ハードウェア
Arm(企業)
NVIDIA(企業)

NVIDIAのArm買収に国家安全保障上の懸念を理由に英国政府が介入

次の記事

Zoomが同社プラットフォームでの事業立ち上げを支援する108億円のZoom Apps投資ファンド開設

英国政府は半導体メーカーのNVIDIAによるArm Holdings買収計画に介入し、公益のための監視を始動した。

デジタル・文化・メディア・スポーツ省のOliver Dowden(オリバー・ダウデン)大臣は英国時間4月19日、政府は半導体に関わる契約のあらゆる安全保障問題を調査する意向であると語った

NVIDIA(エヌビディア)による英国企業Arm(アーム)の400億ドル(約4兆3330億円)での買収は2020年9月に発表されたが、未だに規制当局の承認が得られていない。

英国競争・市場庁(CMA)は2021年1月にこの買収提案の調査を開始した。

関連記事
NVIDIAがArmをソフトバンクグループから4.2兆円超で買収、半導体大手2社が一体に
英国の市場規制当局がNVIDIAのArm買収に関し意見募集、ソフトバンクから買収成立なるか

NVIDIAの計画に対する国内の反対はすばやく、Armの共同ファウンダーの1人は「Save Arm(Armを救え)」キャンペーンを2020年9月に立ち上げた。そのHermann Hauser(ハーマン・ハウザー)氏は、米国企業によるArmの買収は、米国の利害関係に対する同社の独立性を失わせ、貿易における最も重要な兵器を手放すことで英国の経済主権を脅かすものだと警告した。

関連記事:Arm共同創業者が4.2兆円でのNVIDIAからの買収に反対、独立性確保のため「Save Arm」キャンペーンを開始

デジタル・文化・メディア・スポーツ省による介入(2002年企業法が発効した規制力を使ったもの)は、競争規制当局がフェーズ1捜査を開始するよう指示されたことを意味している。

CMAには7月30日までに大臣に報告しなければならない期限がある。

ダウデン氏は声明で次のように語った。「ARM買収の提案を慎重に検討した結果、本日、国家安全保障を理由に介入命令を発行しました。次の段階として私が関連情報を集めるために、英国の競争・市場庁は、本買収から予測される結果報告を準備中であり、今後の判断に役立てます」。

「私たちは繁栄している英国テック業界を支援し、海外からの投資を歓迎したいと考えていますが、このような取引の招く国家安全保障上の懸念については、慎重に考慮することが適切です」と同氏は付け加えた。

CMAのフェーズ1捜査が完了すると、ダウデン氏には契約を承認する選択肢が生じる。即ち、国家安全保障および競争上の問題が見つからなかった場合、あるいは、指摘された問題の改善を条件に承認するかだ。

ダウデン氏は、さらに捜査を進めるために、CMAに詳細なフェーズ2捜査の実施を命令することもできる。

フェーズ1報告書が提出された後、大臣が次の段階の決定を下すまでの期間は決められていない。ただし、DCMSは「当然実用的」に不確定要素が減り次第、決定は下されるとしている。

ダウデン氏の介入は国家安全保障の理由で実施されているが、NVIDIAのArm買収については、別の懸念も取り沙汰されている。具体的には、英国の雇用およびArmのオープンライセンシングモデルに関してだ。

2020年NVIDIAはこれらの問題を解決するために、Armのライセンシングモデルの維持と英国ケンブリッジのArm事業所の拡張を約束し、英国キャンパスに「新しい卓越したAI研究の世帯的研究拠点」を作ると語った。

しかし、NVIDIA傘下のArmが英国の経済主権に与える結果に対する懸念を和らげるために、どのような商業的譲歩が提案されるのかは想像がつかない。なぜならこれは政治的リスクであり、和らげるためには政治的な、例えば、条約レベルの解決方法が必要になるからだ。それは、NVIDIAの力だけではどうにもならないものだ。

国家安全保障の懸念は、半導体設計や次世代ネットワークのような最先端インフラストラクチャーを供給するテック企業にとって、増大する事業リスクだ。競争が比較的少ない分野では、市場の選択が制限されるだけでなく、政治的思惑を助長させる。

数々の買収提案は、政治経済的情勢の急変を呼ぶ市場統合の引き金だ。

しかし、テック企業の事業は、国家安全保障の名のもとにますます圧迫を受けている。たとえばここ数年、米国政府によるHuaweiなどの中国拠点5Gインフラ供給会社に対する攻撃で、トランプ元大統領は同社による次世代ネットワークの提供を、米国からだけでなく、西側同盟国の国内ネットワークからも追放しようとした。

最近(地理)の政治的圧力は、主要インフラストラクチャー企業だけが標的ではない。トランプ氏は国家安全保障を理由に中国製ソーシャルネットワークのTikTokを揺さぶり落とそうとした。これは、いかにテックツールが地政学的権力に利用され、各国の経済・政治の私欲に後押しされているかを示す好例だ。

関連記事
トランプ政権が連邦政府のファーウェイとZTEの製品・サービスの購入禁止へ
「TikTokの米事業売却の期限延長はない」とトランプ大統領が釘を刺す

カテゴリー:ハードウェア
タグ:NVIDIAArm HoldingsイギリスCMA

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook