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【コラム】米国の低所得者ブロードバンド支援はLifeline Programの再構築で改革せよ

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本稿の著者Rick Boucher(リック・バウチャー)氏は民主党米下院議員を28年間務め、米国下院エネルギーおよび商業対策委員会の通信・インターネット小委員会の議長を務めた。Internet Innovation Alliance名誉議長。

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「If you build it, they will come(それを作れば、彼らはやってくる)」は、行動を勇気づけるために30年以上繰り返されているスローガンだ。映画「Field of Dreams(フィールド・オブ・ドリームス)」に出てくるこの一文は、強力な格言だが、私はそこに一語加えてみたい。「If you build it well, they will come.(それをうまく作れば、彼らはやってくる)」。

米国のLifeline Program(ライフライン・プログラム)は、低所得世帯が不可欠な通信サービスを利用できるようにするための月額助成制度であり、すばらしい意図の下に作られた。当初の目標は誰もが使える電話サービスの構築だったが、連邦通信委員会(FCC)がこれをブロードバンド中心のプログラムに変更しようとしたことで、達成目標を大きく下回っている。

FCCのユニバーサルサービス管理会社の推定によると、現在同プログラムを利用しているのはLifeline有資格世帯のわずか26%だ。これは、低所得消費者の4人中3人が得られるべき恩恵に預かっていないことを意味している。しかし、これはJor Biden(ジョー・バイデン政権)が最近発表したインフラストラクチャー計画が示唆している、プログラムを廃止すべきだという意味ではない。

むしろ、今こそLifeline Programのブロードバンドへの転換を完了し、支援をブロードバンド市場に見合ったレベルへと引き上げることによって、利用価値を拡大するチャンスである。しかし、この計画に関するホワイトハウスの概況報告書は、インターネット利用サービスの価格統制を推奨し、低所得世帯への女性をフェーズアウトするとしている。これは欠陥のある政策処方箋だ。

もし、米国の世界的競争力を維持し、費用のかかる郊外地域にブロードバンド基盤を築き、国による5Gワイヤレスサービスの迅速な展開を続けることが国家目標なのであれば、政府はインターネットアクセスの価格を決めるべきではない。

手頃価格なブロードバンドを追求するために人為的な低価格を強制することによって、インターネットサービスプロバイダーは、国の通信インフラストラクチャーの要求を満たすための優れたなイノベーションと十分な投資に必要な収益を上げることができなくなる。

代わりにLifeline Programに目標を定めた変更を施すことによって、登録者が増え、現代世界で雇用、教育、医療、政府情報へのアクセスなどに不可欠な電話およびブロードバンドサービスを必要としている貧しい米国の人たちを繋ぐという目標の実現に近づくことができる。

まず、Lifeline Programへの登録をもっとずっと簡単にすべきだ。現在、サービスを利用しようとする個人は、個別の登録プロセスを使う必要がある。SNAP(補助的栄養支援プログラム、旧称フードスタンプ)やMedicaid(メディケイド、医療費補助性度)などの政府支援制度の対象者が、Lifelineに自動的に登録される「coordinated enrollment(連携登録)」を実施すれば、プログラムの深刻な低利用率は解消されるはずだ。

同じ市民たちを複数の政府プログラムが対象としているため、対象プログラムすべてに適用される単一の登録プロセスを作れば、政府・自治体の効率が高まり、機会を逃している国民に手を差し伸べることができる。

2014年にアメリカン・エンタープライズ研究所で講演したFCCのMignon Clyburn(ミニヨン・クライバー)委員は次のように語った。「ほとんどの州では、消費者はすでに、州政府が管理する国の支援プログラムに登録するために所得関連書類を集めル必要があり、プログラムによっては面接もあります。他の政府支援プログラムへの申請と同時にLifelineに登録できるようにすれば、消費者の体験は向上し、私たちの作業効率も高まります」。

次に、Lifeline特典の利用は、SNAPプログラムの電子給付金送金(EBT)カードのように、助成金が電子Lifeline給付カードアカウントを通じて直接入金されるようになれば、消費者にとってずっと簡単になる。Lifeline給付金カードによって、プログラムへの登録が簡単になるだけでなく、低所得層はさまざまなプロバイダーの中から、自分のニーズにぴったり合ったキャリアを選べるようになる。消費者の選択肢が広がることで、プログラムに登録する動機づけが高まる。

そして、Lifelineの現在の助成金、月額9.25ドル(約1000円)は、ブロードバンド契約に十分ではない。助成金が真に意味のあるものになるためには、月額の給付を増やす必要がある。2020年12月、議会は一時的なEmergency Broadband Benefit(緊急ブロードバンド支援)を承認し、パンデミック中、米国の低所得者はブロードバンド接続のために月額最大50ドル(約5400円)、部族所有地では75ドル(約8100円)の減額を受けられるようになった。緊急支援終了後には、ブロードバンド契約料金負担に見合った月額給付金が必要になる。

月間9.25ドル以上の支援を行うためには、Lifelineの財源も見直す必要がある。現在同プログラムはFCCのユニバーサルサービス基金に依存しており、その財源は従来の長距離および国際通話の「税金」で賄われている。

ウェブによる音声会話の利用が増え、伝統的電話の利用が減ったことによる固定電話サービスによる収入減を補うために、税率が引き上げられている。10年前、「contribution factor(寄与因子)」と呼ばれるこの税は15.5%だったが、現在は維持不可能な33.4%へと2倍以上に増えている。変革を起こさなければ問題は悪化する一方だ。

ブロードバンド給付金の財源を滅びゆくテクノロジーと結びつけておくべきでないことは明白だ。代わりに、Lifeline Programはインターネットエコシステム全体で共有される「税」で賄うことができる。例えば顧客とつながるためにブロードバンドに依存しているウェブサイトから、あるいはLifeline Programのための議会が定めた政府歳出予算から直接支出するなどだ。

ここに挙げた改革案は実現可能かつ単純明快だ。プログラムを廃止するのではなく、今こそLifelineを「再構築」し、当初の目標を実現して米国の最貧困層に手を差し伸べる時だ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Lifeline ProgramアメリカコラムインターネットブロードバンドFCC

画像クレジット:Paul Taylor / Getty Images

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(文:Rick Boucher、翻訳:Nob Takahashi / facebook