今さら聞けないNFT:「コンテンツ大国」日本のクリエイターが真剣になる理由

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編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)

ブームの真っ只中にあるNFTについて、今回は「今さら聞けないNFT」と題して解説します。そもそも「ファンジブル」(Fungible)と「ノン・ファンジブル」(Non-Fungible)という言葉は日本語で聞き慣れない言葉です。とっつきにくい概念ではありますが、NFTにはアートや音楽、ゲーム業界でコンテンツ制作者への経済的な支援を革新的に改善できる可能性があります。アニメやゲーム大国といわれ、多くのコンテンツ制作者を抱える日本が、NFTをもっと活用できるような環境作りを作っていくべきだと考えています。

ファンジブル(Fungible)とは、直訳すると「代替可能な」であり、他の似たようなモノによって交換が可能であることを意味します。例えば米ドル紙幣。1ドル紙幣は他のどの1ドル紙幣と交換することが可能であるため、ファンジブルです。同様に暗号資産のBitcoinやEthereum(イーサリアム)もファンジブルです。1BTCは他のどの1BTCとも交換できます(BTCは、Bitcoinの単位)。

一方、ノン・ファンジブル(Non-Fungible)は、他のモノと交換が可能ではないことを指します。例えば、映画館のチケットはノン・ファンジブルです。映画館のチケットは、特定の映画が特定の時間に見られることを示すチケットであり、どの時間帯でもどの映画でもチケットの交換が可能になるというわけにはいきません。NFTとは、デジタルアートやゲーム内のアイテム、イベントのチケットなどをNFT化することで固有の価値を持たせることであり、ブロックチェーン上でその保有者を証明できるようすることです。

「CryptoKitties」(クリプトキティーズ)が1度目のブームを作った

NFTの歴史は、2012年に登場したBitcoinの「Colored Coins」(カラードコイン)というコンセプトまでさかのぼることができます。Bitcoinの最小単位である「satoshi」(サトシ)に「色」(カラー)をつけることで所有者情報を紐付けする試みでした。ただ、元来Bitcoinが内部的に利用しているプログラミング言語「Script」がこうした行為に対応するものではないため、NFTの普及には繋がりませんでした。

NFTの普及拡大のきっかけになったのは、2017年にEthereum規格の1つである「ERC-721」(Ethereum Request for Comments 721)がリリースされたことです。ERC-721の登場でNFTの作成は容易になりました。この「ERC」文書とは、インターネット関連の技術標準化団体IETF(Internet Engineering Task Force)におけるRFC(Request for Comments)文書のようなイメージで、技術仕様として公開されています。

実際、ERC-721リリース後すぐにデジタル版の猫を育成・取引するアプリ「CryptoKitties」(クリプトキティーズ)が誕生し、1回目のNFTブームが生まれました(なおERC-721、CryptoKittiesの産みの親は、どちらもDapper Labsです)。

今年のNFTブームは2回目です。デジタルアーティストBeeple(ビープル)の「The First 5000 Days」が米老舗オークションハウスのクリスティーズで6900万ドル(約76億円)で落札されて一躍注目を浴びるなど、応用分野はデジタルアートやゲームを中心に多岐に渡っています。

中古市場(二次流通市場)におけるコンテンツ制作者支援の仕組みについて整備が進む

NFTは、アーティストなどコンテンツ制作者に大きなメリットをもたらしています。

まずは仲介業者の排除が大きいでしょう。NFT以前、コンテンツ制作者の収入は、販売価格から仲介業者が課す様々な手数料が差し引かれていました。例えば、アートギャラリーの場合、ケースバイケースではありますが、販売手数料として販売価格の数十%を徴収するケースが一般的のようです。NFT作品の売買を行うNFTプラットフォームは存在しますが、従来の仲介業者と比べて手数料徴収という面で制限がかけられています。

また、NFT作品が中古市場(二次流通市場)で取引されるたびに、売買価格の一定割合が制作者に回る仕組みを作る動きも広がってきています。実はERC-721では、制作者が最初に作品を売った時にしか収入を得られない仕組みとなっています。例えばNFTの中古市場として有名な「OpenSea」で同一のNFT作品が何度転売されても、当初制作者側には一切収入が入らなかったのですが、現在では独自に還元の仕組みを用意しています。

