ネットサービス
Kustomer(企業)
Facebook / フェイスブック(企業)

フェイスブックによる顧客サービスプラットフォーム「Kustomer」買収にEU介入の可能性

次の記事

インドのハイエンド層にフォーカスしたクレジットカードを提供するCREDが新規ラウンドで評価額2415億円に

欧州連合(EU)は、Facebook(フェイスブック)による顧客サービスプラットフォームKustomer(カスタマー)の10億ドル(約1100億円)の買収に関して、EUの合併規則による付託を受けて捜査に入る可能性がある。

欧州委員会の広報担当者は、EU会社合併規則第22項に基づき、オーストリアから本買収提案の付託申請を受けたことを確認した。これはEU加盟国が国の届出義務条件に満たない取引(正式な届出義務を課すためには当該企業の売上が低すぎる場合)に対して警告を与えることのできる仕組みだ。

関連記事:Facebookが過去最大1000億円でスタートアップのKustomerを買収、カスタマーサービス事業の強化を目指す

委員会広報担当者は、本案件がオーストリアで現地時間3月31日に提出されたと語った。

「第22項の付託請求を受理した後、委員会はその付託請求をただちに他の加盟国に通知しなくてはなりません。加盟国は委員会から最初の通知を受けてから15就業日以内に元の付託請求に加わることができます」と広報担当者は本誌に伝え、次のように付け加えた「他の加盟国の付託請求参加期限が満了した後、委員会は請求を受け入れるか却下するかを10就業日以内に決定します」。

欧州委員会がこの買収案件を捜査するかどうかは数週間のうちにわかる。捜査は数カ月にわたる可能性があり、そうなればFacebookが自らの帝国にKustomerのプラットフォームを引き入れる計画は遅れることになる。

FacebookとKustomerには、進展状況についてのコメントを求めている。

ソーシャルネットワークの巨人による顧客関係管理プラットフォーム買収計画が2020年11月に発表されるやいなや、FacebookがKustomerの所有する個人データで何をするのかという懸念が直ちに浮上した。Kustomerのサービス分野が、健康医療、政府、金融サービスなどに及ぶことから、データにはセンシティブな情報が含まれている可能性がある。

2021年2月、アイルランド人権委員会(ICCL)は欧州委員会および国とEUのデータ保護機関に、提案された買収に関する懸念を提起し「データ処理に起因する結果」の監視を要請するとともに、Kustomerの利用規約がユーザーデータを広い範囲の目的に利用を許していることを強調した。

「Facebookはこの会社を買収しようとしている。『当社のサービスの改善』(Kustomerの規約にそう書かれている)の範囲がそもそも曖昧だが、Kustomerが買収されればさらに広がる可能性が高い」とICCLは警告する。『当社のサービス』は、例えばFacebookのあらゆるサービスやシステムやプロジェクトを意味すると取られかねない」。

「欧州司法裁判所の判例法および欧州データ保護委員会は、『当社のサービスの改善』および同様に曖昧な記述を『処理目的』として認めていない」と付け加えた。

またICCLは、買収後使用されるユーザーデータの処理目的を確認する質問をFacebookに送ったと語った。

ICCLのJohnny Ryan(ジョニー・ライアン)上級フェローは、一連の質問に対してFacebookから何ら回答を受け取っていないとTechCrunchに伝えた。

本誌もFacebookに対し、Kustomerを買収した後同社の所有する個人データをどう扱うかについて質問している。

ちなみに、最近のGoogle(グーグル)によるウェアブルメーカーのFitbit(フィットビット)の買収は、EUの数カ月にわたる競争に関する監視を受け、テック巨人がさまざまな譲歩、たとえばFitbitのデータを10年間広告に使用しないことなどに同意することで、ようや当局に承認された

関連記事:EUがグーグルのFitbit買収を承認、健康データの広告利用を10年間禁止することで合意

これまでFacebookによる買収は、概して規制当局のレーダーにかかることなく進められてきた。約10年前、同社はライバルのInstagramとWhatsAppを買収してソーシャル世界を支配した。

しかしその数年後、同社は「誤解を招く」書類提出について、EUに罰金を払うはめになった。Facebookは、WhatsAppとFacebookのデータを結合させたが、当局にはそれは不可能だと伝えていた。

あまりにも多くのデータスキャンダルがFacebookと密接に繋がっている中で、巨人は顧客の不信を背負い、運営に対するはるかに厳しい監視を受けている。そして今度はCRM会社を買収してB2Bサービスを拡大する計画にも横槍を入れると脅されている。こうしてFacebookは「move fast and break things(すばやく動いて破壊)」した結果、モノを破壊するという評判のためにゆっくり動かなくてはならなくなった。

【更新】Facebookはその後広報担当者の名前で以下の声明を送ってきた。

「この契約はダイナミックで競争の激しい分野において、ビジネスと消費者にさらなるイノベーションをもたらします。より早く、質の高い顧客サービスをいつでも必要な時に提供することで、多くの人々が利益を受けます。FacebookとKustomerがこの競争促進的契約を通じて、より多くの選択肢とよりよいサービスを提供することを規制当局に明示できると期待しています」

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookKustomer買収欧州連合

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook