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数百億円台のAIラウンドがあってもおかしくない理由

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スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週、Scale AI(スケールAI)が3億2500万ドル(約353億5000万円)のシリーズE調達を行った。TechCrunchも書いたように、この会社はデータラベリングの分野で活躍している。そして、ここ数年は資金調達にも大いに力を入れてきた。2019年にTechCrunchは、同社の当時22歳のCEOが1億ドル(約109億円)のラウンドを組んだことを記事にしている。そして2020年12月には約35億ドル(約3807億3000万円)の評価額で1億5500万ドル(約168億6000万円)を調達した。今では70億ドル(約7兆6000億円)以上の価値がある。

すごい話だよね?さて、先週初めにわかったのだが、どうやら2021年は、AIスタートアップにとって、全般的にとんでもない年になっているようだ。PitchBookのデータによれば、2021年の初めから4月12日までに、米国でのAIスタートアップの取引は442件、金額にして116億5000万ドル(約1兆2672億9000万円)に達している。そして、最近発表されたMicrosoftによるNuance AI(ニュアンスAI)の買収は、さらにこうした事象を加速させるかもしれない。

Sapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏に、AIベンチャー市場についての意見を、The Exchangeに寄せてもらった。同氏は、この分野の第1四半期における競争状況に対する、私たちからの質問に対し、第1四半期における「AI/MLスタートアップへの投資活動は、絶対にトチ狂っていますね」と答えた。

ダス氏によれば「AI / MLスタートアップは、日常的に一流のVCファームから5、6通の条件規定書を受け取っていますし、ARR(年間経常収益)の150~250倍の資金調達ができています」とのことだ。

このことを少し考えて欲しい。2020年私たちは、公開ソフトウェア企業が新たな高みに達したのを目にしてきたが、たとえ積極的なスタートアップのラウンドであったとしても、上の数字は非常に大きなものだ。経常収益が100万ドル(約1億1000万円)に過ぎないAIに特化したスタートアップが、25億ドル(約2719億5000万円)の評価を受けることを想像してみて欲しい。なんてこった。

しかし、AI投資のペースはどうだろうか?聞くところでは、多くのスタートアップで、ラウンド開始から終了までの時間に対する短縮に次ぐ短縮が行われているという。ダス氏は、この状況を説明するために「ほとんどの企業は、投資が実際に行われるはるか前にデューデリジェンスを完了しています」とメールで述べている。つまり「投資を行う時点ではもはやデューデリジェンスを行う必要がない」ということだ。

それって本当に意味があるのだろうか?もしラウンドが先制的なものならば、事前に徹底調査をしなければならない(これはダス氏が後ほどコメントで強調したことだ)。そうでなければ、盲目的に投資したり、動きの速い他の企業に取引を先取りされてしまうことになる。

今週のThe Exchangeでは、国内のベンチャーキャピタル市場についても、シード案件やニュースで話題になるような超レイトステージ投資に焦点を当てつつ掘り下げてみた。アーリーステージのベンチャー投資に関するコメントとして、EYの米国Venture Capital責任者であるJeff Grabow(ジェフ・グラボウ)氏からのコメントが寄せられた。

そのプレシード、シード、ポストシードについてのコメントの中で、私たちの注意を特に引くものがあった。予測に関するものだ。グラボウ氏は次のように語る。

2021年第1四半期のプレシード資金調達は、例年と比較すると好調でした。現在利用可能な資金が豊富で、技術的なソリューションで新市場を開拓できる、投資可能なテーマが数多くあることから、全体的な環境は引き続き堅調に推移すると考えています。このことから新型コロイナウイルス後の環境は、バラ色に描かれています。

これは私たちの社内での予測と同じだ。2021年第1四半期は、少なくとも米国のベンチャーキャピタル活動は非常に活発だったため(近々、海外事情も伝わってくるだろう)、2021年は多くの点で記録的な年になると思われる。大きく減速する傾向もみられないので、記録は更新されることだろう。そしてグラボウ氏もこうして新型コロナウイルスの流行が終了した後のベンチャー環境が、かなり魅力的なものになることを、はっきりと予想している。

