EdTech
STEM教育(用語)
ジェンダー(用語)
コーディング(用語)

マリオ風ゲームで女の子にコーディングを教えるErase All Kittensが1.08億円のシード投資を調達

次の記事

DARPAがより軽く快適な生物・化学向け防護服の開発プログラム開始、感染症予防や治療提供など公衆衛生領域でも期待

Erase All Kittens創設者ディー・サイガル氏とレオニー・バン・ダー・リンダ氏

Erase All Kittens(EAK、イレース・オール・キトゥンズ)は、8歳から12歳の子ども向けに「マリオ・スタイル」のウェブゲームを開発したEdTech系スタートアップだ。ただし、このゲームには特別な仕かけがある。女の子のコーディング学習の意欲を湧かせるゲームなのだと、同社は強調する(ほとんどのコードは男性が書いているのが現実だからだ)。100を超える国々でプレイヤーが16万人に達した現在、同社はTwinkl Educational Publishing(トウィンクル・エデュケーション・パブリッシング)主導のシードラウンド投資100万ドル(約1億800万円)を調達した。このラウンドには、A Black Square(エイ・ブラック・スクエア)ファミリーオフィスのChristian Reyntjens(クリスチャン・レンジェンス)氏が初めて参加し、その他以前からの支援者であるShazam(シャザム)の創設者の1人も加わっている。

これまでのEAKゲームは無料だったが、2021年7月に公開される新しいゲームは有料化される予定だ。これにより、製品のビジネスモデルを強化する狙いがある。

EAKによれば、プレイヤーの55%は女の子で、95%はゲームをプレイした後に、コーディングのことをもっと学びたいと思うようになったという。現在EAKは、3000の学校で利用されている。そのほとんどは英国と米国だが、パンデミックによるロックダウンの影響で、トラクションは500%まで伸びた。

コーディング教育用のツールは、大半が男性によって作られているため、自然と男の子にアピールするものになっているというのがEAKの主張だ。非常に硬直的で指導的な形で繰り返しコーディングを教え込むやり方は、女の子よりも男の子の心に訴えるものだとEAKは話す。

女性チームによって創設されたこの企業には、子どもたち、特に女の子がコーディングに対する考え方を改めさせるプラットフォームがある。2年間の研究開発の結果、高度にゲーム化された物語形式の遊びを通じて、HTML、CSS、Javascriptなどのスキルを、8歳からの子どもや女の子が学べるゲームが完成した。たとえば子どもたちは、ゲームの旅の間にキャラクターたちとチャットができる。その中には、熟練の起業家でユニコーンの人魚Tarquin Glitterquiff(ターキン・グリッタークイフ)というキャラクターもいる。

「プレイヤーは、夢のインターネット宇宙に暮らす仔猫たちを救うために、ゲームをプレイしながらレベルを作ったり修正したりして、コード編集によりゲーム環境を管理します」と共同創設者でCEOとクリエイティブディレクターを務めるDee Saigal(ディー・サイガル)氏は話す。サイガル氏のチームに加わったのは、共同創設者Leonie Van Der Linde(レオニー・バン・ダー・リンダ)氏、CTOのRex Van Der Spuy(レックス・バン・ダー・スプイ)氏、上級ゲーム開発者Jeremy Keen(ジェレミー・キーン)氏、2DゲームアーティストMikhail Malkin(ミクヘイル・マルキン)氏だ。

画像クレジット:Erase All Kittens game

現行のゲームはHTMLの技術とURLの作り方を教えるものだが、新しいゲーム(2021年7月に公開予定)では、HTML、CSS、Javascriptのスキルが学べる。コーディングの理論を学んでも、すぐに実際の開発者のようにウェブ上でゲームが作れるわけではなく、そこには大きなギャップがある。それを埋めようという狙いだ。

サイガル氏はこう話す。「私たちは、女の子が本当に好きになれるコーディングゲームを開発しています。そこでは、創造性が大きな柱になっています。コードを書けば、すぐにその結果が見られます。ゲームの進め方にはいくつもの道があり、物語の中にコーディング学習が溶け込んでいます」。

さらに同氏は続ける。「私は小さいころ、ゲームデザイナーに憧れていました。ゲームのアイデアを考えるのが大好きだったのですが、コーディングはまったく太刀打ちできない難関に感じていました。学校ではコーディングは教えてくれません。私と同じようにゲームを作りたいと思っている人も周囲にはいませんでした。なので、それは私には不可能なことなのだと思っていたのです」。

「ターゲットとなるオーディエンスの調査をしていたときにわかったのが、女の子の最大の障害は、幼少期から、未だにジェンダーのステレオタイプにはめられていることでした。学校に上がるまでに、それは雪だるま式に大きくなり、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の自信はすでに失われています。教師たちも女の子には期待しません。結果としてそれが成績を下げ、年齢を重ねるごとに、ギャップは広がる一方となります」。

EAKと競合するツールに、Code Kingdoms(コード・キングダムズ)、Swift Playgrounds(スウィフト・プレイグラウンズ)、CodeCombat(コードコンバット)などがある。しかし、これらのゲームは女の子向けというより、はるかに男の子向けだとサイアル氏はいう。

新しいゲーム(下の動画)は、世界中の学校や両親に販売される。EAKではまた、ワン・フォー・ワン方式の支援も行っている。つまり、1つの学校がアカウントを購入するごとに、テック企業、教育団体、NGOなどの提携団体を通じて恵まれない学校に寄付が送られるというものだ。

Twinkl(トウィンクル)の共同創設者にしてCEO、またはTwinklHive(トウィンクルハイブ)のディレクターであるJonathan Seaton(ジョナサン・シートン)氏はこう話す。「Erase All Kittensのパートナーになれたことを本当にうれしく思っています。デジタル企業であるTwinklは、子どもたちにデジタル時代で成功する準備をさせることの重要性を認識しています。このパートナーシップによって大きな変化を起こせると、私たちは確信しています」。

「私たちのチームは、女の子たちを励まし、コード学習と独自のデジタル創作物の制作の機会を平等に与えるというErase All Kittensの使命を後押しできることに、特に胸躍らせています。すべての子どもたちが平等に学習機会を得ることは、Twinklのビジョンの中核でもあり、双方の企業の提携関係を深める決定的な動機でもあります」。

画像クレジット:Erase All Kittens

Erase All Kittensは、ジェンダー格差がますます広がる世界のスキルの格差に対処したいと話している。PWCによると、テック業界で働く女性の割合は24%に過ぎず、全エンジニアのうち女性はわずか12%だ。また、英国の女子学生で就職先の第一志望に技術職を選んだ割合はたったの3%だった。

Childwise(チャイルドワイズ)の調査では、女の子のうち90%は、最初の挑戦でコーディングを諦めている。11歳になるまでにSTEM分野への興味を失えば、二度と興味を持つことはないという。これはテック業界にとって、そして投資家にとって、実に深刻な問題なのだが、拡大は続いている。

関連記事:犯罪歴のある人にコーディングを教え社会復帰をサポートする無料プログラム「Justice Through Code」

カテゴリー:EdTech
タグ:Erase All Kittens子どもコーディングジェンダーSTEM教育

原文へ
(文:Mike Butcher、翻訳:金井哲夫)