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【コラム】前代未聞のペースでインドにユニコーン企業を生み出しているTiger Global

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過去15年間、世界第2位のインターネット市場であるインドのスタートアップ企業を世界的に有名にしたとして名高い、ある投資会社の最近の勢いは、前代未聞のペースで地元の若い企業をユニコーン企業へと変貌させている。

Tiger Global(タイガー・グローバル)は、2021年中にインドのスタートアップ企業と25件以上の契約を締結する(一部は締結済み)。これらの投資のうち、約10件はこれまでに公表されており、残りは1000万ドル(約11億円)から1億ドル(約109億円)を超えるものまで、今後数週間から数カ月の間に準備が進められる。

ニューヨークに本社を持つ同社は、最近67億ドル(約7297億円)のファンドを完了し、先週、ソーシャルネットワークサービスを運営するShareChat(シェアチャット)ビジネスメッセージングプラットフォームのGupshup(ガップシャップ)投資アプリのGroww(グロウ)への投資を主導し、フィンテックアプリのCREDのラウンドにも参加して、これらのスタートアップ企業がユニコーンとなるのを支援した。

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(インドでの報道によると、Tiger Globalは新しいファンドのうち30億ドル、約3267億円)をインドのスタートアップ企業に投資する予定だと推測されているが、TechCrunchでは、この30億ドルという数字は的外れだと考える)

Tiger Globalは、2021年初めにユニコーン企業となったインドのスタートアップ企業であるInfra.Market(インフラ・マーケット)とInnovaccer(イノヴァッサー)にも投資している(インドでは2020年11件、2019年には6件のユニコーン企業が誕生したが、2021年はすでに10件のユニコーン企業が誕生している。Tiger Globalはインドのユニコーン企業47社のうち20社以上に投資している)。

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また、支援の発展段階にあるのは、先週ユニコーン企業になった電子薬局のPharmEasy(ファームイージー)、フィンテックのClearTax(クリアタックス、評価額10億ドル、約1090億円の可能性)、暗号資産取引所のCoinSwitch(コインスイッチ)、保険会社のPlum(プラム)、B2BマーケットプレイスのMoglix(モグリックス、評価額10億ドル、約1090億円以上)、ソーシャル企業のKutumb(カタム)とKoo(クー、評価額1億ドル(約109億円)以上、CapTable調べ)、ヘルステック企業のPristyn Care(プリスティンケア)、B2B電子商取引のBzaar(バザー)、アグリテックのReshamandi(レシャマンディ)などが含まれていると関係者は話す(一部の案件はまだクローズしていないので、条件が変わる可能性もある)。

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2021年、あるいはこれまでに、インドの企業にこれほどの規模の投資をした企業は他にない。この大盤振る舞いには、何十人ものベンチャー企業の創業者がTiger Globalのパートナーを紹介してもらおうと躍起になっているほどだ。

Tiger Globalのインドの若い企業への信頼は、過去にさかのぼる。2009年のFlipkart(フリップカート)と2012年のOla(オラ)への投資は、両社がインドの大手投資家からの資金調達に苦戦していた時期に、米国のTiger Globalがインドで事業を展開する際のリスク許容度を示すものだった。

元パートナーのLee Fixel(リー・フィクセル)氏の下で、Tiger Globalは、オンライン食料品店のGrofers(グローファーズ)、物流ベンチャーのDelivery(デリバリー)、ファッションEコマースのMyntra(ミントラ)、フィードリーダーのInShorts(インショーツ)、電動スクーターメーカーのAther Energy(アザーエナジー)、音楽ストリーミングサービスのSaavn(サーブン)、フィンテックのRazorpay(レーザーペイ)、ウェブプロデューサーのTVF(ティーブイエフ)など、若い企業を支援してきた。

何人かのベンチャー企業の創業者たちは、匿名を条件にTiger Globalからの投資を振り返り、Tigerの投資は最初の連絡から2~3週間で完了したと話す。

しかし、2019年の幹部交代でフィクセル氏が離脱した同社は、インドにおける投資のペースを落とし、一時的に主にSaaS系ベンチャー企業にフォーカスを移した。

Tiger Globalとともにいくつかのベンチャー企業に投資してきたあるベンチャー投資家は、率直な意見を述べるために匿名を条件に「最近の状況は変わり、Tiger Globalはこれまで以上に積極的になっている」と語る。