ということで、記録は更新されるだろう。問題はその大きさがどれくらいになるのかということだ。

Coinbaseの直接上場に関するその他の情報

終わった話をあれこれいうつもりはないが、Coinbase(コインベース)の直接上場について、いくつか情報を追加しておこう。

消費者向け取引アプリRobinhood(ロビンフッド)の、ライバルであるPublic.com(パブリックコム)が、The Exchangeに対して、Coinbaseの株式に対する小口取引の関心がどれほどのものだったかを教えてくれた。いつもの広報担当者であるMo(モー)氏によれば、米国時間4月14日、Coinbaseは取引数で「公開されている全銘柄の中で最も人気があった」という。そしてさらに特筆すべきは、同じ日に「(投稿数で計測した)ソーシャルアクティビティが前日に比べて70%増加した」ことだ。

消費者トレーディングのブームがいつまで続くかはわからないが、これはかなりすばらしい指標値だ。

また、Similarweb(シミラーウェブ)は、2021年1月のcoinbase.comへのアクセス数が8640万件に達したことなどの、いくつかのデータを紹介している。いやあ、こいつはすごい。また、この月は新規訪問者数が再訪問者数を上回っている。このデータは、Coinbaseが第1四半期に大きな結果を出した理由を説明している。ということで現在の疑問は、こうした強気の動きを維持できるのかどうか、あるいは率直に言って、特に暗号資産の取引に対する消費者の関心が、株式取引のブームよりも長持ちするかどうかという点だ。

先週ポッドキャストなどでも何度か話題に出た、CoinbaseのシリーズDを主導した投資家のTom Loverro(トム・ラベロ)氏は「私たちはまだ暗号資産の第2ラウンドに立ったに過ぎません」と語っている。ということで、これらの話題は何度も何度も繰り返し出てくるだろう。ということでもう1度。

その他のことなど

さて記事の文字数の目標に達することができるように、先週のIPO市場に関するメモをいくつか。

まず、AppLovin(アプラビン)のIPOは計画どおりには進まなかった。モバイルアプリケーションに特化したハイテク企業の同社は、範囲の中央値である1株あたり80ドル(約8702円)という控えめな価格がついた後、最初の2日間の取引で価値が下落した。金曜(米国時間4月16日)終了時点では、1株あたり61ドル(約6636円)になった。

The Exchangeは、AppLovin社のCFOであるHerald Chen(ヘラルド・チェン)氏に、IPO当日にインタビューを行った。チェン氏との会話からは、上場したことで買収をより加速できるのではないかと感じることができた。流動性のある株式を所有しているということは、これまで以上に買収されやすくなったということだ。またS-1ファイリングによれば、AppLovin社は、他の企業を買収し、そのビジネスプロセスを実行して、収益を得ることができると主張している。

もしそれが実現できるなら、公開市場から同社に対する見方は少し厳し過ぎるかもしれない。現在の状況下で、ソフトウェア会社がIPO後に苦労しているのを見るのは少し奇妙なことだ。

また、チェン氏はThe Exchangeに対し、公開に先立つ会社説明会の際にマルチクラスの株式構造(株式に議決権などの差をつけること)についての反発は見られなかったと語っている。マルチクラス株式の悪影響については、同僚のRon Millerと一緒に書いたことがある。チェン氏は、たとえ議決権の異なる複数クラスの株式を保有していても、1人の人間が会社を完全にコントロールすることはできないと述べている。率直に言って、それが問題なのだが。

AppLovinの取引には注目して行くつもりだ(その数字に関する以前の記事はこちら)。

最後に。自動運転トラック会社のTuSimple(トゥーシンプル)が先週上場し、Similarwebが上場を申請した。また、UiPath(ユーアイパス)が価格帯を引き上げるか否かといった、幅広いIPO市場の動向にも注目している。私たちはその点について予測を行っている

そして週の終わりになって、Squarespace(スクエアスペース)がS-1(上場目論見書)を公開した。記事はこちら、続報も予定している。

ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeAI機械学習Coinbase新規上場資金調達

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)