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IBMが量子コンピュータQuantum System Oneを初めて民間の医療機関に導入

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IBMは、近年、同社製のQuantum System One(クアンタム・システム・ワン)を世界各地に設置してきたが、米国時間3月30日、Cleveland Clinic(クリーブランド・クリニック)との新しい10年間パートナーシップ契約により、米国の民間セクターとしては初めてとなる設置を発表した。これは、IBMが自社施設以外で初めて設置される量子コンピュータというだけでなく、医療機関が購入し導入する初の量子コンピュータでもある。この契約により、クリーブランド・クリニックはIBMが間もなく運用を開始する次世代型1000量子ビットを超える量子コンピュータへのアクセスも可能になる。

今はまだ、商用量子コンピューティングはほんの初期段階であり、現在、ほとんどのユーザーは量子システムにクラウドを介してアクセスしている。実験としては、それで十分だ。しかし、量子コンピュータをオンプレミス(部内型)で設置し、システムをフルアクセスで使いたいと考える研究機関や商用ユーザーが次第に増えている。

今回の新しい契約は、IBMとクリーブランド・クリニックとの長期的なパートナーシップの一環だ。これには、IBMの高性能コンピューティングのためのハイブリッドクラウドのポートフォリオとAIツールも含まれる。またこのパートナーシップは、クリーブランド・クリニックが新しく開設するCenter for Pathogen Research & Human Health(病原体研究およびヒトの健康センター)の基礎ともなる。この施設は、オハイオ州、非営利経済開発団体JobsOhio(ジョブズオハイオ)、クリーブランド・クリニックによる5億ドル(約550億円)の資金援助に支えられている。

「今回紹介するのは、専用の完全なシステムを導入する初の【略】民間セクターまたは非営利団体と呼びたいところですが今はまだ【略】非政府機関ですが、本当に重要なのは、数十年間にわたる私たちの約束です」とIBM Research(IBM基礎研究所)の上級副所長でありディレクターのDario Gil(ダリオ・ギル)氏は私に話した。「ある意味、彼らは我々のロードマップ全体にわたるパートナーです。つまり、単に領収書をもらって、一連の量子コンピュータと、2022年には次世代量子コンピュータにアクセスできるようになるというだけの話ではありません。また彼らは、最初の1000量子ビット以上のシステムが欲しいと申し込んだ最初の人たちなのです」。

現在、量子コンピューティングに大きく投資できるのは、かなり先を見通せる団体だと彼は指摘する。国や州が、多岐にわたる広範な分野での可能性を有するこの生まれたばかりのテクノロジーに取り組み始めたのは、そのためでもある。だが、非営利団体も同様の賭けに出た。「彼らには、非常に高レベルの志があります。未来を見据えているからです」とギル氏は、クリーブランド・クリニックのリーダーシップについて語った。

契約の一部として、クリーブランド・クリニックの研究者たちは、IBMのクラウド内にある量子ポートフォリオ全体にアクセスできるようになるとギル氏はいう。IBMは、センターに内部設置された量子コンピュータの保守管理とサポートを行うものの、システム自体はIBMの所有となる。これはドイツや日本の政府系研究所との契約に似ていると彼は説明する。

「その保守管理とサポートは極めて重要です」とギル氏は、そうする理由について語った。「そのためには我々と、我々の専門性が必要です。しかもこれは、IBMの中でも最もセンシティブなテクノロジーでもあるため、私たちは、このマシンのセキュリティと安全の確保に、特に厳格に目を光らせる必要があるのです」。

契約の一環として、IBMとクリーブランド・クリニックは、同クリニックの研究者が量子コンピュータを、さらにAIと高性能コンピューティングを扱えるよう技能を構築することになっている。

「この革新的なコラボレーションを通じて、私たちは未来を現実にする特別なチャンスを得ました」と、クリーブランド・クリニック院長でCEOの医学博士Tom Mihaljevic(トム・ミハリェヴィッチ)氏は話す。「この新しいコンピュータ技術は、生命科学における発見に革命を起こし、結果的に人々の生活を向上させます。この発見加速装置によって、当院の名だたるチームは未来を見据えたデジタルインフラを構築し、医療の変革を推し進め、同時に未来の働き手を訓練し、経済を発展させます」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IBM量子コンピュータ

画像クレジット:IBM Research / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:金井哲夫)