後期段階の企業への投資を続けている同社は、設立数カ月のベンチャー企業への投資機会も模索しているという。

上述の投資家は、Tiger Globalの新しい戦略のもう1つの例としてInfra.Marketを挙げた。Tiger Globalは2019年、まだ設立2年目だったB2BベンチャーであるInfra.Marketに最初に投資をしている。

「Tiger Globalはそれから、このスタートアップ企業が成長できるかどうか、そして他の投資家から投資を引き出せるかを見極めたいと考えました。その年12月、Infra.Marketが約2億ドル(約218億円)の資金を調達すると、その2カ月後、Tiger Globalは評価額10億ドル(約1090億円)で新たなラウンドを完了しました」とその投資家は述べる。

スタートアップ企業にとってはすばらしいことである一方、一部の投資家にとっては課題となっていると2人の投資家が話す。

彼らによれば、Tiger Globalが、業界の他社が太刀打ちできないレベルでスタートアップ企業を評価し、その後のラウンドを主導しない場合、次の資金調達ラウンドに投資できる企業は非常に少なくなるとのこと。

非公開のフォーラムや最近のClubhouseでは、多くの投資家が「一部の投資家が共有している最近の楽観的な見通しが実現するのは難しい」と警告している。ある投資家は「Tiger Globalは2~3年周期で、インドで非常に楽観的な投資を行います。問題は、状況が楽観的でないときに、我々がツケを払う羽目になっていることです」と語った。

「Scott Shleifer(スコット・シュライファー、Tiger Globalのパートナー、上の写真)の下では、状況は変わるかもしれない」と、別の投資家は付け加える。Tiger Globalの最近のインド国外における活動を見ると、いくつかの市場ではより積極的になっているように見える。

Steadview(ステッドビュー)、Prosus Ventures(プロサスベンチャーズ)、Falcon Edge Capital(ファルコンエッジキャピタル)、さらにはGoogle(グーグル)などの企業が、世界第2位の人口を誇るインドへの投資戦略を強化している中で、米国企業であるTiger Globalもインドへの関心を高めている(ある投資家は、最近のClubhouseのセッションで、この投資の狂乱は市場で余っている資本の多さの表れでもあると語っている)。

Credit Suisse(クレディ・スイス)のアナリストは2021年3月、世界第3位のスタートアップ企業の拠点であるインドは、今後数年間で100社のユニコーン企業を生み出す可能性がある、と顧客向けの報告書に書いている。

インド企業の状況は、過去20年間の資金調達、規制、ビジネス環境の著しい変化が重なり、急激な変化を遂げている。さまざまな分野で前例のないペースで新会社が設立され、イノベーションが進んだことで、価値の高い、未上場の企業が急増している。

評価の高い企業の成長の背景には、以下のようなさまざまな要因がある。

(1)1人当たりの資産が少ない経済ではベンチャー企業への投資が不足するのは自然だが、(主に外国の)プライベートエクイティが急増して、過去10年間は毎年、公開市場での取引額を上回るようになった。

(2)携帯電話の普及率、スマートフォンやインターネットの普及率の向上。2005年まではインド人の15%以下しか携帯電話を持っていなかったが、現在では85%に達している。また、安価なデータ通信とスマートフォンの低価格化により、7億人以上の人々がインターネットにアクセスできるようになった(現在の普及率は40%)

(3)深く根差した物理的なインフラの変化。2000年には半分しかなかった舗装道路がほぼすべての居住地に整備され、2001年には54%しかなかった電力供給が全世帯に供給されるようになった。

(4)金融イノベーションが加速している。世界をリードする『インディア・スタック』は、データの可用性の向上にも助けられ、ユニバーサルバンク口座へのアクセス、モバイル、生体認証ID(アドハー)をベースに構築したUPIといった革新的なアプリケーションが備わっている。(5)いくつかの分野でエコシステムが発展し、現在では世界の競合他社に対して競争力を持っている。例えば、テクノロジー(450万人のIT専門家)や製薬・バイオテクノロジー(インド企業のいくつかは、年間2~3億ドル(約218億円~326億円)の研究開発費を確保できる)などが挙げられる。

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画像クレジット:Amanda Gordon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Dragonfly)