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データセンターの膨大な電力需要を補うための液浸冷却技術にマイクロソフトが参入

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LiquidStackもやっているSubmerもそうだ。どちらも地球を救うために、機密データを搭載したサーバーを液体に浸しているのだ。そしてついに、データセンターのエネルギー効率を向上させるため、世界最大級のハイテク企業であるMicrosoft(マイクロソフト)が液浸冷却市場に参入した。

マイクロソフトは、水の沸点よりも低い華氏122度(摂氏50度)で沸騰するように設計された自社開発の液体をヒートシンクとして使用し、サーバー内の温度を下げることで、オーバーヒートのリスクなしに、フルパワーで稼働できるようにしている。

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沸騰した液体の蒸気は、サーバーを貯蔵するタンクの蓋にある冷却されたコンデンサーと接触して、再び液体に戻る。

「当社は、本番環境で初めて二相浸漬冷却を行ったクラウドプロバイダーです」。ワシントン州レドモンドにあるマイクロソフトのデータセンター先進開発チームのプリンシパルハードウェアエンジニアであるHusam Alissa(フサム・アリッサ)氏は、同社の社内ブログでそう伝えている。

とはいえ、液冷は熱を移動させてシステムを作動させる方法としてはよく知られているものだ。自動車の場合にも、高速道路を走行する際にはモーターの回転を維持するために液冷が使われている。

テクノロジー企業がムーアの法則の物理的限界に直面する中、より高速で高性能なプロセッサーが求められているため、より多くの電力を処理できる新しいアーキテクチャーを設計する必要がある、と同社はブログ記事の中で述べている。中央演算処理装置に流れる電力は、1チップあたり150Wから300ワW以上に増加した他、ビットコインのマイニング、人工知能搭載アプリ、ハイエンドグラフィックスの多くを担うGPUは、それぞれ1チップあたり700W以上を消費する。

液体冷却をデータセンターに応用した最初のハイテク企業はマイクロソフトではないということ、そして同社が最初の「クラウドプロバイダー」という分類を使用していることが大きな意味を持つということを強調しておきたい。というのも、ビットコインのマイニングには何年も前からこの技術が使われているからだ。実際、LiquidStackは、液浸冷却技術を商品化して大衆に提供するために、ビットコインマイニング業者からスピンアウトしたものだ。

「空冷では不十分」

プロセッサーに流れる電力が増えれば、チップの温度が上がり、冷却を強化しなければチップが故障してしまう。

「空冷では不十分なのです」。レドモンドにあるマイクロソフトのデータセンター先進開発グループのヴァイス・プレジデントのChristian Belady(クリスチャン・ベラディ)氏は、社内ブログのインタビューで説明している。「それが、チップの表面を直接冷却する液浸冷却を導入した理由です」。

ベラディ氏は、液冷技術を使用することで、ムーアの法則の密度と圧縮をデータセンターレベルにまで高めることができるのだ。

エネルギー消費の観点から見た結果はすばらしいものだ。同社は、二相式液浸冷却を使用することで、サーバーの消費電力を5%から15%削減できることを発見した(少しではあるが、ちりも積もれば山となる)。

マイクロソフトが、AIなどのHPCアプリケーションのための冷却ソリューションとして液浸を調査した結果、二相式液浸冷却により、任意のサーバーの消費電力が5%から15%削減されることなどが明らかになった。

一方、Submerなどの企業は、エネルギー消費量を50%、水の使用量を99%削減し、85%の省スペース化を実現したと述べている。

マイクロソフトによれば、クラウドコンピューティング企業にとって、これらのサーバーをより多くの電力を消費する需要の急増時にも稼働させることができれば、柔軟性が増し、サーバーに負担がかかっても稼働率を確保することができる。

マイクロソフトのAzureチームのヴァイスプレジデントを務めるMarcus Fontoura(マルクス・フォントウラ)氏は、同社の社内ブログで「Teamsでは、1時や2時になると人々が同時に会議に参加するため、巨大な需要が発生することが分かっています。液浸冷却は、このような爆発的な作業負荷に対応するための柔軟性を提供してくれます」と述べている。

現在、データセンターはインターネットインフラに欠かすことのできない重要な構成要素となっており、世界はテクノロジーを駆使したほとんどすべてのサービスに依存している。しかし、このようなデータセンターへの依存は、環境面で大きな負担となっているのだ。

Norrsken VCの投資マネージャーを務めるAlexander Danielsson(アレクサンダー・ダニエルソン)氏は、2020年、同社がSubmerに投資したことについて「データセンターは人類の進歩の原動力です。基幹インフラとしての役割はこれまで以上に明らかになってきており、AIやIoTなどの新技術が今後もコンピューティングのニーズを牽引していくでしょう。しかし、この業界の環境負荷は驚くほどの速さで増大しています」と語っている。

海底のソリューション

実験的な液体にサーバーを沈めるというのが問題解決の1手段とされるなか、サーバーを海に沈めることにより、電力をあまり消費せずにデータセンターを冷却するという方法も存在する。

マイクロソフトはすでに過去2年間、海底データセンターを運用している。2020年、同社は実際に新型コロナウイルスのワクチンの過程を支援するための働きかけの一環として、この技術を持ち出している。

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同社によると、梱包済みの輸送用コンテナサイズのこのデータセンターは、必要に応じて回転させ、海面下の深いところで稼働させることができ、持続可能で高効率かつ強力な演算処理を行うことができるという。

この液冷プロジェクトは、マイクロソフトのProject Natickと共通している。Project Natickは、海底データセンターの可能性を探るもので、これは人が現場でメンテナンスをしなくても、潜水艦のような筒の中に密閉された海底で迅速に展開され、何年も稼働することができる。

これらのデータセンターでは、産業用流体の代わりに窒素空気を使用し、ファンと、密閉されたチューブに海水を送り込む熱交換器でサーバーを冷却する。

スタートアップの多くも、海上のクールなデータセンターを狙っている(「隣の海藻は青い」のである)。

例えば、Nautilus Data Technologiesは、1億ドル(約109億3200万円)以上の資金を調達し(Crunchbase調べ)、海底に点在するデータセンターを開発している。同社は現在、カリフォルニア州ストックトン近郊の支流で、持続可能なエネルギープロジェクトと同居するデータセンタープロジェクトを開発中だ。

この二相式液浸冷却により、マイクロソフトは海洋冷却技術の利点を陸地にもたらしたいと考えている。「データセンターを海底に置くのではなく、サーバーに海を運んできたのです」とマイクロソフトのアリッサ氏は同社の声明で述べている。

AzureのプリンシパルソフトウェアエンジニアIoannis Manousakis(イオアニス・マノサキス、左)氏と、Microsoftのデータセンター先進開発チームのプリンシパルハードウェアエンジニアのフサム・アリッサ氏(右)が、マイクロソフトのデータセンターで、二相式液浸冷却槽に入れられたコンピュータサーバーが作業負荷を処理しているコンテナの前を通る(画像クレジット:Gene Twedt for)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Microsoftデータセンター地球温暖化気候変動

画像クレジット:Gene Twedt for Microsoft. / Microsoft

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)