だ」と同報道官は付け加えた。

報道官は、課題が特定され「改善が必要かもしれない」政策分野には「不明確な労働条件、契約の約定の透明性と予測可能性、安全衛生上の課題、社会保護への適切な利用機会」が含まれていることを確認した。

「不明確な労働条件」に低く不安定な報酬が含まれるかどうか尋ねられた同報道官は「申し訳ないが、このイニシアチブに関して、現段階で私たちが言えることは[前述のリスト]だけだ」と言って、明確な回答を避けた。

雇用形態

欧州委員会が主導したギグワーカーの状況に関する調査の最後にまとめられた、いくつかの政策的考察の中には、雇用形態が依然として中核的な課題であるとの記述がある。

「一部のプラットフォームは、自営業者と従業員の狭間で運営され、明確に雇用主の責任を負わず、プラットフォームの労働者を最大限にコントロールすべく業務形態を調整しているようだ」と報告書は所見を述べ、雇用分類の境界がどこにあるのかを明確にする判例の(緩慢な)ペースと「プラットフォーム業務を特徴づける急速に変化するビジネス慣行」との間にギャップがあることを指摘している。

「加盟国が[法律や判例を通じて]従業員の概念を拡大するか、プラットフォーム労働者の雇用形態に関する反証を許す推定を導入しない限り、プラットフォームは、自営業者の労働力への依存を継続または拡大する可能性が高い」と続けている。

「個々のケースでの再分類は、EU法や国内法に基づいて行われる可能性があるが、それが主要な動向を劇的に変える可能性は低い」。

また「プラットフォームに経済的に依存している自営業のプラットフォーム労働者の保護を目的とした措置は、『労働条件』に関する最低基準を確保することが望ましいと思われる」と報告書は付け加えている。さらに、関連する「政策的含意」は、EUと加盟国が「どのプラットフォームの業務形態が自営業のプラットフォーム労働者に適合しないか明確にすることを検討すべきである」と示唆している。

自営業審査の明確化、あるいは審査で不合格とすべき業務形態の明確化は、EU全体の政策立案者が取り掛かるべき法案の1つだ。とはいえ、この件についても、ギグエコノミーに関するフィードバックを受けて欧州委員会がどのアイデアを支持するかは、今後の動向を見守る必要がある。

雇用分類の判例の面では、まもなく英国で、Uberの配車サービス事業に関連する大きな判決が下される。Uberのドライバーを自営業者として分類することに関して2016年に始まった雇用法廷での係争が2月19日に最終判決を迎えるのだ。英国最高裁は、Uberが過去5年間に何度も控訴しては敗訴してきたこの種の訴訟に対して判決を下す。

最高裁の判決は、ロンドンのプラットフォーム上で営業しているとUberがいう約4万5000人のドライバーのみならず、英国全体にも影響を及ぼす可能性が高い。

また、EUの政策立案者がギグワーカーの労働条件の改善に積極的に取り組んでいることを考えると、この判決の影響はそれ以上に波及する可能性もある。

2020年、フランスの終審裁判所は、元Uberの運転手を自営業のパートナーではなく従業員とみなすべきだとの判決を下した。この判決では、会社とドライバーの間に従属関係があることを認め、ドライバーは、価格設定、顧客基盤の構築、業務の遂行方法に関する選択の権限がないなどの問題が指摘された。そして「ドライバーは管理された輸送サービスに参加しており、Uberは一方的に運営条件を定義している」と書かれている。

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しかし、Uberは、2017年に提訴されて以来、ドライバーがUberの利用方法をコントロールできる範囲が広がり、今では「より強力な社会的保護」(無料の傷害保険など)を受けることができるようになったことを挙げて、自社の業務形態に多くの変更を加えてきたと主張し、この事例が前例となることを否定した。

この事例は、苦情ベースの判例に頼るだけでは複数のプラットフォーム労働者に対応する首尾一貫した成果を得ることは難しいことを浮き彫りにしている。

このような係争において、最終的な判決が下されるまでに時間がかかることは、プラットフォームにとっては、少なくとも対象となる争点はもはや適用されないと主張できるよう、業務形態を再構成するのに十分な時間を得ることにもなる。

そのため、ギグワーカーの労働条件の改善を確定するための法整備が確かに必要かもしれない。

エイストン氏は、そのような状況において、結局のところ要求される変更はUberにとって「受け入れられる」ものではないかもしれないとしつつも「状況が変わる可能性があるのは事実だ。もしUberが『最高裁の判決』を受けてビジネスモデルを機能させる方法を大幅に変更した場合、同社はドライバーの定義を再び都合の良いように変えてくる可能性がある」と語る。

「我々は、最高裁がどの争点についてどのような措置を命じる判決を下すか見守る必要があるが、Uberはビジネスモデルにおいて、業務の機能に重大な影響を与える恐れがある変更を加えることが有効かどうかの判断をしなければならないだろう」と同氏は続け「私は、Uberが、おそらく判決に備えて、ビジネスモデルが機能する変更をすでに整備しているのではないかと見ている」と付け加えた。

「つまり、判例は背景に特化しているので、非常に特殊な判例に頼るのではなく、実際の法律と具体的な定義が鍵を握っていると言えるのではないだろうか」と同氏は語った。

委員会の調査では、この分野での政策立案を阻むいくつかの課題にも言及されている。そこには、プラットフォーム業務の明確な定義や、エビデンスに基づいた政策立案のための十分かつ包括的なデータ収集など、基本的なことも含まれている。

エイストン氏は「一旦、誰かが独立請負人ではなく労働者として分類されると、労働者の能力と団体交渉の権利を強化させる可能性が生じる。そのため、最高裁の判決がUberに不利なものとなった場合、それは別の潜在的波及効果をもたらす」と述べ「ドライバーやライダーの団体交渉能力の向上につながる可能性があるため、関連する組合が強い関心を示していることでもある」と続ける。

一方、欧州では、国レベルでの規制や法制化の試みが始まっている。例えばスペインでは、政府が数年前から「falsos autonomos(不当な自営業者扱い)」を受けている労働者を利用するプラットフォームの厳重な取り締まりを目指しており、プラットフォーム業務に適用し摘発するための労働法の改革を進めているところだ。

最近の報道によると、そうした国家的な労働改革プロセスは、配送労働者の雇用をプラットフォームに対して義務化する結果となる可能性がある。そのような動きがあるため、大手プラットフォームは、EU全体に適用される「もっと柔軟な」規制を求めて、欧州委員会へのロビー活動をさらに熱心に行うようになっている。少なくとも国内法が別のEU加盟国の規制に及ぼす影響の範囲を制限し、プラットフォームのビジネスモデルへの潜在的なダメージを限定することを狙っているのだ。

英国政府もまた、法制化が近づいていることを示唆している。政府は2017年まで遡り、ギグワークの調査を含め、近年の労働慣行に関する大規模な調査を実施した。Taylor Review(テイラー・レビュー)と呼ばれるこの調査は、ギグワークをより適切に反映させるために、現在の(英国の)「労働者」の法的分類を更新すべきだと提言している。また、同調査の報告書は「従属契約者」がより適切な枠組みであることを示唆しており、プラットフォームが労働者に対して行使するコントロールに、より大きな焦点を当てるべきとしている。

テイラー・レビューは華々しく公開され、労働者の権利を強化するための政府の計画につながった。しかし、2018年末に発表された改革パッケージ「Good Work Plan(良質な労働計画)」は、貧弱で実体を欠いていると労働組合によって即座に却下された(対して政府はこの計画を労働者の権利の大規模な拡大として宣伝している)。今のところ、ギグワークの問題について具体的に取り組むために多くを成し遂げたようには見えない。

英国政府が2018年に計画の一環として発表した「現代の雇用関係の現実を反映させる」ために雇用形態審査の明確性の向上を目的とした法整備を進めるという公約は、まだ何も実現していない

計画されていた立法がパンデミックの影響で遅れている可能性はある。エイストン氏はまた、Uberの裁判で最高裁が判決を下すまで、政府が方針の公表を控えている可能性もあると示唆している。したがって、政策決定に影響を与えようとUberがEUに対して行っている巧妙なPRにもかかわらず、欧州の判例や世論が下す判断に比べれば、Uberはこの問題について大した口出しはできないかもしれない。

「最高裁が、ドライバーは労働者だとする『Uber』に不利な判決を下した場合、同社にとっては、少なくとも今より少し困難な状況になるだろう。なぜなら、同社は、少なくとも英国では、すべてのドライバーが労働者であることを受け入れるか、判決の根拠を精査し、その根拠から逃れられるようにビジネスモデルを調整するかのどちらかを決定しなければならないからだ」とエイストン氏は話す。

「Uberは明らかにドライバーを労働者ではなく自営業者として扱い続けたいと考えているので、後者を検討しているかもしれないが、PRの観点から考えると、それは同社にとって良いことではないと思う。ドライバーが労働者であると判断されたら、今はそれを受け入れ、ドライバーがその権利を持っていることを認めて先に進む必要があるというのも1つの考え方だ」。

同氏は、ギグエコノミー企業の典型例として、Uberは欧州でドライバーやライダー向けの無料または低価格の保険などの福利厚生パッケージを整備し「良い」会社であり、人を大切にする姿勢を示すことで「自営業」の請負業者が労働者として再分類されるリスクの「芽を事前に摘み取ろうとしている」と指摘している。

このような取り組みでは、再分類されたプラットフォーム労働者が得るであろう権利を網羅することはできず、配車サービスの利用者を味方につける必要もあるため、ここでさらに動きがあるかもしれない。