そうした状況を改善するために提案されたのがEthereum改善提案「EIP-2981」(ERC-721 Royalty Standard)です。この提案は、中古市場での取引でも制作者がロイヤリティを徴収できるよう、ERC-721を拡張するものです(2021年5月4日現在はドラフトの状態)。

NFTの作り方

NFTは、実は簡単に作ることができます。NFTマーケットプレイス「Rarible」(ラリブル)を例に、実際にNFTを作って販売するための手順を簡単にまとめておきます。Raribleは2020年創業のスタートアップで、NFTアートを中心に扱っています。

  1. NFT化したいデータを決める:画像(JPG、PNG、GIF形式など)、音楽(MP3など)や3D(GLBなど)からどのアイテムをNFT化したいか決める
  2. Ethereum系の暗号資産ウォレットを用意:「MetaMask」(メタマスク)などEthereum系の暗号資産ウォレットを作る。NFTを作成・売買する上で暗号資産を安全に保管するウォレットが必要になる。ウォレットを使えばNFTのマーケットプレイスでアカウント作成やログインができるようになる
  3. Ethereumを購入してウォレットで保管:NFTを作るのに必要な額のEthereumを購入してウォレットで保管する。ほとんどのマーケットプレイスは、コンテンツをNFT化する際に手数料を取る
  4. ウォレットとNFTマーケットプレイスを接続:ウォレットとNFTマーケットプレイスを接続する。Raribleであれば画面右上にある「Connect」(接続)ボタンを押す。接続後、Raribleのアカウントが自動的に作られる
  5. NFT化したいファイルのアップロード・設定:NFT化したいファイルをアップロードして、どんな資産なのか説明欄に記入する。その後、シングル(アイテムを1つだけにする場合)かマルチ(1つのアイテムを複数回売りたい場合)を選択。オークションの期間、最低落札価格、ロイヤリティの設定、コンテンツのロック解除などの設定などを行う
  6. Minting(ミンティング)でブロックチェーンに登録:ここまで準備が整えば、「Minting」(ミンティング)が可能となる。Mintingとは、自分のアイテムを不変で改竄不可能なパブリックブロックチェーンの一部にするためのプロセス。Mintingのためには、手数料として再びEthereumが必要になる。このためNFTとは、「ミントされた」トークンともいえる。Mintingが完了すると、自分のアイテムはNFT化したことになり、マーケットで販売できるようになる

どのブロックチェーンが有力? Ethereum代替となるNFTプラットフォームも注目されている

現在のNFTは、EthereumとERC-721を基盤にすることが主流ですが、これらが安泰というわけでもありません。例えば、NBAのハイライトシーンをNFTとして販売するプラットフォーム「NBA Top Shot」(NBAトップショット)などを生み出した「Flow」(フロー)というブロックチェーンが、Ethereumの代替NFTプラットフォームとして脚光を浴びています。

先に触れたように、Flowは、第1次NFTブームを引っ張ったCryptoKittiesの開発会社Dapper Labs(ダッパーラボ)が作りました。CryptoKittiesがEthereumの手数料高騰などの問題に直面したため、Dapper Labsは基盤となるブロックチェーンそのものの改善を開始しました。その集大成となったのがFlowといえます。

この4月には、NFTを使う「My Crypto Heroes」(マイクリプトヒーローズ)など、日本でブロックチェーンゲーム開発を手がけるdouble jump.tokyoも、Flowに関する方針を発表しています。

Flowの他には「Cosmos」(コスモス)、「Polkadot」(ポルカドット)や「Tezos」(テゾス)がNFT分野でEthereumのライバルになります。

今後は、「いかに早く円滑に安い手数料でNFTを作ることができるか」がNFT分野におけるブロックチェーンの競争を決める上で焦点になるでしょう。

何かと時間がかかる日本国内の暗号資産上場プロセスは改革が必要

また日本では、規制動向を注視する必要がありそうです。

NFTの発行が可能なブロックチェーンで、日本国内の取引所にネイティブトークンとして上場しているのはEthereumとTezosだけです。現状、NFTのホスト先としてEthereumが安泰といえるのか意見が分かれつつあり、その代替となるブロックチェーンの成長が期待されています。こうした中、日本の投資家がその技術に触れ、成長の恩恵に与るためにも、何かと時間がかかる日本国内の暗号資産上場プロセスについて、抜本的な改革が必要であると感じています。

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カテゴリー:ブロックチェーン
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