「ギグエコノミー企業は極端なことは避け、ドライバーが労働者であることは認める、だから最低賃金や休憩時間などの権利があることも認める、という傾向がある。ギグエコノミーのビジネスにも気を配る必要がある。そういった観点から見ると、競争は激化するなるだろう」とエイストン氏は示唆する。

「人々が労働者であることを認めるかどうかは別として、ギグエコノミービジネスは、人々を大切にする義務があることを認識し始めているのだろう。明らかにそれは、人々がいくらかの利益を得ることにもつながるが、同時に、PRの面や会社の企業イメージの観点でもプラスに働く」。

また、注目すべき点は、英国の雇用法がいくつかの国の雇用法よりもニュアンスに富むものということだ。それは、英国ではすでに「労働者」(すなわち、従業員でも自営業者でもない)の概念を持っているからだ。一方、エイストン氏は、他の欧州諸国(そして米国も)での分類は、より限定されている(つまり、被雇用者または自営業者の分類のみ)と指摘する。

「欧州の裁判所は、英国の最高裁判決などに注目するだろう。その判決に縛られるわけではないが、その行方は欧州全域で同様の判決の方向性に少なくとも何らかの波及効果を及ぼすことは想像に難くない」と同氏は示唆する。「留意すべき興味深い点は、英国には労働者の中間的な分類があるということだ。一方、ほとんどの欧州諸国では、自営の請負業者か従業員のいずれかしかない。つまり、欧州の他の国ではもっと大きな二分法になる」。

「英国には、この中間的な定義があるため、ある意味ではより良い状況にある。そのため、英国の裁判所は再分類を命じやすい立場にあるという意見もあるかもしれない。最高裁が[Uberの雇用裁判の係争に関して]ドライバーは事実上労働者であるという控訴裁判所と同様な判決を下した場合、最高裁による判決と控訴裁判所による件の判決との間に相違があるかどうかを見きわめることが重要だ」と同氏は付け加える。

「英国の場合は、上記のような背景があるため、裁判所がドライバーを、一部の保護が適用されるこの中間のカテゴリーに当てはめるべきだという判断を下すのが、他国よりも容易だった」と同氏は説明する。

EUの政策立案者が「労働者」に似たEU全体の基準を策定することを決定した場合、そのような決定はUberなどに大きなチャンスとリスクをもたらすことになるだろう。雇用訴訟が業界の中核的なビジネスモデルに与える脅威を軽減する手段として、利益に関する主要なパラメータに効果を及ぼす(そして、税負担の増加を回避する)チャンスがある。

ギグワーカーに提供される保護レベルの拡大には明らかにコストがかかるだろう。しかし、大手テクノロジー企業にとっての問題は、これらのコストをどれだけ削減できるか、つまり欧州全域で営業を行う際に「問題に直結する」最低限の基準は何か、ということになる。

あるいは、EUの議員は、適切に「公正な」運用上の雇用の制限を確立する方法として、プラットフォームの労働者に対する「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のリストを規定し施行することを試みることもできるだろう。これは逆に、その利益(多くの場合、この時点ではまだ理論的なものである)が、従業員ではないとされる多くの人々から提供される豊富で低コストの労働力に依存している大手オンデマンド企業のビジネスモデルを破壊する可能性がある。

プラットフォームに対する具体的な運用要件のリストを設定することは、欧州委員会が12月にEUの議員らによって策定された包括的なプラットフォーム規制(デジタル市場法)の中で提案していることとまったく同じであり、他のビジネスとの公正な取引(およびデジタル競争の促進)を推進するために最も市場力のあるプラットフォームに介入することを目的としている。

ギグプラットフォームについても、労働者のために公正な取引の確保を目的とした同様の介入が考えられる。

Uberなどにとっては、何十万人ものオンデマンド労働者を従業員名簿に載せることを法的に要求されることに比べれば、確かに望ましいことだろう。しかし、それは、これらの大手企業が規模拡大のために利用してきた、ドライバー労働力のタダ乗りともいうべき手法に終止符を打つことにもなるだろう。

今回の件で欧州におけるプラットフォーム経済が終わりを迎えることはないだろうが、調整にかなりの時間がかかることは避けられないように見える。ビジネスモデルは雇用法の変化(および、またはより良い施行)に適応する必要があるだろう。

価格など、コントロール可能な条件を減らしつつ従業員や労働者とは別の業務形態を維持しようとするのか、あるいは人々が労働者であることを受け入れ、それに応じてビジネスモデルと価格構造を適応させるのか(例えば、ライバルのプラットフォームで働く権利を制限するなど)、ギグエコノミー企業はビジネスモデルを調整することの長所と短所を秤にかけなければならないだろう、とエイストン氏は語った。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:UberEUProp 22ギグワーカー

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)